Article Title
タカ派色強まった9月のFOMCと今後の展望
梅澤 利文
2026/09/17

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

9月のFOMCでは、政策金利を3.75%-4.00%に引き上げたうえ、年内1回の追加利上げが示唆され、タカ派姿勢が強まった。声明文には「2%インフレ目標への適時な回帰」が明記された。ウォーシュ議長はインフレ鈍化の評価に慎重で、金融環境は引き締め的とは言い難いとした。ドットチャートからは、利上げは単発で終わらない一方で、データ次第だが、過度な連続利上げも想定していないことが読み取れる。




Article Body Text

9月のFOMCは市場予想通り利上げ、年内追加利上げも示唆

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月15日-16日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、市場予想通り政策金利(フェデラルファンド(FF)金利)の誘導目標を3.75%-4.00%に引き上げた。今回のFOMCは利上げに加え、12対0の全会一致での決定となった(詳細は後述)。

声明文は利上げについて、2%のインフレ目標への「より適時な回帰」を後押しすることを目的と説明している。今回発表された政策金利見通し(ドットチャート、図表1参照)によると、年内もう1回の利上げが見込まれている。全体の発表内容からタカ派(金融引き締めを選好)寄りのFOMCとみられる。

FOMC参加者の経済、インフレ見通しは利上げ支持の方向に修正された

9月のFOMCは、政治からの利下げ要求など事前のノイズを抑え、利上げを実施した。タカ派寄りとされる今回のFOMCの要点を確認したうえで、今後の展開を示したい。

タカ派的と思わせたのは、今回の声明文で新たに「2%の目標へのより適時な回帰を後押しする」が盛り込まれた点だ。遅れることなく、できるだけ早く物価目標に戻す意向が示唆され、前回(7月)のFOMCからの変化が筆者には感じられた。

次に、FOMC参加者の経済見通しでは、GDP(国内総生産)を26年と27年について引き上げた(図表2参照)。失業率は26年から28年について下方修正(改善)されている。個人消費支出(PCE)物価指数に示されたインフレ率は、図表にあるように、概ね上方修正された。声明文の経済認識では新たに「国内支出の底堅さ」の文言が追加されたが、図表2の経済見通しと整合的だ。景気、雇用が良好な中、対処すべきは高止まりするインフレということが示唆される。

ウォーシュ議長の会見にもインフレ抑制への姿勢が見られた。夏にインフレ指標の一部は鈍化したが、ウォーシュ議長はインフレ基調が改善していないとの認識を示した。ウォーシュ議長は経済指標を単月ではなく、傾向で見ることの重要性を強調し、夏の鈍化を否定したことはタカ派的といえよう。

また、金融環境が引き締め的とは言い難いと繰り返したこともタカ派的だ。ウォーシュ議長は7月のFOMCの会見で金利上昇が金融環境を引き締めているとの認識を示した。しかし、8月のジャクソンホール会議では、この見解をひっくり返し、金融環境は引き締め的とは言い難いと改めた。今回の会見でも、タカ派的と言われるジャクソンホール会議での講演と同様のトーンだった。

反対票が3名であった前回のFOMCと異なり、今回は全会一致で利上げが支持されたのもタカ派的だ。今回のFOMC前には、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁がインフレ鈍化の兆候や、エネルギー価格上昇の二次的波及も弱いとして据え置き示唆ともとれる発言があった。他にも据え置きを支持する可能性があったFOMC参加者は複数いたが、結局、投票メンバー全員が利上げを支持した。足元の原油価格再上昇や、8月の雇用や物価統計、市場の利上げ織り込みが据え置き派の考えを変えた可能性はある。一方で、ウォーシュ議長がFOMCを1つにまとめ上げた点は過小評価すべきではないと思われる。今回のFOMCの隠れた成果は、7月のFOMC会見で揺らいだウォーシュ議長への信頼の回復ではないだろうか。

ドットチャートは追加利上げを示唆するが、将来の利下げ方向も視野

FRBの次のアクションは何か。図表1のドットチャートが示唆するのは年内1回の追加利上げだ。年内のFOMCは10月と12月の2回が予定されている。ドットチャートでは、見通しを提出した18名のうち12名と大半が年内1回追加の利上げを見込んでいる。2回とも利上げを見込むのは4名にとどまる。1回分の利上げなら、11月の中間選挙前の10月ではなく、12月の利上げを見込むのが自然だろう。

来年のFRBの金融政策の見通しは、年内ほど明確ではない。ドットチャートの中央値が示唆する政策金利の水準は26年に追加利上げを行った後、27年は据え置きが示唆されている。27年のPCE物価指数は2.3%へ鈍化することが見込まれる中、据え置きであってもある程度の鈍化は見込んでいるようだ。

ただし、ドットチャートでは、最も多い分布が8名となっている。主に「年内2回の利上げで来年据え置き」、または「年内1回の利上げで、来年追加利上げ1回」の合計と思われる。何人かは、来年の利上げを想定しているようだ。28年は利下げ方向が見込まれているようだ。

ドットチャートから想定されるのは、9月FOMCの利上げが単発で終わる可能性は極めて低い一方で、現段階では、FOMC参加者は過度な連続利上げを想定していないように思われる。もっとも、今後の金融政策はウォーシュ議長の行動基準『基調的なインフレが、明確、かつ十分な速さで目標に向かっていると確信できること』の影響が高まるかもしれない。なお、ウォーシュ議長の会見の中で、筆者が気になったのは、先に述べた「金融環境が引き締め的とは言い難い」という認識とも通じるが、今回の利上げは金融緩和の度合いを調整したと述べたことだ。これは単にさらなる利上げを示唆するだけでなく、金融環境の緩和に対しても判断材料としていることが示唆される。インフレ等指標だけでなく、金融環境の緩み具合にも注意が必要だ。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●投資信託は値動きのある有価証券等に投資するため、基準価額は変動します。外貨建資産の場合は為替変動リスクもあります。したがって、投資者の皆さまの投資元本が保証されているものではなく、基準価額の下落により損失が生じ、投資元本を割り込むことがあります。運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性、特定の目的への適合性を保証するものではありません。記載内容は作成日現在のものであり、予告なく変更される場合があります。また、過去の実績は、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
●投資信託は預金等ではないため、元本および利回りの保証はなく、預金保険機構または保険契約者保護機構の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料の内容は、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を目的としたものではありません。
●当資料に掲載されている内容に関する著作権その他の知的財産権は、原則として、当社、ピクテ・グループまたは正当な権利者に帰属します。無断での使用、複製、転載、改変、翻訳、配布等は禁止されています。マーケット・データのご利用に関する詳細は、当社ウェブサイト 「会社情報」の「運用・方針等」内の「マーケット・データ利用規約」をご参照ください。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


9月の米雇用統計、10月利上げの可能性は後退か

9月日銀短観が示す景況感と追加利上げの余地

フランス国債利回り上昇、何がそうさせたのか

メキシコ中銀、据え置きの裏にある複数の検討課題

日銀9月会合:タカ派的利上げペースに円安で反応

米8月CPIから想定される9月FOMCとその後の展開