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利上げ?テーパリング?金融政策のキホン
森永 康平
2021/12/14

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概要

最近は新聞を開いたり、ニュースサイトを見ていると、「インフレ」という言葉をよく目にします。継続的に物価が上昇することをインフレーションといいますが、それを略した言葉がインフレです。この数か月、世界的に物価が上昇しています。また一方で、相場や市況に関する記事では「テーパリング」や「利上げ」という言葉を目にする機会が増えています。本稿ではこれらの言葉について学んでいきましょう。



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なぜ世界的にインフレになっているのか?

そもそも、なぜ世界的にインフレが問題となっているのでしょうか?複数の要因が考えられますが、間違いなく大きな影響を与えているのが世界的な新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナ禍では外出を伴う産業や工場で営業停止や休業が相次ぎ、その結果多くの人が職を失いました。その後、徐々に各国が経済活動を再開するにあたって、需要が一気に高まったのですが、人手・物資の不足や物流の混乱などの供給制約によって需給バランスが崩れ、値段が上昇しました。更にそこに原油価格の高騰が加わったことで、短期間で一気に物価が上昇し、世界的なインフレとなったのです。

米国における10月の消費者物価指数を見てみると、前年同月比+6.2%と高い伸びとなっていますが、6%台は約31年ぶりになります。物価上昇圧力がここまで高まったため、これまでこのインフレは「一過性のもの」であるという姿勢を一環として貫いていたパウエルFRB議長も、直近の議会証言では「一過性」という表現をやめるときがきたと発言したため、市場ではテーパリング(金融緩和の縮小)のスケジュールが前倒しになるのではないか、政策金利の引き上げが予想よりも早まるのではないかという観測が出ました。

 

金融政策ってなに?

このテーパリングや政策金利の引き上げというのは、いわゆる金融政策にあたるわけですが、そもそも金融政策とは何でしょうか?金融広報中央委員会では以下のような説明をしています。

 

インフレーション(物価がする現象)が発生すると、お金に対する信認が低下し、様々な弊害が起こる。このような場合、日本銀行では物価上昇を抑えるため、金融機関に国債等を売却する資金吸収オペレーションなどを通じて、市中の過剰な資金を吸収し、市場金利の上昇を促したりする(金融引き締め)。逆に、デフレーション(物価が下落する現象)が発生し、経済活動が停滞し企業や個人の収入を圧迫するような時には、日本銀行は経済活動を下支えするため金融機関から国債等を買い入れる資金供給オペレーションを通じて市中の資金量を増加させ、金利を引き下げるなどの政策をとる。

 

もう少しかみ砕いて説明してみます。たとえば、景気がよく、経済成長も順調だとしましょう。それ自体は良いことです。しかし、そのうち景気が過熱してしまうと何が起きるか。需要が高まり供給が追い付かなくなってしまい物価がどんどん高くなります。需要が超過している状態であれば、企業はどんどん銀行からお金を借り入れて次々に投資して対応しようとしますし、家計も経済成長に伴い所得も上昇していけば、更にローンを組んで住宅や自動車など高額なものを買うでしょう。そこで、金利を引き上げれば、借り入れる際のコストが高くなるわけですから、徐々に投資意欲も減退していき、そのうちに景気の過熱も冷めていくということです。とはいえ、実際にはそのようにうまくいかないという話もしたいのですが、紙幅の関係でそれは次回以降に説明します。

 

マーケットへの影響は?

それでは米国がテーパリングや政策金利の引き上げを実行するとマーケットにはどのような影響を与えるのでしょうか?マーケットは様々な要因で動きますから、金融政策の変更だけでどちらか一方にマーケットが動き続けるということはありませんが、たとえば、米国の金利が上がって、日米の金利差が開けばドルに対して円が安くなる要因になりますし、実際に円安になれば輸出産業にとっては追い風になるでしょう。米国の中央銀行にあたるFRBは「物価の安定」と「完全雇用」という2つの政策目標を掲げていますので、金融政策がどう変化していくかを先読みしたい場合は、消費者物価指数や失業率など、物価と労働市場に関連する経済指標の結果を確認するようにしましょう。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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