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7月の米雇用統計の要点と金融政策への影響
梅澤 利文
2026/08/12

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概要

7月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が減少し、過去分も下方修正されるなど雇用の伸びが鈍化した。部門別には教育・医療や建設などが堅調な反面、小売や娯楽・宿泊などは弱含んだ。平均時給の伸びも鈍化して賃金起因の物価圧力は短期的に和らいだ。FRBはインフレ警戒を続けつつ、雇用動向にも一定の注意を払う必要性が認識されたが、利上げの選択肢はしっかり維持しそうだ。




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7月米雇用統計で非農業部門就業者数の伸びは市場予想を下回った

米労働省が8月7日に発表した7月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比で2.3万人減と、市場予想の8万人増、6月の2万人増(速報値の5.7万人増から下方修正)を下回った。5月と6月の過去2ヵ月分の雇用者数の下方修正は合計して10.3万人となった(図表1参照)。

7月の失業率は4.1%と、市場予想、前月(ともに4.2%)を下回り、昨年6月以来の低水準となった。

7月の平均時給は前年同月比3.2%上昇と、市場予想の3.5%上昇、前月の3.4%上昇を下回った。前月比では0.1%上昇と、市場予想、前月(ともに0.3%上昇)を下回り大幅に鈍化し、賃金上昇圧力への懸念が後退した。

7月の就業者数の伸びがマイナスとなった背景に特殊要因もあるようだ

7月の米雇用統計は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を占ううえで、インフレの陰に隠れていた面もある雇用に、ある程度の注意は払う必要があることを再認識させる内容だった。

7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きに対し、3名から反対票が投じられた。その1人であるクリーブランド連銀のハマック総裁は、7月17日の投稿で、「インフレ率は高過ぎる。一方、労働市場は、私が最大雇用と考える水準付近にある」と指摘した。このコメントは利上げ支持の理由をある程度代表していよう。物価目標から見てインフレ率は高く放置できないが、米労働市場の懸念は大きくはないという認識だ。

インフレ懸念に疑いの余地はないが、7月の米雇用統計を受け、主に次の点で、雇用にもある程度の注意が必要なことが浮き彫りとなった。

まず、非農業部門の就業者数の伸び悩みだ。7月は前月比で2.3万人減とマイナスとなったのは象徴的だが、3月の21.4万人増からコンスタントに伸びが鈍化している点にも注目したい。また、速報値からの下方修正も気になる。例えば5月の就業者数の伸びは速報値の段階では17.2万人増だったが、今回、5月分は6.3万人増に下方修正された。下方修正そのものは統計的処理の結果だが、市場では速報値の数字が印象として残りやすい。雇用の実態を把握するには速報値以外にも注意を払うことが必要だ。

就業者数の伸びを部門別に見ると、全体を押し上げたのは主に「教育・医療」部門だった(図表2参照)。ただし、7月は2.5万人増と6月の5.4万人増に比べ伸びは鈍化した。データセンター建設などが堅調な中、「建設業」なども堅調だった。一方で、「小売」は7月が1.9万人減と伸び悩み、「娯楽・宿泊」部門は6月に続き大幅な雇用減となった。ワールドカップなどイベント需要の一服が雇用を抑制した可能性がある。小売などと合わせ消費関連部門には採用に慎重な様子がうかがえる。

政府部門の前月比5.3万人減は地方政府教育部門が5.0万人減となったことでほぼ説明がつく。もっとも、地方政府教育部門は季節調整の影響を受けやすい。特殊要因の可能性が高そうだ。

政府部門を除いた民間部門の就業者数は7月が前月比で3万人増と、中期的なトレンドに沿う水準だった。春に見られた雇用の急増は一時的と判断で切る半面、民間部門は足元において、緩やかながら雇用の伸びは一応確保できているようだ。

賃金上昇圧力は短期的に和らぐ可能性はあるが、決して安心はできない

次に、7月の平均時給は伸び悩んだ(図表3参照)。賃金上昇に起因する物価圧力は、短期的に懸念が後退したと見られそうだ。7月の平均時給は前月比で0.1%上昇にとどまった。部門別にみると、サービス部門の平均時給の伸びは前月からほぼ横ばいだった。サービス部門に含まれる小売や娯楽・接客など個別部門で見ても賃金上昇に過熱感は見られなかった。一方で、建設業や製造業を含む財生産部門は0.3%上昇と比較的堅調だった。

なお、賃金指標の別の指標である雇用コスト指数(ECI)を確認すると、 4-6月期は0.9%上昇と、前期の0.9%上昇から横ばいだった。同指標は賃金指標としてFRBも注目する指標の1つといわれているが、同指標からも、賃金上昇圧力が深刻とは言い難いようだ。ただし、7月になってのガソリン価格再上昇など、潜在的な賃上げ圧力は残されている。今後の推移を見守ることが重要だ。

失業率は4.1%に低下し、通常なら失業者の減少を受け、労働市場にポジティブな材料だ。ただし、移民政策や高齢化などの影響が失業率を変動させている可能性もある。失業率は重要な指標ではあるが、判断に慎重さが求められ、足元ではやや使いにくいだろう。

7月の米雇用統計は米労働市場にも一定の注意が必要なことが示唆された。しかし、エネルギー価格上昇などを主因とするインフレへの警戒感を緩める理由とはなりにくい。筆者の見解では、FRBはデータを注視のため据え置きを選択することが今後もあるとしても、利上げカードは常に手の内にしっかり用意しておくと見ている。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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