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自分のことは信用ならない 〜ノーポイント、ノーライフ〜
スミ マサノリ
2020/04/01

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ポイントを貯めなくなって久しい。最後まで唯一残していたTポイントカードも、「Tポイントカードをお持ちですか?」と聞かれて「持ってないです」と嘘をつく日々を送っている。誰もが感じているように、カードで財布がパンパンになることが嫌だった。いざ出そうとすると該当カードが中々見つからず最終的に諦める、の法則に翻弄されることにも疲れた。そもそも、ポイントは消費者を囲い込むためのシステムであって、それに乗るということは選択の自由を放棄することを意味する。これからの人生、数パーセントの恩恵にあずかり続けるのか、それとも選択の自由を勝ち取るのか。何度かの脳内審議を経て、最終的にポイントを貯めない人生を歩むことに決めた。好きな時に好きな店で買い物ができるし、ポイントの有効期限を気にする必要もない。そう、僕はポイントカードを捨てることで、買い物の自由を獲得した。財布がはち切れそうになることもない。嗚呼、自由って素晴らしい。

しかし、昨年の秋に消費税が上がるタイミングで、ふとあることに気づいてしまった。たかだか数パーセントと思っていたが、その数パーセントが命取りになることがあるのではないか。ほんの数パーセントを粗末にしない人たちが、世界の大富豪になっているのではないか。100円の買い物に対しての1%は1円だから、まぁ、1円だったら要らないな、と僕の様な庶民は考えてしまう。でも、どうだろう。これが1万円だったら100円で、10万円だったら1000円で、100万円だったら1万円で…。分母が大きくなればなるほど、1%の額が上がっていく。当たり前過ぎてバカみたいなことを書いていると思われるだろう。自分でもそう思う。それでも、とにかく「数パーセントの大切さ」に気づいてしまったのだ。

欠陥住宅の傾きを例にして考えてみると分かりやすい。例えば、1度傾いた部屋があったとする。長辺が360センチの6畳間で両端の高低差がどれくらいになるのか、「360 × tan1°」という三角関数を使ってはじき出してみる。計算の結果は6.2838…、左右で約6センチの高低差が発生することになる。長辺が36メートルならその高低差は約60センチ、360メートルなら約6メートル。たった1度の開きが、360メートル離れると6メートルの差が生じるのだ。これは、ちょっと侮れない。きっとお金に関しても同じようなことが言えるはずだ。たかが1%、されど1%。長い人生のスパンで考えれば、1%の違いが最終的に大きな差となるに違いない。

そこで、自分に質問だ。なんで君はポイントを貯めることをやめてしまったのか?

一方で、ポイントを駆使して買い物をしている友人がいる。彼はネットショッピングの際、特定のECサイトでしか買わない。そこでは、5の付く日はポイントが4倍、提携クレジットカードでの決済でポイントが2倍、プレミアム会員だとさらに4倍など、色々なポイント付加サービスが展開されている。全ての条件が揃うと、合計16倍のポイントが付いたりする。tan16°の欠陥住宅があったとしたら、それはもう住宅ではなくてアトラクションである。ジェットコースターのような傾斜角度のポイントが付いた結果、59,800円のテレビを買う場合に9,568ポイントが加算され、実質価格は50,232円。1万円近く得なのだ。

ここでもう一度、自分に問う。お前は何故ポイントを貯めていないのか? 選択の自由も結構だが、ポイントを諦めた日々はもう帰ってこないのだ。前述のポイントの達人によれば、今は、ポイントカードもほとんどアプリ化されているから財布に携帯する必要もない。色々なポイントカードをある程度一括管理するようなアプリもあるという。ポイントを貯めない理由がどこにあるだろう。これからは、ノーポイント、ノーライフの精神で得を勝ち取っていきたいと考えている。


スミ マサノリ
作家・映像作家

法政大学文学部を卒業後、デジタル系制作プロモーション勤務、デジタル系デザイン事務所の株式会社デジタルビイム代表取締役、フリークリエイターを経て、作家・デザイナー・映像作家・パフォーマーとしてマルチに活動中。
執筆やデザインのほか、自作のショートコントを発表したり、“捨てられた椅子に座るシリーズ”と銘打ったTwitterでの画像投稿など、ユーモラスで独特な世界観にコアなファンを持つ。
2019年、俳優の西川瑞と表現ユニット「劇団SAIGEN」を結成。活動の場を広げている。



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