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気候問題を認識した米国は、クリーンエネルギー新時代の先導役となる
2021/03/08

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概要

バイデン大統領の大胆な環境政策は、気候変動に対する世界的な競争を再び活性化し、クリーンエネルギー産業の成長を加速させると見られます。



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ジョー・バイデン氏が新しい米国大統領に選出されたことで、世界最大の経済大国は、地球温暖化を抑止する国際的な取り組みの中心へと戻るでしょう。

民主党の環境アジェンダは、非常に大胆です。2050年までに米国のカーボンニュートラル化を目指す、という壮大な戦略の柱として就任から1日以内に、パリ協定に再加入するという公約と、2兆米ドルの新たなグリーン投資が約束されました。

これは、地球規模の温暖化防止外交にとって、重要な時期に起こった方向転換と言えます。

過去数ヵ月だけでも、EUが経済を脱炭素化するために7兆ユーロを確保し、中国・日本・韓国は、独自に新しい、野心的なネットゼロカーボン目標を発表しました。多くの点で、これらの進展はパリ協定の成功の証しとなります。この合意の重要な特徴は、署名者の関与を時間の経過とともに徐々に引き上げる点です。

パリ協定に世界最大の経済国が戻ったことは、地球温暖化との闘いの形勢を明らかに変えるでしょう。それに伴い、クリーンエネルギー産業は大きな転換点を迎えることになります。

米国のノウハウと、資金力に支えられ、このセクターはダイナミックな新しい時代に突入する体制が整ったように見えます。数十億ドルの新しい民間投資と公共投資の資金が、グリーンインフラと環境技術に流入することが予想されます。言い換えれば、クリーンエネルギーは21世紀の経済の重要な柱になりえる、ということです。

 

クリーンになる4年?

バイデン政権の環境に対するアプローチと、旧トランプ政権のアプローチははっきり分かれました。

旧トランプ政権の下では、政府はクリーンな空気、水質、土地利用などの分野で、約100の環境法を廃止し、化石燃料産業の規制を緩和しました。また、気候研究のための資金拠出も止めています。

バイデン大統領の計画は、いくつかの面で米国の環境に対する取組みを復活させるでしょう。彼は2035年までに再生可能エネルギーに移行することで、発電の脱炭素化を約束しました。

この計画には、例えば、ソーラーパネルの普及率を2倍にし、今後5年間で合計5億台のユニットを設置することが含まれています。

また、計画には、電気自動車(EV)を選好し、ガソリン等を燃料とするエンジン車を段階的に廃止する措置も含まれています。

さらに、バイデン政権は、国際エネルギー機関(IEA)により、世界の最終的なエネルギー消費量と二酸化炭素排出量の3分の1以上を占めていると試算されている「ビルのグリーン化」にもコミットしました。このプログラムには、エネルギー効率を高めるため、600万棟の建物をアップグレードする計画が含まれます。バイデン新政権はまた、カリフォルニア州のような最も進歩的な州の一部が積極的な環境政策を追求する道を切り開き、自動車の排気ガス汚染などの問題をめぐって行われている、連邦政府と主に民主党を支持する州との4年間の法廷闘争に終止符を打つべきでしょう。

新政権は、気候変動だけでなく、大気汚染、水質汚染、プラスチック汚染など、その他の差し迫った環境問題にも取組みます。

 

グリーンオーダー

民主党が10年ぶりにホワイトハウスと、議会両院の双方の議席を確保したため、投資家は、グリーン政策がバイデン政権の初期の焦点になることを注視すべきです。

バイデン新政権は彼の野心的な気候政策を推し進めるため、任期の最初に大統領令を展開しました。彼の一筆で、米国はパリ協定に復帰し、パンデミックからの経済復興策にクリーンエネルギー対策を追加したのです。

同じ方法で、旧トランプ政権の環境規制緩和を取り消し、上場企業に気候変動関連の財務リスクと温室効果ガス排出量の開示を義務付ける新しい法律を制定すると見ています。

バイデン新政権がさらに多くの政策を実現すると信じる理由があります。

一点目は、米国民は気候変動に関する行動に対して、一部の人々が考えるほど敵対的ではないことです。最近の世論調査では、18歳から54歳の共和党の有権者の85%が、気候変動に対するイノベーションベースのアプローチを採用する共和党候補を支持する可能性が高いことが分かっています1

二点目は、気候変動への取り組みには、雇用が生まれる見込みがあることです。クリーンエネルギー産業はすでに主要な雇用主であり、約300万人の米国民がこの分野で働き、バイデン新政権の計画は、その数字に更に1000万人を追加することを想定しています。これは大胆な施策ではありますが、パンデミック後の経済復興に強力に貢献するはずです。

 

クリーンエネルギーという名の新しい競争

バイデン氏のホワイトハウスへの着任は、必然的に米国を野心的な新しい道へと導きます。しかし、彼の勝利による世界的な反響もまた、同様に変化することになります。

一例をあげると、世界最大の温室効果ガス排出者に排出量の削減を約束させることは、地球全体に利益をもたらします。

バイデン新政権のネットゼロ宣言により、米国の二酸化炭素排出量は、今後30年間で約75ギガトン減少する可能性があります。Climate Action Tracker(CAT)の計算によると、それだけで世界の平均気温を約0.1°C下げることができます。

クリーンエネルギーセクターもまた、米国の完全な支援のもと、変化を余儀なくされるでしょう。

米国の意志力、技術力、財政力を活用することが出来れば、業界はこれまで以上に資金が潤沢になり、より革新的になります。

気候変動を元に戻すには、お金と想像力豊かな思考が必要なため、これは非常に重要です。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、主要な脱炭素化と気候目標を達成するために、再生可能エネルギーへの年間投資は2050年までに3倍の8,000億米ドルに達する必要があると述べています2

米国の現金と技術ノウハウの大規模な投入は、主要な経済大国がゼロエミッション技術と基準を達成するために競争する、激しいクリーンエネルギー競争を引き起こす可能性があります。

EVは、多くの国のカーボンフリー経済の追求にとって、極めて重要な要素となってきました。

米国がネットゼロ宣言を発表してわずか1ヵ月後、中国は2035年までに従来のエンジン車を段階的に排除するロードマップを発表しました。すでにEVの世界的リーダーである中国は、外国への依存を減らした独自のサプライチェーンを構築するために投資すると述べていました。

この点では、バイデン政権は、米国ではバッテリーなどの主要自動車部品に対する連邦調達金額を4,000億米ドル増やすことで、EV市場で中国を追い越したいという野心を持っています。

欧州も静観しているわけではありません。欧州では、EVとバッテリー開発への投資を誘致することで中国を上回り、昨年は2年前の前回の計算よりもほぼ20倍の、過去最高の600億ユーロの民間資金と公的資金を確保しました。

 

EVの時代
燃焼機関別 乗用車販売台数世界シェア

Electric:電気自動車、Internal Combustion:エンジン車、Fuel Cell:燃料電池自動車
※電気自動車には、バッテリー式電気自動車とプラグインハイブリッド車が含まれます。
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

太陽光や風力で発電されたクリーンエネルギーの送電量の増加を支える次世代インフラも重要な主戦場となりそうです。中国には、世界で最も長く、最も強力な超高圧直流(UHVDC)送電線があり、ロンドンとモスクワ間の距離を超える2,000マイル以上にわたり5,000万世帯にクリーンエネルギーを供給しています。欧州と米国も、UHVDC送電線で送電網をアップグレードすることを計画しています。

 

緑色の転換点

バイデン大統領の就任が、地球規模の気候行動に新たな勢いを加えることとなり、世界は今、転換点を迎えています。

少なくとも、彼の大統領就任は、グリーン移行を推進する経済力が強さを増している、まさにその時に起こりました。

現在、多くの再生可能エネルギー技術は、ほんの数年前には考えられない規模の経済を達成しており、その結果、化石燃料と比較してコスト競争力が上がっています。

今日、風力または太陽光は、世界のGDPの約73%を占める国々で最も安価な新しい電力源となっています3

輸送についても同じことが言えます。EV乗用車は、5年足らずでほとんどのタイプのエンジン車と同等の価格になると予想されます。

米国の気候変動政策を他国の気候変動政策と一致させることは、世界のクリーンエネルギー産業に大きな影響を与えるでしょう。

この連携は、このセクターへの何十億もの新しい民間および公共投資の触媒として機能し、確実に新しいクリーンエネルギー競争が動き出すことになるでしょう

 

 

註1:https://thehill.com/opinion/energy-environment/522223-trump-is-out-of-touch-with-republican-voters-on-climate-change
註2:https://www.irena.org/publications/2020/Nov/Global-Landscape-of-Renewable-Energy-Finance-2020
註3:BloombergNEF 2020 outlook

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