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- 一時155円台まで円高が進行した背景の整理
9月の長期国債入札は、30年物の応札倍率がやや低下したものの全体として需要は堅調だった。9月初、円相場は1ドル=155円台まで急円高が進行する局面もあった。背景には、日銀の連続利上げも視野に入るタカ派姿勢の強まりによる日米金利差縮小観測が挙げられる。海外要因としてFRB高官の据え置き発言が挙げられる。ただし、海外要因は米雇用統計やCPIなど今後の経済指標次第だ。
長期金利への不安が残る中、長期国債入札は一応無難に通過
財務省は9月1日に10年物国債、3日に30年物国債の入札を実施した(図表1参照)。10年物国債入札の平均利回りは2.995%ながら、最高落札利回りは3.011%となった。入札の好不調を示す応札倍率(応札額を落札額で割った倍率)は10年物国債が3.29倍と過去1年の平均の3.26倍や、不調となった前回入札(8月)の2.56倍を上回った。30年物国債の応札倍率は3.79倍と、前回の3.86倍を下回ったが、過去1年平均の3.52倍は上回った。今回の入札に対し、「やや低調」との受け止め方も報道などにあった。しかし、入札後の国債市場は安定している。国債供給への不安は残るが、需要の底堅さは確認できたと言えそうだ。
日銀のタカ派姿勢は円高のサポート要因だった可能性が考えられる
急速な円高が進行している(図表2参照)。4日午前の東京外国為替市場で、円は1ドル=155円台で取引される局面もあった。7月末の日米協調為替介入後を思い起こす水準だ。図表2を見ると、足元の円高は為替介入を思わせるチャートの形にも見える。しかし、これまでのところ為替介入に関する報道等は見当たらない。日本の当局は引き続き「臨戦態勢」で円安を懸念しており(覆面など)介入の可能性もゼロではない。ここでは、それとは別の、足元の急速な円高要因を整理する。
国内要因では日銀が金融引き締め姿勢を本格化させるとの市場の期待が挙げられる。ベッセント米財務長官は日銀の植田総裁と8月30日に20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせ会談を設定した。この会談の声明文で米財務省は、「円安が日本国内のインフレ圧力を高める要因になっている」ことを指摘した。また、「インフレ期待を安定させ、為替相場の過度な変動を回避するためには、金融政策の適切な策定と情報発信が重要だ」と述べ、日本の円安に対する適切な対応への期待を強くにじませた。
植田総裁はベッセント長官との会談内容には言及を避けたが、9月1日にG20後の会見で、「これまで以上に上振れリスクに気を配って政策運営」を行う考えを示した。8月末から足元までの動きを受け、市場は9月の日銀金融政策決定会合での利上げをほぼ確実視するようになった。
日銀の高田審議委員の9月2日の札幌での挨拶(および記者会見)でタカ派(金融引き締めを選好)のトーンを一層強めた。高田氏は、従来の年2回という固定的ペースでなく、新たな状況へ機動的な対応が必要になると指摘した。利上げ幅も、「幅広い選択肢の中で対応していく必要がある」と述べ、これまで同様の0.25%の利上げ幅にこだわらない考えを示した。高田氏の考えが日銀全体に広がるのか現段階では分からないが、連続利上げなど、これまでとは異なる利上げペースも想定される発言だけに、市場は身構えた面があるようだ。
これまでの日銀の利上げペースは概ね半年に1度程度だった。米国などと異なり、インフレ率で調整した実質政策金利が日本はマイナスであることなどから、日銀に対して市場は利上げが後手に回るビハインド・ザ・カーブを懸念している。インフレ対応の遅れが、利上げ到達点の想定(ターミナルレート)を押し上げや、期待インフレ率を不安定化させることなどが懸念されるからだ。これらは名目長期金利の押し上げ要因だったことも考えられる。こうした中、9月初の長期国債入札を波乱なく通過したことは、ある程度の国債需要が確認されたことに加え、将来的にではあるが、国内市場への投資回帰の兆しとの期待もあったかもしれない。あくまで、財政(供給)懸念が後退すればだが。
海外要因が円高の一因の可能性はあるが円安対応は国内政策が基本
日銀のタカ派姿勢が円高要因と考える背景は、日米金利差縮小観測があるからだ。そこで海外(米国)要因を確認する。なお、海外要因は円安対応を意図してではなく、自国の政策が結果として市場に円高要因として解釈されたとみている。
米連邦準備制度理事会(FRB)高官の9月の発言の中に円高要因のものがあった。1つはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言で、現在の政策金利がインフレ率を物価目標に戻すのに十分か、それとも追加的な対応が必要か、明確な答えはないと指摘し、据え置きの可能性を示唆した。
3日にはFRBのウォラー理事が、「インフレ率の低下傾向が続けば、政策金利の据え置きを支持する」と説明したことも円高要因となった可能性はある。ウォラー理事の発言の中に、据え置きも視野にあることが示唆されるからだ。ただし、8月の消費者物価指数(CPI)など今後発表される指標に「大きく左右される」とも説明している。市場は、CPIへの注目度を高めそうだ。FRBのウォーシュ議長のジャクソンホール会議での基調講演を受け、市場は9月利上げ見通しを引き上げたが、両者の発言を受け利上げ見通しは若干後退したようだ。
すでに発表された米経済指標の中で、FRBの利上げ観測を後退させる内容は一部に限られる。米民間雇用サービス会社ADPが9月2日に発表した8月の全米雇用報告で、民間雇用者数は前月比3.8万増と、1月以来の低水準で市場予想を下回ったことなどに一定の影響はあったかもしれない。
しかし、4日、日本時間午後9時半に発表される8月の米雇用統計や、来週発表予定の8月のCPIなど、今後発表される重要指標がはるかに重要だ。いずれにせよ、海外要因は足元の円高の一助となった可能性はあるが、今後についてはデータ次第と不確実性が残る点に注意が必要だ。円安への対処は金融・財政政策による日本の対応が不可欠と思われる。
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