- Article Title
- 7月FOMC議事要旨、利上げ有無以外にも注目点
7月FOMC議事要旨では、利上げ支持は投票権者を含む数名にとどまり、大多数は政策金利の据え置きを支持した。ただしインフレが鈍化しなければ利上げが必要との認識は広く共有されている。インフレ指標は鈍化傾向ながら目標2%を上回り、参加者は利上げ判断を先送りしつつ物価動向を注視している。また、AI投資のインフレへの影響やプライベートクレジットの動向についても言及があった。
7月のFOMCでは据え置きが決定されたが、3名は反対票を投じた
米連邦準備制度理事会(FRB)は8月19日、7月28-29日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。7月のFOMCでは、政策金利の据え置きが決定されたが、3名は利上げを支持して反対票を投じた。
議事要旨によると、今回(7月)のFOMCでの利上げを支持したのは数名(several)にとどまり少数派だった。大多数(most)は据え置きを支持したことも明らかとなった。ただし、多数(many)はインフレが低下しないなら利上げが必要と述べている。
議事要旨の中ではインフレ指標の一つとして米個人消費支出(PCE)物価指数が参照されているが、データは5月分が最新だった(図表1参照)。
今回の議事要旨では、利上げをめぐる対立に注目が集まった
市場は今回の議事要旨に対し、ある程度関心があったようだ。議事要旨により、反対票が出た7月のFOMCでの深刻な意見対立を知る手掛かりとなる可能性があるからだ。結論から言えば、議事要旨からうかがえる対立は想定の範囲内であった一方、今後の金融政策を占う上で注目すべきポイントが何点か明らかとなった。
議事要旨は「数名の参加者が、今回FOMCでの利上げを支持した」と一括して記しており、この数名には反対票を投じた3名が含まれるとみるのが自然だ。利上げ支持は全体でも少数にとどまり、大多数は据え置きを支持した。ただし、大切な点は、無条件に据え置きを容認しているわけではないことだ。(おそらく過半を意味する)多数はインフレが鈍化しないなら利上げが必要と述べている。
議事要旨では、反対票を投じた3名以外にも現時点での利上げを支持する参加者が示唆されるなどタカ派(金融引き締めを選好)的な側面も見られた。ただし、議事要旨の発表を受けても、次回のFOMC(9月)での利上げ見通しをさらに押し上げるには不十分だった。
主な理由として、7月FOMC後に発表された物価や雇用指標から判断して、様子見派が利上げ支持に転じる可能性が低いと見られることだ。
議事要旨では、インフレ指標(実績値)はPCE物価指数の5月分(前年同月比4.1%)が最新だった。6月分の鈍化はFOMC時点でも想定はされていたが、その後に発表された6月分は3.7%上昇と鈍化が確認できた。また、今月26日には7月分が発表予定だが、発表済みの消費者物価指数(CPI)などからの推定により再度の鈍化が見込まれている。
もっとも、エネルギーなど変動の大きい項目を除いたコアPCE物価指数は6月が3.3%上昇と、5月の3.4%上昇からの鈍化は緩やかだ。そのうえ物価目標の2%を上回る状況に変化はない。物価を注視する姿勢は維持されそうだ。
議事要旨のインパクトが小幅だった背景として、7月FOMC後の参加者の発言も挙げられる(図表2参照)。反対票を投じたミネアポリス連銀のカシュカリ総裁やクリーブランド連銀のハマック総裁の発言から、利上げの旗を降ろしたわけではない。ただし、ハマック総裁は12日に発表された7月のCPIを意識してかインフレ鈍化の兆しに言及している。あくまで兆しであって、鈍化と認めるには時間がかかりそうだ。では、何を目安にすべきか。当レポート7月15日号で取り上げた通り、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、コアPCEで前月比の伸びが0.2%以下で26年後半を通じて続くことがインフレ収束の一つの目安としているのが参考になろう。
なお、デーリー総裁や、バーキン総裁など他の地区連銀総裁はインフレに警戒感を示しつつ、鈍化が続くか見守る内容の発言をしている。利上げ判断を先送りする参加者が多いことは、議事要旨とも整合的だ。
AIのインフレへの影響についてFOMC内部でも考え方に違いがあるようだ
次に、今回の議事要旨で筆者が気になったのはAIがインフレに与える影響と、AI投資の資金供給源の一つであるプライベートクレジットへの言及だ。
FRBのウォーシュ議長はAIが生産性を改善させ、インフレ下押し効果を生むと主張している。しかし、議事要旨ではこのような考え方は少数派とみられる。AIのインフレへの影響について見解の違いは幅広く、コンセンサスは見出しにくいが、AI投資はインフレ押し上げ要因との見方は多いようだ。地区連銀が発表する様々なペーパーを見ても、AI投資はインフレ要因との意見は少なくない。AIと生産性の関係などの評価はウォーシュ議長が立ち上げたタスクフォースでも検討される運びだが、タスクフォースを待つ必要はない。AIのインフレへの影響については金融当局の範疇にあるテーマだろう。AI投資を背景とした半導体価格の上昇が製品価格に転嫁される例は出始めているが、CPI全体を押し上げるまでには至っていないようだが先行きは気になる。エネルギー価格の動向に左右され物価全体としては足元鈍化だが、中東情勢の悪化リスクは残るうえ価格転嫁の動向にも注意が必要だ。
なお、最近報道が落ち着いているプライベートクレジットは解約請求などの問題は解決しておらず、金融システム安定の点からFRBは注視し続けているのだろう。同時に、AI投資の資金供給源としても関心を集めているのではないだろうか。今回の議事要旨を踏まえ、AI投資のインフレへの影響には幅広く注意を払い続けたい。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。