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株価が動くメカニズムを理解しよう
森永 康平
2020/03/10

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概要

投資を始めると気になるのが株価の動向です。投資を始めたばかりの頃は、毎朝米国の株式市場が上がったのか、下がったのかが気になるかもしれませんし、仕事をしている時もついつい日本の株式市場の動向が気になるかもしれません。
投資家にとっては株価が安い時に投資をして、株価が上昇してきたら売れば利益が出る訳ですが、将来のことは誰にも分からないので、言うは易く行うは難し、というものです。どうやったら株価を予測できるのか。答えは出すことは出来ませんが、株価が動くメカニズムは理解しましょう。



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実は既にみんな知っている

株価が動くメカニズムが分かってたら苦労しないよ、と思うかもしれませんが、おそらく既にみんな知っていると思います。もちろん、株価が動く要因は1つではなく複数あるため、全てを理解できるとは思っていませんが、そのなかでも大きい要因についてはみんなが知っていることです。

たとえば、有名な面接での質問例を挙げましょう。「ここに1本100円の水が入ったペットボトルがあります。これを1万円で売るためにはどうすればよいですか?」というものです。筆者は初めてこの質問を聞いた時に模範解答とは違う答えをしてしまいましたが、後で聞いた模範解答は非常に悪趣味ではあるものの、「そういうことか」と思うものでした。

「旅行中に砂漠でノドが渇いて困っている人に高値で売る」というのが模範解答で、つまり普段はそれほど価値のないものでも、本当に必要として困っている人はあり得ない高値でも買うということだそうです。

たしかに、最近では中国武漢を発端とする新型コロナウィルスが世界中でパニックを引き起こしたことで、日本国内でも薬局やスーパーの商品棚からマスクが消え、ネット上では通常の数十倍の値段で取引されている事実があり、まさに前述の質問と同じことなのでしょう。

難しくいえば需要と供給

これは、経済学の言葉でいえば、価格は需要と供給が交わるところに落ち着くということになります。新型コロナウィルスの話はマスク会社も予想していませんでしたから、普段と変わらない量を供給していたと思いますが、そこに一気にマスクの需要が上昇したため、需要の増加に供給が一切追いつかなかった結果、マスクの値段が跳ね上がってしまいました。

先程の砂漠の件も一緒です。普段は喉が乾けば蛇口をひねれば水が飲め、外出していてもそこら中に自動販売機やコンビニエンスストアがあって水を買える日本においては、500mlの水に対しては100円程度しか払わないでしょう。しかし、水が一切手に入らなそうな砂漠のど真ん中にあっては、貴重な水に対してはいくら払ってでも手に入れたくなるということです。

これが、株価が動くメカニズムです。上場企業の株数は基本的には変わりません。もちろん、株式を新たに発行したり、自社で書いとったりすれば増減しますが、それはたまに起こるイベントであり、通常は株数は変化しません。その前提に立てば、いまの株価なら買いたいと思う投資家が増えれば増えるほど、株価は上がっていきます。逆に、この株価はさすがに高すぎると思って保有していた株を売る人が増えれば株価は下がっていきます。つまり、株価も市場における需要と供給によって動くのです。

大きな視点からテーマを絞る

株式投資の話の様に株価が動くメカニズムについて書いてきましたが、投資信託の選び方でもこの考え方は使えます。投資信託には様々な種類があり、日本の株式市場、米国の株式市場など単一国の株式市場に投資をするものもあれば、債券、コモディティ(商品)、不動産など投資対象も様々です。

いまの経済環境を考えた時に、今後どこの市場やテーマにお金が入ってくるかという大きな視点からテーマを絞り込むのです。たとえば、筆者が社会人になった2007年は新興国経済が世界中から注目を集め始めた時期でした。当時はBRICsと言って、ブラジル・ロシア・インド・中国(南アフリカを含む場合もあった)という新興国の株式市場に投資する投資信託が流行り、基準価額も急騰していました。

もし2005年や2006年の時点で、「先進各国は安定成長期に入って、高い成長率が望めなくなった一方で、これから人口も増え、経済も高成長を続ける新興国に多くの投資資金が流れる」というシナリオを想像して投資できていれば、高いリターンを得ることが出来たでしょう。

美人投票をしよう

なんとなく、需要と供給のバランスによって価格が変動していくメカニズムが分かってきたかと思いますが、ひとつ注意しないといけないことがあります。経済学者のジョン・メイナード・ケインズが株式投資は「美人投票」と似ていると言ったように、自分が需要が高まりそうだ、と思って投資をしてもうまくいかないかもしれません。自分がどうかは置いておいて、多くの人の需要が高まると確信を持てたものに投資をする必要があります。

たとえば、美人の写真が100枚あったとして、そこから最も美人だと思う人に投票をします。最も投票が多かった人に投票した人たちに商品が与えられる。これがケインズのいう「美人投票」のルールです。もし商品が欲しいのであれば、自分が美人だと思う人に投票するのではなく、万人が選びそうな人に投票する必要があります。

大きなお金がどこに流れるのか。そのシナリオは自分よがりな発想ではなく、万人が考え得るシナリオなのか。このような考え方で投資先を選んでみましょう。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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