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- 9月日銀短観が示す景況感と追加利上げの余地
9月の日銀短観では、大企業・製造業のDIは改善し、中小企業も製造業・非製造業ともに堅調だった一方、大企業・非製造業は5期ぶりに鈍化した。製造業はAI投資ブームやサプライチェーン改善が下支えとなった。企業金融面はおおむね緩和的だが、借入金利の上昇が進んでおり、日銀には追加利上げ余地が残る一方で、その影響は今後徐々に大きくなると見込まれる。
9月日銀短観、製造業は改善を継続、一方、非製造業は勢いを失った
日銀は10月1日に9月の全国企業短期経済観測調査(短観、概要)を公表した(2日には調査全容が発表された)。大企業・製造業のDIはプラス24と、市場予想の25を下回ったものの、前期(26年6月)の22を上回った(図表1参照)。大企業・非製造業のDIは35と、市場予想の36、前期の37を下回った。鈍化は5期ぶりとなる。中小企業のDIでは、製造業は14と、市場予想の11、前回の9を上回った。中小企業・非製造業は15と、市場予想の14を上回ったものの、前期の15からは横ばいとなった。
9月短観の回答(調査)期間は8月26日〜9月30日で、対象企業の99%が回答した。なお、9月9日までにおおむね7割の回答があったようだ。
製造業DI改善の背景は、AI投資の恩恵が日本企業にも波及したためだろう
中東情勢の不確実性に伴い、原油価格が9月半ばに向け再加速するなど外部要因が不透明な中、9月の日銀短観は製造業、非製造業ともにDIは比較的高い水準を維持した。特に製造業は大企業が6四半期連続で改善し、中小企業も概ね改善傾向となっている。一方、大企業・非製造業DIは依然高水準ながら、5期ぶりに前期を下回った。
製造業が堅調だった背景を、主に大企業・製造業の業況判断を基に確認する。「石油・石炭製品」は36と、前期(9)から大幅に改善した。ナフサなどの中東以外からの代替調達により、サプライチェーン混乱がある程度緩和したことが背景と思われる。素材産業や生産関連の機械産業も底堅かった。世界的なAI投資ブームが日本の製造業にも波及したとみられる。もっとも、「自動車」は小幅ながら悪化した。熊本地震や台風などが生産を抑制し、押し下げ要因になったとみられる。
なお、大企業、中小企業ともに先行きDIは鈍化しており、見方は慎重になっている。先行きDIの予測信頼度にやや難はあるものの、中東情勢の長期化など外部環境にはリスクもある。代替調達のルートが確保されたとしても、コスト高もマイナス要因だ。先行きに一定の注意は必要だろう。
次に、非製造業を大企業中心にみるとDIは依然として高水準だが、9月調査では改善の勢いが失われた。主な業種の業況判断をみると、「小売」や「宿泊・飲食サービス」が前期から悪化した。地震や台風などの悪天候に加え、中国からの旅行者減少によるインバウンド需要の減速が影響した可能性が考えられる。ただし、9月前半には大半の回答が回収されたとみられることから、9月の悪天候がどこまで影響したのか判断に迷う面もあるが、消費関連業種の回復ペースはやや鈍かった。
一方、「建設」は前期から改善し、「電気・ガス」のDIも前期を上回った。非製造業においても、大企業、中小企業ともに先行きDIは鈍化している。
設備投資は前年度と同様の動き、企業金融については足元は緩和的だが
次に、設備投資計画を確認する。設備投資計画全体の動向を全規模・全産業(ソフトウェア・研究開発を含む、除く土地投資額)で確認する(図表2参照)。9月調査における設備投資は前年度比で9.3%増と、6月調査の8.8%増を上回った。一部に下方修正され気になるセクターはあるが、26年度の設備投資計画は25年度と似た軌道となっている。なお、例外となった年もあるが、短観の設備投資計画は例年9月にピークをつけ、12月調査では(計画の翌年先送りから)多少減速するのが通例だ。中東情勢、金利や景気動向などが設備投資計画に影響するとみられるが、前年度並みの伸びが確保できるのかなど、今後の展開を注視したい。
最後に、短観の企業金融を確認する。短観にはほかにも様々な情報が含まれるが、日銀の金融政策を占ううえで、銀行貸出(図表3参照)も注目すべき要因の1つと考えるからだ。短観の企業金融では銀行から借りる企業側の声が示されている。日銀の植田総裁は9月の金融政策決定会合後の会見で、「金融環境」の緩和度合を評価する尺度として、①(長期)金利、②銀行貸出、③資産市場を挙げており、注目度が高いとみられる。
なお、植田総裁は長期金利がかなり引き締まっていると述べた一方で、「残り2つの銀行貸出や資産市場のチャネルは、少しまだ緩和的だ」との内容を指摘した。今回の短観で確認してみよう。
結論から述べると、企業からみた貸出環境はおおむね緩和的のようだ。金融機関の貸出態度DIは全規模・全産業合計で9月調査は13(緩いと厳しいの差)と、6月調査から横ばいだった。手元資金の余裕などを示唆する資金繰り判断DI(「楽である」ー「苦しい」)は全規模・全産業でプラス11と前回から横ばいだった。資金繰りが楽と考える企業が上回っている状況だ。大企業に限れば、プラス12からプラス13へと、改善している面もある。
一方で、変化もみられる。借入金利水準判断DIを全規模・全産業でみると、6月調査の61が9月調査では68へ上昇した。9月調査には日銀9月会合の利上げが十分に反映していないとみられる中、これまでの金利上昇が借入金利を着実に押し上げ、緩和度合いは徐々に縮小する方向だろう。
日本の物価や景気動向に、9月短観からの情報を加味すると、現在の1.25%の政策金利に対し、日銀には追加利上げの余地(2回程度)が残されていると筆者はみている。一方、局面は変わりつつあるとも考えている。過去の利上げは金融環境への影響は小幅だが、今後は徐々に無視できなくなる。連続利上げなどは考えにくく、また、市場が見込む利上げ到達点も高いように思われる。
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