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日銀9月会合:タカ派的利上げペースに円安で反応
梅澤 利文
2026/09/24

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概要

日銀は9月会合で無担保コール翌日物金利を0.25%引き上げ1.25%としたが、2名の反対票やタカ派色の乏しさから、市場は円安で反応した。ただ日銀は26年度後半以降に物価上昇率が2%超へ上振れするリスクを認識し、利上げ継続の可能性は示唆している。日銀は今後、政策金利がなお緩和的かどうかの判断を迫られ、長期金利、銀行貸出、資産市場を含め金融環境の緩和度合いを注視しそうだ。




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日銀、9月の金融政策決定会合で市場予想通り利上げを決定した

日銀は9月17日-18日に開催した金融政策決定会合(会合)で、大方の市場予想通り、政策金利である無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.25%引き上げた(図表1参照)。この結果、政策金利は1.25%となった。

投票は賛成7に対し反対2だった。反対票を投じた浅田審議委員は、足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回るなか、経済の状況が必ずしも強いとはいえないことを反対理由とした。反対票を投じたもう一人の佐藤審議委員は、経済・物価情勢が、現時点ではこれまでに比べ大きく加速していないと考えられるタイミングでの利上げは適切でないことを反対の理由とした。

物価上振れリスク要因として、中東情勢、AI需要、円安を指摘した

9月会合後の市場の反応を為替(ドル円)の動きで振り返ると、円安・ドル高で反応し、想定したほどタカ派(金融引き締めを選好)寄りではなかったとの受け止めだった。なお、円安進行は、最初に「金融市場調節方針の変更について」など一連の資料が発表された後(18日正午頃)と、植田総裁の会見終了後に見られた。今会合での利上げは、前回利上げした6月会合(7月会合は据え置き)から3ヵ月しかたっていない。従来の概ね半年に1度というペースに比べタカ派的ではある。しかし、市場は今回の利上げを事前に織り込んでおり、ペースを速めただけでは不十分だったようだ。

まず、発表資料の中でタカ派とみなされなかった要因を取り上げると、高市政権が任命した2名の審議委員が反対票を投じたことが挙げられる。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で全会一致により利上げを決めたことに比べ、背景が異なるとしても、タカ派度合いが弱い印象に見えてしまったようだ。

また、タカ派の審議委員から0.5%のような大幅な利上げ幅は提案されなかった。もっとも、タカ派の高田、田村両審議委員は物価の見通しに反対票を投じた。日本のインフレ率は(基調的物価上昇率も含め)物価安定の目標にそれぞれ達する水準、または概ね整合的な水準とした。他の日銀メンバーの物価認識とみられる26年度後半から27年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準になるとの見方とは一線を画している。両審議委員のタカ派姿勢には今後も注目したい。

日銀が公表した「経済・物価の現状と見通し」などに示された物価認識では、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くもとで、原油価格上昇、グローバルなAI関連需要、円安が物価を押し上げ26年度後半以降に2%を上回る(見通し期間後半、原油高の影響が減衰し物価も鈍化)との見通しが示された。また、上振れリスク要因として、中東情勢、AI需要、円安に注意が必要と述べている。

このような中、基調的な物価上昇率は(賃金・価格設定行動の積極化や期待インフレ率の上昇を踏まえると)「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがあると指摘している。この指摘そのものはタカ派的だが、基調的物価の上振れリスクやその要因(AI需要など)は展望レポート(7月)などで既に指摘されていた。タカ派化の新たな材料に注意を払っていた市場からすると物足りず、ハト派(金融緩和を選好)寄りと映ったのかもしれない。

植田総裁会見は、先行してタカ派に傾いた市場の見方を上回らなかった

植田総裁の会見後も、過去にあった過度なものではないものの、円安が進行した。植田総裁は利上げ継続を示唆しており、会見がハト派的であったわけではない。利上げの道筋については物価情勢次第で様々な可能性があるとして、10月会合での連続利上げや、0.5%幅などの大幅な利上げに含みを残し、完全に否定したわけではない。また、「毎回の決定会合で政策を評価」するとして、次回はライブであることを示唆した。

しかし、会見の中で連続や大幅な利上げが必要となるのは、一般論としてインフレが物価目標を上回る場合の手段であることを示唆した。また、利上げ前に使われる「次回の会合で利上げの是非を検討」のような発言は当然ながらなかった。さらに、特定の利上げ間隔も示唆しなかった。追加利上げは12月会合のように特定せず、毎回の会合をライブとしただけでは、さらなるタカ派化への期待が先走る市場の見方を上回る内容ではなかった。

植田総裁の発言の中で、「政策の局面が変化した」との発言も注目された。基調的物価が2%を下回っていた局面では政策金利を引き上げる政策運営だったが、それが基調物価を2%程度で安定させていく政策運営へと変化したことを述べたものとみられる。ただし、足元では物価の上振れリスクがあることから、政策運営は引き続き利上げ姿勢となり、結果として、何ら変化がないようにも映る。

ただし、筆者の見解では局面変化により、将来的には政策運営に変化があるように思われる。同様の発言は10日、増審議委員の福井での、「上下両睨みで機動的な施策が行える体制」発言にみられる。政策金利を(基調的物価の上昇とともに)中立金利の領域に引き上げた後は、基調的物価を安定させる上下対称の政策運営に長期的にシフトさせてゆく方針を示唆したようだ。なお、注意したいのは中立金利で、日銀はその推定値の範囲を1.1%~2.5%としている。しかし、中立金利の範囲は1.4%と幅広いうえ、上限(2.5%)、下限(1.1%)の推定にも幅があることだ。今回の利上げで政策金利が1.25%となり形式上は中立金利の範囲となった。しかし、政策金利が緩和的でないと言い切れるかには慎重な判断が求められる。

今後は政策金利の水準だけでなく、金融環境が緩和的かどうかにも注目すべきと筆者は考えている。日銀は過去において金融政策の方針として、低い実質金利を正常化させてきた。しかし、これを緩和的な金融環境に置き換え、金融環境の緩和度合いを測りながら、引き締めを続けてゆくとした。この微妙な変化に注意した。なお、植田総裁は会見で金融環境を、長期金利、銀行貸出、資産市場から見ていると説明した。とくに後者の2つがまだ少し緩和的と指摘している。これらの指標に対する注目度を高める必要がありそうだ。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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