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COVID-19
市川 眞一
2020/03/03

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概要

新型コロナウイルスの猛威が世界の金融市場を揺さぶっている。ただし、震源地の中国では、感染者数の増加にピークアウトの兆しが見られるようになった。一方、中国以外では、イタリア、韓国の状況が厳しい。韓国は4月15日の総選挙を前に文在寅政権への批判が強まっており、その影響が日韓関係に及ぶことが懸念される。日本国内では、2月16日に政府が新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を開催して以降、対応策の転換が図られた。それまでの水際対策重視を改め、感染者の増加を前提に、ピークを抑制する方向へのシフトチェンジだ。また、過剰とも言える報道が社会的不安を拡大させた結果、手洗いやマスク着用の励行、在宅ワーク、時差通勤、イベントの自粛などが進み、今のところ感染者増加のペースが抑制されている。東京五輪については、IOCの抱えるリスクを考えれば、基本的に開催の方向で準備が進むだろう。世界的にも、日本国内でも、COVID-19は大きな山場を迎えつつあり、今後2週間程度で社会不安を抑制できれば、マーケットも自ずと冷静さを取り戻すのではないか。



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新型コロナウイルスが世界の市場を不安に陥れているのは、感染がどこまで広がるのか見えないことだろう。その意味では、震源地である中国の動静は重要だ。一方、日本の場合、現段階で確認された感染者数が多いわけではない。従って、政府・民間の対応により、ピークを抑制することで、医療崩壊を招くことがないか・・・この点が市場にとっても鍵となるだろう。

2月25日、北京で会見したブルース・エイルワードWHO事務局長補WHOは、中国の感染拡大がピークアウトしつつあるとの認識を示した。確かに、WHOの集計したデータを確認する限り、その言葉は統計的に裏付けされる。震源地である中国でCOVID-19の感染拡大に歯止めが掛かれば、世界のマーケットを落ち着かせる上で重要な一歩となるだろう。

韓国は宗教儀式が感染を助長している模様だ。一方、日本の感染者増加ペースが緩やかな背景には、メディアの報道に敏感に反応、民間ベースで対応が進んできたからではないか。今後、感染者は大幅に増加する可能性が強いものの、そのペースを抑制できれば、社会の不安心理は大きく改善されると考えられる。

2月16日の専門家会議以降、首相官邸主導で本格的な対策が進み始めた。そのポイントは、水際対策ではなく、感染者の増加を前提に、ピークを抑制することで、十分な医療の提供を確保することだ。COVID-19は感染力に反比例して毒性が強くないと見られるだけに、政府の対応が功を奏せば、2週間程度で社会不安を緩和することができるのではないか。

中国では感染者増加のペースに歯止めが掛かりつつあり、日本でも感染者数のピークを抑制する方向へ舵が切られた。市場が落ち着くまであと一歩ではないか。東京五輪については、基本的に開催の方向へ進むだろう。中止・延期の場合、高騰する開催費負担を嫌って開催地への立候補を敬遠する近年の動きを助長し、IOCにとってもリスクが極めて大きいからだ。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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