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第1回:はじめに
渡久地 海
2021/11/02

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概要

初めまして、ピクテ投信の渡久地(とぐち)と申します。今回から、主に投資初心者の方やこれから投資を始めようと考えている方に向けてコラムを始めようと思います。題名は、「金融業界15年目の僕が全力で教育資金を準備してみる」です。突飛に感じられる方もいらっしゃると思いますので、私の自己紹介と合わせて、このコラムを始めようと思ったきかっけについて簡単に説明したいと思います。


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自己紹介とコラムのきっかけ

私は沖縄出身の40歳手前の男性です。大学進学を機に上京し、卒業後証券会社に就職しました。2014年にピクテに入社し、今に至ります。最近、周りから子供の教育資金に関する相談が増え、また私自身も昨年子供が生まれたこともあり、各種制度や教育資金について色々と調べていました。調べていて感じたことは、子供の教育資金に関する情報は色々あるのですが、教育資金の準備の話となると、「いかに無駄な支出を抑えてお金を貯めるか」という内容がほとんどであったということです。

もちろん、これは重要なことなのですが、一方で「投資を活用しましょう」という話は非常に少ないように感じました。おそらくそれは、投資は元本が確保されておらず、確定的な支出を用意する手段として適切ではないということで、敬遠されているのだと思います。ただ個人的には、十分な投資期間を確保したうえで、時間分散などを活用すれば、子供の教育資金の準備のために投資を活用することができると考えています。

もちろん、私とライフステージや取り巻く環境が異なる方もいらっしゃると思います。そういった方々が読んでいただいても、参考になるような内容に仕立てています。なぜなら、投資は教育資金の準備だけでなく、自分自身の将来のために必要であり、そのような内容も多く盛り込んでいるからです。運用会社で働く私が、これまで相談を受けたことなどを整理して発信すれば、皆さんの参考になるのではないかと思ったことがきっかけの一つです。

リーマンショック

もう一つコラムを書こうと思ったきっかけがあります。それは、個人投資家がまず初めに理解してほしい基礎的な知識を提供している場が少ないということです。世の中に溢れている情報は短期的な視点で根拠に乏しく、長期的な投資を考える上でそれほど重要ではないものが多いように感じます。なぜ投資に関する基礎的な知識を身につけるべきなのか、私の経験も交えてお話ししたいと思います。私がそう思ったきっかけは、2008年9月のリーマンショックでした。

2006年4月に新入社員として証券会社に就職した私は、5月に個人向けの資産運用アドバイザーとして配属されました。入社当時のマーケットは好調で、購入いただいた投資信託(ファンド)も短期間の内にどんどんと値上がりしました。当時は新興国株式ファンドの人気が非常に高く、新規募集した中国株ファンドは販売初日の数時間で投資枠の上限に達したことを覚えています。お恥ずかしい話ですが、当時の私は、株価は上昇し続けるものだと思い込んでおり、「なぜ、みんな投資をしないのだろう?」と本気で思っていました。しかし、翌2007年から雲行きが怪しくなってきます。

2007年8月に、欧州の大手金融機関が、傘下のファンドの解約受付の停止を突然発表しました。これまで自由に売買できていたものが、突如として売買できなくなることほど、投資家が嫌がることはありません。マーケット全体に怪しい空気が立ち込め、これまで絶好調だった新興国株式のパフォーマンスも陰りがみえていました。そして2008年9月15日に、その時が訪れます。米大手証券会社の一つであったリーマン・ブラザーズ証券の破綻です。同年3月にベアー・スターンズ証券というリーマン・ブラザーズ証券よりも規模の小さい証券会社が救済(買収)されていたこともあり、さすがに破綻するとは思ってもいませんでした。また当初、この破綻が経済やマーケットに与える影響は限定的と見られており、日本への影響は小さいと言われていました。しかし実際には全くそんなことはなく、ショックは世界中に伝播し、株式をはじめとしたあらゆるリスク性資産の価格が大きく下落しました。

世界の株式マーケットは2007年の夏ごろをピークに穏やかな下落局面にありましたが、リーマンショックを機に下落が加速します。代表的な米株価指数であるS&P500は、2007年の高値から2009年2月の安値まで円換算で60%近く下落し、対岸の火事と言われていた日本株(日経平均株価)も同じぐらい下落しました。また新興国株式も円換算で70%近くも下落しています。ドル円の為替レートは2007年6月に1ドル123円でしたが、2009年11月には86円まで円高が進みました。

リーマンショックから学んだ事

リーマンショックは私が経験した最も大きなマーケットの下落であり苦い経験でしたが、一方で大きな学びも与えてくれました。それは、投資を考える上で、基礎的な知識がいかに重要であるかということです。当時の私は、投資に関する基礎的な知識が十分にあるとは言えませんでした。例えば「ここ最近、ずっと上昇しているから今後も上昇し続けるだろう」とか、「このチャートのパターンの後は上昇だ」、「今流行っているテーマだから大丈夫だろう」など、投資を考える上で根拠に乏しいものや全く重要ではない情報ばかり詰め込んでいました。「なぜリーマンショックが起こったのか?」、「その後マーケットが反発した理由は何だったのか?」、「なぜ新興国株は70%近くも下落してしまったのか?」ということを理解するためには基礎的な知識の習得が不可欠です。

また場当たり的ではなく、一貫した考え方を持って投資を行う必要があります。一貫した考え方を持たないと、一時的な情報に振り回されてしまい、無駄な売買を繰り返してしまうからです。実際に、そのような投資家を何人も見てきましたし、昔の私もその一人だったように思います。さらに、簡単に情報を入手できるようになった今、投資の基礎的な知識を習得することで、必要な情報を取捨選択できるようになると思います。

よくある質問とよくある間違い

最後に、ここ最近よくある質問やよくある間違いをいくつかあげたいと思います。それらに対する私自身の考えについて、今後のコラムの中で取り上げていきたいと思います。

(よくある質問)

・投資を始めるにはどうすれば良いですか?
・教育資金の準備には投資は不向きですよね?
・投資に関する制度にはどのようなものがありますか?
・株式や債券とは何ですか?また、どのような違いがありますか?

(よくある間違い)

・投資とギャンブルは同じである
・インデックス投資は最強である
・投資とは売買を繰り返すことで資金を増やすことである

このコラムは、「秒速で億り人(注)になる方法」のようなものではありません。投資の基礎的な知識を身につけて、教育資金の準備のため、また自分自身の将来のために投資を活用していただくことが目的となります。また、なるべく難しくなり過ぎず、勉強のように堅苦しくなり過ぎないように心がけていきたいと思います。もちろん、私がどのように全力で教育資金を準備しているかについても、できるだけ具体的にコラムの中でご紹介したいと考えています。このコラムを通じて皆さんが投資に関する基礎的な知識を身につけて、投資の力をうまく活用できるようになるお手伝いができればと思っています。

(注)億り人とは、投資で1円以上の資産を築いた人物のことを指します。

渡久地 海
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・コンサルタント

明治大学経営学部を卒業後、日系証券会社でリテール業務に従事し、外資系銀行を経て、2014年よりピクテへ入社。入社後はフィールド・マーケティング部にて勉強会やセミナーの講師を務め、2015年より資産運用推進室へ。2018年より投信営業第一部にて投信営業に従事し、2021年から資産運用推進部にて主に販売会社の営業員や一般投資家向けのコンテンツ作成を行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。



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