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- 日米協調介入、過去からの教訓と今後の課題
7月末の急激な円高・ドル安は、日本と米国による協調為替介入によるものであることが明確となった。過去の協調介入、とりわけ1995年のケースでは、為替介入と金融緩和・政策対応の一体性が効果を左右した。今回米国はドル売りを避けるなど本気度に疑問もあるが、ベッセント長官は、通貨安のアジアへの波及と日本の財政・金融政策に懸念を示した。円安是正には日米が同じ方向を向く必要があろう。
日米通貨当局は7月末の為替介入の実施を談話などで表明した
片山財務大臣は8月3日、「米国東部時間7月31日(金)、日本国財務省は、米国財務省と協調して円買い介入を実施した。」で始まる談話を発表した。同日(米国時間2日)、ベッセント米財務長官はSNS上に「金曜日(7月31日)に実施された協調為替介入は、円相場の無秩序な値動きに対応するためのものだった」、「米財務省は、日本の財務省および日本銀行と緊密に連絡を取り合いながら状況を注視している。必要と判断すれば、さらなる協調介入への参加もためらわない」といった内容の投稿を行った。
7月末の急激な円高・ドル安進行(図表1参照)の背景は日米協調介入であることが明確となった。
7月末の為替介入は日本単独でなく、米国との協調介入が実現した
7月末の急激な円高・ドル安の前後から日米当局から協調をうかがわせる発言はあった。30日にはベッセント長官が「円は非常に過小評価」と述べ、また31日には三村財務官からは、「米当局から精神的支援を超える支援」との発言もあった。
日米協調による為替介入は2011年以来となる(図表2参照)。ドル売り・円買い介入としては日本が金融危機で混乱していた1998年以来となる。今回の協調介入は日本と米国の二カ国によるもので、G7全体が参加した1995年や多国間の枠組みではない。ただし、複数国の通貨当局が同時に市場へ介入した点で協調介入と位置付けられる。なお、98年のドル売り・円買い介入と異なり、今回米国はユーロ売り・円買いで介入した模様だ。これが正しいなら、米当局は協調介入でさらなる円安を抑制する姿勢は示したものの、ドル安や他の副作用を懸念してドル売りを回避したように見える。市場は、協調介入には驚かされた。しかし、米国の本気度という点で、市場が当初、真意を測りかねた1つの要因であったように思われる。
図表2にあるように過去の主な協調介入のうち、円高進行を抑制するドル買い・円売り介入は1995年と2011年に行われた。円高の背景は様々だが、ともに震災の起きた年だ。2011年の円高では、日本の保険会社などが日本に資産を戻す(レパトリエーション(レパトリ))との観測があった。
1995年と1998年の協調介入を振り返る(図表3参照)。まず、円高対応の1995年のケースだ。この円高が進行の背景として、94年12月のメキシコ危機(ペソ事実上の切り下げ)や、レパトリ観測、「強いドル」政策と矛盾する日米自動車交渉を前にドル高への不信感が高まったことが挙げられる。
図表3では、95年7月のドル買い・円売り介入を協調介入(当時は「七夕介入」と呼ばれた)として示しているが、その前(4月)にはG7がドル安に対し共同声明を出し、その後に日米欧で協調介入している。なお、図表2の注にあるように、日本当局は単独で2月から為替介入を行っていた。しかし、図表3にあるように、単独での介入よりも、円高抑制にはこれらの協調介入の影響が大きかった。
しかし、より重要なのは、95年の七夕介入では同時に金融緩和が行われ、日銀は同年後半にも利下げ(公定歩合引き下げ)を行っていることだ。また政府も海外投資促進策で対応するなど、一体感ある対応が円高から円安への転機を支えた。
1998年は円安への対応策がとられた。円安という点は現在と同じだ。しかし、背景が異なる。当時円安が進行したのは、日本の金融機関の経営不安や、アジア通貨危機の影響が大きい。これらは現在には当てはまらないだろう。ただし、米国経済が堅調で高金利な一方、日本が低金利であった点は、程度こそ異なるが似た面もある。低金利の円を売って、高金利通貨に投資するキャリー取引が当時は盛んであったことも円安の要因だった。
協調介入は98年6月に行われた。ただし、単独介入は4月から行われていた。ところが98年の為替介入は単独に加えて、協調介入の効果も十分とは言い難い。むしろ円高に転じた要因として、大手ヘッジファンド(LTCM)経営危機(事実上の破綻)による円買い、米国の利下げとそれに伴うキャリー取引の解消などが挙げられる。なお、95年からの強いドル政策も、この頃には影を潜めていた。
日米協調為替介入の形はできたが、重い課題が残されている
ベッセント米財務長官の4日の日本経済新聞とのインタビューで、協調介入に踏み切った理由として、通貨安がアジア全域へ波及することを警戒したためと述べた。98年のイベントが念頭にあるのだろうか。より重要なのは日本への注文だ。ベッセント流の言い回しではあるが、アベノミクスの時代は終わったとして、財政や金融政策に注文を付けた。金融政策については過去の金融緩和が円安要因と匂わせ、低金利政策からの脱却を促した。日米の対応が円安解消に向けて同じ方向を向かなければ、協調介入の効果に疑問も生じる。日本当局には重い夏の宿題が課せられたと見られよう。
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