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- 7月CPIに見る物価変動の背景と次のインフレ動向
日本の7月CPIは、コア・総合・コアコアいずれも前年同月比の上昇率が6月を上回った。電気・都市ガスの下落幅縮小に加え、生鮮食品を除く食料や財の価格上昇圧力が根強かった。今後はエネルギー関連の政策により一部は押し下げられるものの、他の項目は上昇が続き、年度末にかけ緩やかな物価上昇が続く可能性がある。市場は日銀が9月会合で追加利上げを決定する公算が高いとみている。
7月の日本のCPIの伸びは概ね市場予想通りながら、6月を上回った
総務省が8月21日に発表した7月の消費者物価指数(CPI、2025年=100)は変動の大きい生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比で1.8%上昇と、市場予想と一致したが、前月の1.6%上昇を上回った(図表1参照)。
生活実感に近い生鮮食品を含めた総合CPIは1.9%上昇と、市場予想と一致したが、6月の1.6%上昇を上回った。変動が大きい生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは1.9%上昇し、前月の1.7%上昇を上回った。なお、今回のCPIは2025年基準に改定された。前回の改定(2020年)では通信料などの引き下げにより大幅な下方修正となったが、今回の影響は小幅だった。
7月CPIには、食料や財項目の一部に、物価上昇圧力がみられた
7月のCPIのポイントは前年同月比の伸びが6月分を上回り昨年後半頃からのインフレ鈍化傾向に底入れが見られたことだ。日銀がインフレの基調的な動きとして重視するコアCPIは2ヵ月連続で上昇幅を拡大させ、総合CPIでは3ヵ月連続となった。
図表1にあるように日本のインフレ率は昨年後半頃から鈍化傾向だった。鈍化の主な背景として、コメ価格が昨年夏頃までの上昇から下落に転じたことが挙げられる(図表2参照)。CPIを押し下げた他の要因として、ガソリンなどの暫定税率廃止やエネルギーに対する激変緩和措置といった対策や、高校授業料無償化などの教育無償化政策(2026年4月の学校給食無償化政策を含む)などの政策対応が挙げられる。
7月のコアCPIの伸びが前月から押し上げられた背景として、電気代、都市ガス代の下落幅が縮小したことが挙げられる。電気代は6月に前年同月比で1.7%下落したが、7月は0.1%の下落にとどまったからだ。都市ガス代も同様だった。なお、これらの下落幅縮小はテクニカルな理由によるとみられる。なお、電気やガス代は7月から9月に新たな政策対応が決定しており、8月検針分(8月CPI)にはこれらの価格の引き下げが反映するとみられる。
コアCPIの7月の押し上げ要因のうち、より重要な背景として、食料や財など他の項目の価格上昇圧力が根強いことだ。図表2を参考にして、食料(除く生鮮食品)を最初に掘り下げよう。
米類は7月が前年同月比で11.6%下落と押し下げ要因だった。しかし、食料(除く生鮮食品)は3.0%上昇と、6月の3.1%上昇とほぼ変わらずで、引き続き物価上昇圧力となっている。主な項目では菓子類(前年同月比7月が6.1%上昇)、から揚げなど調理食品(3.5%上昇)、肉類(3.9%上昇)などの幅広い項目で物価上昇が続いている。せっかくの米価格下落が埋没してしまっている。なお、報道によると、この秋も、すでに上昇傾向な菓子類などを含め、食品メーカーは多くの商品で値上げを予定している。食料は生活に直結するだけに今後も注意が必要だ。
財(ここでは、基本的に財は生鮮食品を除いたベースとする)も7月のCPIの押し上げ要因だった。財は7月に前年同月比で2.4%上昇と、6月の2.0%上昇を上回った。財のCPI押し上げの寄与度を6月と7月について見ると、6月が0.95%pt(パーセントポイント)、7月が1.12%ptだった。両者の差である「寄与度差」は0.17%ptだった。
財の中に含まれる電気・都市ガスや食料(工業製品)などにはすでに言及したので、他の品目に目を向ける。
7月に上昇した主な財品目の背後に、原油価格上昇によるナフサ価格高騰や円安の影響、加えて、AI投資の影響による半導体価格上昇が一部の商品の価格に転嫁される動きがみられた。
原油価格の波及は7月に前年同月比で9.8%上昇した洗剤や入浴剤などにも影響が及んだ可能性がある。また、ナフサ価格などの影響はペットボトルや食品トレーなど幅広い影響が考えられる。食品メーカーは食品そのものの値上がりに加え、物流費や、包装資材の価格高騰も値上げの背景と説明することがある。原油価格の動向次第だが、波及効果には注目し続ける必要がありそうだ。
次に、パソコンやタブレット端末などを含む教育娯楽用耐久財は6月の2.1%下落から7月は1.7%上昇に転じた。米国では大手パソコンメーカーが半導体価格の値上がりを製品に価格転嫁する動きがあった。日本でも同様の動きがみられるようだ。パソコンの価格動向を短期的にみると、ノート型は7月に前月比で3.2%上昇するなど影響がうかがえる。もっとも、同じパソコンでもデスクトップ型の価格は前月から横ばいとなるなど、ばらつきもある。今後、幅広く価格転嫁が続くのか注視が必要だ。
特殊要因を除いたインフレ率高止まりを重視、日銀は利上げに前向き
今後のCPIの展開を踏まえ、日銀の金融政策を占う。まず日本のCPIは今後、電気代、都市ガス代などが物価の下押し要因になる一方で、政策対応を受けない他の項目は7月同様に上昇傾向が続く可能性が高い。物価の下落要因と上昇要因をはかりにかければ、緩やかな上昇が年度末に向けて続く可能性がありそうだ。なお、来年度には飲食料品の消費税引き下げが見込まれている。
日銀は7月の金融政策決定会合(会合)の「主な意見」でも追加利上げに前向きだった。日銀は消費税率の変更などの政策対応(特殊要因)を除いたインフレ率を物価の判断材料として重視するとみられインフレ懸念は強いと思われる。9月会合での利上げの可能性が高いとみるが、まずは27日の日銀氷見野副総裁の講演と記者会見に要注目だ。
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