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一攫千金を狙うレバレッジ投資の罠
森永 康平
2022/02/09

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概要

投資を始めるとSNSやYouTubeなどで先輩個人投資家達が発信する投資情報を参考にするようになるかもしれません。証券会社や運用会社の情報よりも、個人投資家が発信する情報の方が信用できるという方もいるかもしれませんが、最近少し気になったのはレバレッジ投信を過度に勧めている情報が散見されたことです。今回はレバレッジ投信について一緒に考えていきましょう。



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レバレッジ投信って何?

そもそもレバレッジ投信とは何でしょうか。レバレッジというのは日本語でいう梃(てこ)のことです。「てこの原理」という言葉は聞いたことがあるでしょう。てこの原理を利用すれば小さい力で大きな岩を動かせるように、レバレッジ投信は少ない金額で大きなリターンが期待できる仕組みを持った投資信託を指します。当然、大きな損失が出る可能性がある仕組みであるという言い方もできます。

たしかに、あまり投資金額が大きくない個人投資家からすれば、レバレッジをかけて短期間で大儲けしたいという気持ちが生じるのは理解できます。そして、投資というのは自己責任の下で行うものですから、自分がレバレッジを活用したいと思うのであれば、それも良いかと思います。

しかし、筆者が気になったのは、大手ネット証券内におけるジュニアNISAでの買い付けランキングの上位にすらレバレッジ投信が顔を出していたことです。ジュニアNISAで買っているということは、中長期で投資するつもりなのだと思いますが、それはレバレッジ投信の仕組みを理解していない可能性があります。

 

レバレッジ投信の罠

レバレッジ投信にもいくつも種類がありますが、たとえば「ダブルブル」という言葉が名前についている場合、投資対象の株価指数が上昇するとその騰落率の2倍上昇するというものになります。つまり、日経平均が5%上昇すれば、当該投信の基準価額は2倍の10%上昇するという仕組みです。

ざっくりとこのような認識だけでいると、レバレッジ投信の罠に引っかかってしまう可能性があります。たとえば、レバレッジ投信を買った日から1か月後、日経平均が10%上昇していたとしましょう。そうすると、レバレッジ投信は20%上昇していると思うかもしれません。しかし、レバレッジ投信は日々の騰落率に対してそれぞれ2倍の動きをしていきますから、実際は20%も上昇していない場合や、ほとんど上昇していないといった場合もあるのです。

シンプルで具体的な例を見てみましょう。基準価額100の投資信託が翌日10%下がると基準価額は90になります。その翌日に10%上昇すると99となります。一方で、2倍のレバレッジ投信の場合、基準価額100のレバレッジ投信は翌日投資対象の株価指数が10%下がった場合、その倍の20%下がりますから、基準価額は80になります。同じくその翌日に株価指数が10%上昇すれば、レバレッジ投信は20%上昇するわけですから、基準価額は96となるわけです。

このように見てみると、株価指数が100→90→99と変化しているのに対して、レバレッジ投信の基準価額は100→80→96となっています。株価指数は最終的に1%の下落となっているのに、基準価額は4%の下落となり、2倍以上下がっていますね。株価というのは一方方向に動くことはなく、上下に波を打ちながら動いていますので、仕組みを理解するとレバレッジ投信が長期保有に向いていないと言われていることがわかると思います。

 

しっかりと情報を確認しよう

このような説明をすると、ネット上ではレバレッジ投信で資産が増えたという話ばかりで、こういう情報は知らなかったという方が多くいますが、レバレッジ投信を販売している証券会社や、そのレバレッジ投信を運用している運用会社のホームページにいけば、目論見書を確認することができます。証券会社や運用会社という金融機関は非常に厳しいルールの下で営業していますから、メリットばかりを説明することは禁じられており、同時にリスクも詳細に説明をしなければいけません。そのため、目論見書の中にはしっかりと前述のようなリスクについての説明も記載があります。

ホームページには目論見書以外にも、販売用資料や運用報告書などの資料もありますから、投資をする前にしっかりと情報を確認しましょう。ネット上の情報は玉石混交のため、なかには都合のいい話だけを取り上げているケースもありますが、そのリスクを抑える意味でも、金融機関の情報や届け出書類に最初に目を通すという方法も知っておいてください。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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