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- 日銀7月会合の要所と、期間中の異例の為替介入
日銀は7月会合で政策金利の据え置きを決定しつつ、追加利上げ姿勢を維持した。展望レポートでは2026年度後半に物価が2%を上回る一方、その後は原油高の影響減退で2%程度に鈍化すると見込んだ。ただし、中東情勢と原油価格、AI投資、為替変動の3つのリスクが物価の上振れ要因になり得るとして警戒を強め、利上げ時期は従来想定の12月だけでなく10月、場合によっては9月会合も浮上した。
7月日銀会合、市場予想通り据え置きながら高田審議委員は利上げを支持
日銀は7月30日~31日に開催した金融政策決定会合(以降、会合)で、市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートを1.0%程度で推移するよう促す方針の据え置きを決定した(図表1参照)。原油高などを背景に6月の前回会合で利上げに踏み切っており、今回は経済・物価に与える影響を見極めるため据え置きが、市場でも幅広く予想されていた。
政策金利の据え置きは9人の政策委員のうち8人の賛成多数で決定した。高田審議委員は海外発の物価上振れリスクを指摘したうえで「機動的な対応が必要な新たな局面」として、1.25%への利上げを提案したが反対多数で否決された。
AI投資などを含む3つのリスクが物価に与える影響は上振れリスク要因
7月の日銀会合では、植田総裁の記者会見、「経済・物価情勢の展望」(展望レポート、図表2参照)ともに、追加利上げ姿勢を維持した点でタカ派(金融引き締めを選好)的だった。例えば、会見では物価上振れリスクが高い中、金融緩和度合いの調整の遅れが、その後の景気下押しや金融資本市場の不安定化につながると懸念を示した。ただ、植田総裁の会見では追加利上げのタイミングやペースについての明言しなかった。それでも、「次回以降の会合」で物価上昇要因を分析し、議論すると明確に述べた点はタカ派的だった。
植田総裁の会見は概ね展望レポートの内容に沿ったものだった。今回の展望レポートの主な特徴は、図表2にあるように定量的な変化は26年度のインフレ率の小幅な下方修正などにとどまった。
しかし、定性面に一部前回との違いがみられた。
今回の展望レポートにおける定量面での修正を見ると、インフレ率は前回(4月)の展望レポートで原油価格大幅上昇分を反映済みで、今回は夏場のエネルギー負担緩和策の下方修正分にとどめた。
一方、定性面には微妙ながら注目したい変化があった。経済・物価のリスク要因について、前回の展望レポートでは中東情勢を巡る混乱による原油価格上昇や供給制約が物価を押し上げる要因と指摘した。一方、AI投資や為替(円安)の物価上振れリスクは、その他のリスクの扱いだった。
今回の展望レポートでは、「中東情勢(原油価格上昇)が日本に与える影響」、「AI投資の動向」、「為替変動の影響」が経済や物価に対するリスク要因として明確に指摘した。植田総裁の会見でも、これら3つのリスクが懸念要因として強調した。
なお、3つのリスクの経済に対する影響は複雑だ。原油価格上昇は景気下押し要因となる一方で、AI投資需要は景気押し上げの可能性があるなどリスクの方向感が異なるからだ。
一方、3つのリスクの物価に対する影響は総じて上振れリスクとみられている。ただし、原油価格は一頃に比べて下落しており、前回の展望レポートで指摘したような物価の大幅な上振れリスクは低下しているとしている。もっとも、中東情勢は不透明な状況が長期化しており、原油高を起点に企業間取引における価格転嫁が物価を押し上げる懸念もある。警戒を緩めてはいないようだ。
AI関連投資については、半導体価格の上昇が、関連する耐久財の価格を押し上げるリスクなどに言及している。
為替については、輸入物価の上昇懸念とともに、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があり、そうした動きが、予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性があると指摘している。
このようなリスク認識を踏まえ、展望レポートでは、物価の中心的な見通しは26年度後半以降、2%を明確に上回ると予想する一方で、見通し期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向け物価が鈍化するとしている。
しかし、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、基調的な物価上昇率が2%に近づいているなか、企業の賃金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることなどを踏まえると、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがあると指摘した。展望レポートでは、これまでより踏み込んだ表現だ。
植田総裁の会見でも基調的な物価上昇率が2%を超えるリスクに言及し、それゆえ2%程度の水準に安定させることの重要性を指摘した。その認識から、次回(9月)以降の会合で、きちんと議論することなどを指摘した。
これまで、日銀の利上げペースは半年に1度程度とみられていた。したがって、次の利上げは12月が目安であったが、3つのリスクは市場でも十分に認識され利上げ時期の前倒しが進んだ。10月会合、場合によっては9月会合での利上げが(可能性は4割程度だが)候補として浮上してきた。
9月利上げの有無を占ううえで、円安は1つの試金石となりそうだ
9月利上げの試金石が為替動向だ。日米財務相は8月3日、7月末に外国為替市場で日米が協調介入を実施したことを明らかにした。片山財務大臣は今後、さらなる協調介入を実施することも躊躇(ちゅうちょ)しないとも述べている。会合後(31日)ならともかく、日銀会合第1日目(30日夜)からの為替介入は異例だ。そのうえ、米国の協力による日米協調為替介入に踏み込んだ。なぜ米国の協力が得られたのかなどに不明な点は残るが、円安抑制が求められそうだ。そう考えるのは、円安進行の背景に米当局が懸念する内容が含まれているのではないかと、筆者が想像するからだ。
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