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フランス国債利回り上昇、何がそうさせたのか
梅澤 利文
2026/10/01

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概要

フランス10年国債利回りが上昇傾向で、ドイツ国債とのスプレッドは2012年半ば以来の水準に拡大した。背景は、フランスの財政赤字拡大、不安定な議会運営、来年の大統領選を控えた不確実性がある。財政赤字対GDP比率は、ドイツやスペインより悪化しており、財政改革も難航している。政治的には緊縮財政を掲げる与党と反緊縮を掲げる国民連合・左派が対立し、財政改革への信認が揺らいでいる。




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フランス国債とドイツ国債利回りの格差が歴史的水準にまで拡大した

9月30日の欧州金融市場では、フランスの長期金利の指標となる10年国債利回りが4.86%程度にまで上昇した(図表1参照)。前日の利回りを5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度上回った。一方、ユーロ圏の国債利回りの指標とみられることが多いドイツ国債の30日の利回りは3.59%程度と前日を4bp下回った。その結果、両国の利回り差(スプレッド)は2012年半ば以来の歴史的水準にまで拡大した。

フランス国債は、財政赤字を巡る不安と過去最高となる国債発行への懸念、議会の分裂と大統領選を控えた政治的混乱や不確実性、信用力悪化懸念などを背景に売り圧力が高まっている。

フランスの財政赤字対GDP比率は財政規律基準から逸脱

フランス国債利回りは足元、上昇(価格は下落)傾向で、ドイツ国債とのスプレッドが拡大している。また、フランスの利回り水準は、イタリアを上回り、経済が堅調なスペインを大幅に上回っている。欧州債務危機で財政悪化が際立ったものの、危機後は財政改革を継続してきたギリシャの利回りも、フランスが上回っている。フランス国債利回りを上昇させているいくつかの要因について確認する。

まず、財政状況の悪化だ。一つの例として財政赤字対GDP(国内総生産)比率をユーロ圏の主な国についてみると、フランスは2025年が5.1%と、ドイツの2.7%、スペインの2.4%と比べ赤字幅が大きい(図表2参照)。ギリシャは1.7%の黒字で財政改革の成果がうかがえる。

図表2をみると、ユーロ圏の主な国の中で、フランスの財政赤字の大きさは突出している。そのうえ、政府の予想では2026年が5.4%程度と、さらなる悪化が見込まれている。なお、フランス政府は10月1日に、27年度予算案を発表した。540億ユーロ規模の歳出削減や財政赤字対GDP比率の5%への引き下げを表明、緊縮路線が維持された。

同比率(3%未満)は欧州連合(EU)の安定・成長協定が定める財政規律の基準の一つ(他に債務残高比率60%)であり、EU加盟国に遵守が求められている。EUは2年前、フランスに対し「過剰赤字手続き(EDP)」を開始した。EDPに基づきフランス政府は29年までに同比率を3%未満へ戻すことが理事会勧告で求められている。ただ、景気回復は鈍いうえ、少数与党による議会運営で予算協議は難航し、緊縮財政路線の困難さが想定される。

次に、財政悪化に伴い、フランスの格下げも懸念材料だ。信用力の目安であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは9月になり急上昇(信用力の悪化を反映)している。フランスの長期債格付けを確認すると、ムーディーズ・レーティングス(ムーディーズ)はAa3(AA-に相当)、S&Pグローバル・レーティング(S&P)はA+としている。なお、ムーディーズはフランスの格付け見通しを、1年ほど前から中期的な格下げを示唆する「弱含み(ネガティブ)」としているためフランスがダブルA格を維持できるとみる市場関係者は多くない。その分、仮に10月の見直しで実際に格下げとなっても比較的ショックは小さいかもしれない。一方、すでにフランスをシングルA格としているS&Pは、格付け見通しを「安定的」としている。格付け会社はあらかじめ公表された見直し時期に、格付け変更を行うことが通例だ。また、格付け変更の場合、事前に見通し変更などでアナウンスするのが普通だ。 S&Pのフランスの次回見直しは11月が予定されている。格付け見通しを弱含みに引き下げる可能性がありそうだ。もっとも、S&Pは25年10月に、見直しが予定されていない時に、(想定外の)格下げを実施した。当時、フランスの政治状況の悪化から、財政再建の前提が崩れたことが格下げの背景だった。フランス国債の格下げリスクは、利回り上昇要因として、注視する必要がありそうだ。

フランスの政治的対立の背景に財政緊縮派対反緊縮派の構図がある

フランスの政治的な混乱も国債利回りの上昇要因だろう。政治不安には様々な背景があるが、27年度予算法案をめぐる「緊縮派」と「反緊縮派」の対立を1つの軸として検討する。

緊縮派はマクロン大統領率いる少数与党で、予算案でも緊縮財政が基本だ。国民の人気は低い。反緊縮派は事実上ルペン氏が率いる極右政党・国民連合(RN)が挙げられる。なお、「左派」も年金の支給年齢引き上げに反対するなど反緊縮派である。その点で与党とは対立している。

国民連合の支持率は上昇傾向だ。足元の世論調査をみても大統領選挙第1回投票についてルペン氏は3割以上の支持を集めている。国民連合が支持されるようになった理由は様々だが、過去の主張であったEU離脱など過激な主張を捨て現実路線に舵を切ったことが大きい。離脱でなく、EU内部にとどまりつつ財政規律の緩やかな適用を求める戦略は財政緊縮の必要性を低下させる。また、フランスのEU拠出金負担は2番目の大きさだが、対価に乏しいと考える国民が多い。そこで拠出金削減を訴える国民連合に支持が集まっているようだ。

親EUの与党は緊縮政策による財政改善を訴えるが、国民の支持が高いとはいいがたい。27年度予算案の行方は、緊縮派と反緊縮派の駆け引きの場となっているが、来年には大統領選挙も控えるだけに、妥協点を見いだすのは容易でないだろう。

足元の世論調査では、来年の大統領選挙では、決選投票に進むのは国民連合と、左派(不屈のフランス)となる可能性もある。仮にこれらの反緊縮財政を掲げる勢力同士の争いとなれば、財政改革は期待しにくいのではないか。


梅澤 利文
梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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