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新型コロナを受けて投資家が注目すべきポイント
森永 康平
2020/06/10

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概要

2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、株式市場が乱高下しています。2月、3月は歴史的な急落となりましたが、4月からはジワジワと株価を戻しています。しかし、3月以降に発表された経済指標や企業業績は軒並み悪い状態となっており、急落以降の株価の戻りの理由が分からないという投資家の声も多く耳にします。今回は投資家が着目すべきテーマについて説明します。



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新型コロナウイルスがもたらした影響は

2020年は新型コロナウイルス感染拡大が世界経済に大打撃を与えました。未だに有効なワクチンや特効薬もなく、一部の国・地域を除けば依然として日々新たな感染者と死亡者が報告されています。アジア開発銀行(ADB)の試算によれば、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う世界の経済損失は最大8兆8,000億ドル(約940兆円)に上る可能性があるとしています。金額が大きすぎていまいち実感がわかないかもしれませんが、世界のGDPの約10%が吹き飛んでしまうという規模です。

日本でも消費増税の影響で2019年10~12月期の実質GDPが前期比年率7.3%減となっていたところに、新型コロナウイルスの影響で2020年1~3月期の実質GDPが同3.4%減と2四半期連続のマイナス成長となってしまいました。GDP成長率が2四半期連続でマイナスとなったらリセッション(景気後退)であるとする考え方もあり、日本も世界各国同様、新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。

日本は新型コロナウイルスの感染者数や死亡者数が他の先進国に比べて少ないため、他国に比べるとダメージを受けていないと考えている人もいるかもしれませんが、少なくとも経済という観点からは十分大きなダメージを受けていると考えるべきでしょう。

 

金融緩和は有効なのか

それでは、経済がダメージを受けてしまった場合、各国政府と中央銀行はどのように対策を打つのでしょうか。一般的には金利を下げたり、資金を供給する「金融緩和」と、減税や公共事業を行う「財政出動」という手段があります。

まずは金融政策について見てみましょう。景気が悪くなると中央銀行は政策金利を引き下げます。金利が下がれば企業が借り入れを行い投資をし、個人もローンを組んで車や住宅を買いやすくなることなどが期待されます。

ここで現在の各国の金利水準を見てみましょう。政策金利ではなく先進国(日米独)の国債の利回りの推移をグラフ化したものが下図です。

※金:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成


ドイツは既にマイナス金利に突入し、日本も米国もほぼゼロ金利といえます。こうなると、これ以上の金利引き下げは難しく、金融緩和には限界があります。つまり、今回の新型コロナウイルスによって経済が受けたダメージを回復させるためには、金融緩和だけでは難しいと言えます。

ちなみに、これだけ金利が下がってしまうと、投資家の目線からすれば、債券へ投資をしても十分な金利収入が期待出来なくなってしまったとも言えます。

 

財政出動にも限界がきてる?

それでは、金融政策に限界があるということで、財政出動をメインに対策をたてていくのでしょうか。実際、先進各国は巨額の財政出動を決めています。日本における一般会計の当初予算は約102.6兆円でしたが、前回の第1次補正予算(約25.5兆円)と新たに決めた第2次補正予算(約31.9兆円)を合計すれば、歳出合計は約60兆円増の約160兆円に膨らんでいます。欧米もリーマンショックの時以上に莫大な財政出動を決めています

しかし、金融緩和として中央銀行が国債を大量に買い入れることで中央銀行のバランスシートが肥大化したり、国の債務残高が拡大することによって、デフォルト(債務不履行)は起こらないにしても、どこかのタイミングで金利が急騰(債券価格が急落)するのではないか、と考える投資家は一定数いるでしょう。

 

※金:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

世界中の投資家が考えること

このように債券からの安定的な金利収入が期待できない超低金利時代になり、一方で債券を保有し続けることにリスクも感じるとなってしまうと、これまでは伝統的とされていた株と債券を組み合わせる分散投資が機能しなくなる可能性が出てきます。

そこでいま世界中の投資家が注目しているのが、その他のリスク性資産です。たとえば、金(ゴールド)は実物資産なので金利は発生しませんが、取引価格は変動していますので、株と同様にリスク性資産と言えるでしょう。しかし、金自体には物質としての価値があるため、一気に価格がゼロになってしまうということは考えにくく、安全資産としての一面もあるとも考えられます。実際に、この数年は金価格が上昇しており投資対象としても見直されています。


※金:ロンドン・ゴールド・マーケット・フィキシングLtd-LBMA PMフィキシング価格/USD。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成


このように、新型コロナウイルス感染拡大によって変容した投資環境においては、従来の伝統的な投資手法ではなく、新たな考え方が必要になります。これまで債券に期待されてきた効用が薄まってしまったと考えると、金だけでなく、株の中でも配当利回りの高い株式や、公益セクターなどのディフェンシブ株と呼ばれる株をうまく組み合わせた投資手法が重要になるでしょう。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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