- Article Title
- インド中銀、据え置きながらエルニーニョなどを懸念
インド準備銀行は8月の会合で政策金利を据え置き、その理由として物価・景気の現状認識を挙げた。CPIは目標中心値をやや上回るが、上昇要因は食料・燃料など一時的要因で、インフレ見通しは小幅下方修正した・成長率見通しは上方修正した。ただし、中東情勢やエルニーニョによる降雨不足がインフレ圧力、結果として景気下押しリスクとなる可能性がある。今後は利上げへの準備が必要と思われる。
インド中銀の8月会合では、全会一致で政策金利の据え置きが決定された
インド準備銀行(中央銀行)は8月3日~5日に開催した金融政策決定会合(会合)で、市場予想通り、政策金利(レポ金利)を5.25%に据え置くことを決定した(図表1参照)。また、金融政策のスタンスも「中立的」を維持した。政策金利の据え置きは全会一致の決定だった。
インド中銀のマルホトラ総裁は声明で据え置きの理由として、インフレ上振れは主に食料・燃料など一時的要因で、基調的なインフレ率はなお落ち着いている。一方、成長は底堅いものの、気候要因、地政学や通商政策を巡る不確実性が高く、物価と成長のバランスを見極める必要があると判断したと説明をした。
インド中銀は8月会合で、物価予想を引き下げ、成長予想を引き上げた
マルホトラ総裁が示した据え置きの背景を確認すると、足元は政策金利の維持にサプライズはない。しかし、今後のリスクに目を向けると物価上振れ要因がみられる。タイミングは特定しにくいが、利上げ方向にかじを切る可能性が高まりそうだ。
インドの6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.4%上昇した(図表2参照)。インドのCPIは前月まで過去16ヵ月、物価目標(4%±2%)の中心値を下回っていたが、6月はそれを上回り、当面上昇が続く懸念を認識している。ただし、足元の上昇は食料や燃料など一時的要因で、基調的な物価に限れば落ち着いていると判断したようだ。
また、食料と燃料を除いたコアCPIは落ち着いていると述べ、さらにコアCPIから貴金属を除いたCPIは5月から6月に2.3%~2.5%で推移したと指摘した。なお、インド中銀は26/27年度(26年4月~27年3月)の物価見通しを5.0%と、前回会合(6月)の予想値である5.1%から小幅ながら下方修正した。
景気について、インド中銀は、中東情勢の悪化など国外要因の不確実性にもかかわらず、比較的底堅いと認識している。国内消費や設備投資を下支え要因に、26/27年度の成長率を6.7%と見込んでいる。前回会合時の見通しである6.6%から小幅ながら上方修正した。
景気や物価の現状認識に基づけば、当面、政策金利の据え置きに、ある程度の説得力はありそうだ。しかし、インド中銀には今後、利上げ圧力が高まる可能性がある。国外要因としては、中東情勢悪化の長期化を受け南アフリカなど一部新興国は利上げ姿勢だ。エネルギーを輸入に依存するインドは対岸の火事では済まされない可能性がある。国内要因では声明文でも指摘しているように、エルニーニョ現象がインフレを押し上げ、結果として景気を下押しする懸念も考えられる。
インド中銀は声明文でエルニーニョ現象をリスク要因と指摘している
インド気象局のデータに基づいて、インド全国(平均)の月別降雨量のパターンを見ると、時期により降雨量が異なる(図表3参照)。2025年(緑)の降雨量のパターンを見ると、6月~9月の降雨量が多い。便宜的にこの時期が「モンスーン期」と呼ばれるが、機械的に6月1日からモンスーン期としているわけではない。実際にはインド気象局がケララ州の降雨量や風向きなどの気象条件を満たした場合にモンスーン到来と判断している。
今年はエルニーニョ現象が懸念されている。インドでは降雨量の比較には過去平均(平年値、LPA)が参照されるが、25年はLPAを上回る、雨の多い年であった。図表3の比較を見る場合、その点は割り引く必要はある。それでも26年6月の降雨量はLPA対比で少雨だった。背景はエルニーニョ現象が徐々に強まったためと見られ、モンスーンの開始が6月4日と遅れ、水不足が懸念された。結局、6月は平年に比べ4割程度降雨量が少なかったと見られる。
しかし、幸いにも7月はベンガル湾に発達した低気圧の影響で雨量が増加した。7月単月では、ほぼ平年並みの雨量に回復した。6月の極端な水不足懸念は後退したが、安心には程遠いだろう。
まず、7月の降雨量を確認した図表3はインド全域のものだが、地域的な偏りに注意が必要だ。7月は低気圧の影響で中央インドは降雨量が増加したが、東部や北東部、さらに南部は引き続き深刻な雨不足だ。降雨量の地域的な偏りは農業にも影響がみられる。コメなどの作付けは7月の降雨で急速に回復した。一方で、豆類やトウモロコシなどに回復の遅れが心配される。
モンスーンの残りの8月と9月の天候について、インド気象局の予報を見ると降雨量は平年以下が見込まれている。エルニーニョ現象の影響は過小評価すべきではないだろう。インド当局も昨年の豊作を受けコメや小麦などの食品の備蓄が高水準なことに加え、作付け拡大などで対応しているが、食品全体の影響を打ち消せるのか不安もある。
天候要因の物価への影響は判断しにくいが、インド中銀はインフレ圧力への備えが必要だろう。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。