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下落相場ではつみたて投資をやめるべき?
森永 康平
2022/03/14

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概要

2022年は年明け早々、株式市場には強烈な逆風が吹きました。1月は日経平均が月間で約1,800円下落し、新興市場のマザーズの下落は更に厳しいものとなり、心が折れてしまった個人投資家も多いのではないでしょうか。筆者のところにも投資に嫌気がさしたという連絡がいくつか来ました。今回は下落相場で心がけるべきことを共有したいと思います。



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残念な投資家の行動

株価というものは常に波を打って動いています。特に日経平均やS&P500などの株価指数は、右肩上がりに上昇し続けることもありませんし、逆に下がり続けることもないのです。ぜひ、ネットで様々な株価指数の推移を20年、50年など長期で確認してみてください。

それにもかかわらず、投資家は株価指数が急落したり、数か月の下落局面に突入してしまうと、これから先もずっと下落し続けるという不安に襲われてしまいます。実際に身銭を投じていると、そのような心理状況に陥ってしまう気持ちはよく分かりますが、株価指数に限っていえば、いずれは反転し上昇していくものです。もちろん、粉飾決算や業績の悪化などによって上場廃止となる場合は、株価は下落し続けることはあるため、あえて株価指数に限って述べました。

このように、長期的に見ればいずれは反転すると分かっていても、多くの投資家が残念な行動をとりがちです。それは何か。つみたて投資をやめてしまうということです。この行動について公のデータはないのですが、証券会社や直販系の運用会社の方に聞くと、やはり相場が急落したり、数か月下落局面が続いてしまうと、つみたて投資をやめる個人投資家が相当数いるというのです。

 

なぜ株式市場は下落したのか?

相場が下落すると不安な気持ちになるのは分かりますが、なぜ下落しているのかを把握することで、その不安や恐怖心を和らげることは可能だと思います。なぜなら、人間は未知のものに対して必要以上に恐怖を感じるからです。お化けや幽霊が怖いというのと本質の部分は同じなのでしょう。

それでは2022年1月はなぜ株価が下落したのでしょうか。株価は非常に多くの要因によって変動しますから、これが原因であると1つに絞って挙げることはできないので、ここではいくつかの要因を紹介します。

1つ目は世界的なインフレを背景とした各国の金融政策の変更があると思います。これまではコロナ禍における経済対策の一環として巨額の財政出動や金融緩和を行ってきましたが、中央銀行が目標としていた物価水準を超えてきたため、多くの投資家が中央銀行が金融緩和を縮小し、更には政策金利を引き上げていくという段階に入っていくと認識しました。

2つ目はロシアとウクライナ、中国と台湾といった地政学リスクが高まったことでしょう。軍事衝突が起これば当該地域の経済は一時的に悪化しますし、ロシア有事では天然ガスやニッケルといったエネルギー、非鉄金属の供給が滞ることで価格が上昇し、台湾有事では半導体の生産・供給が遅れることで、多くの製造業が操業停止に追い込まれる可能性もあります。

3つ目はオミクロン株の感染拡大があります。デルタ株に比べて重篤化リスクが低いとはされているものの、陽性者数が急増することで日本でいえば緊急事態宣言が発出されたり、欧米各国でロックダウンが行われれば、経済は間違いなく失速します。

それ以外にも様々な要因がありますが、1月はとにかくネガティブに先行きを見通してしまうようなイベントが多かったのです。

 

改めて基本に立ち返る

1月の下落要因について、主なものを取り上げてみましたが、これは既に終わってしまった過去のことをまとめたにすぎません。将来のことについても、このように具体的に様々な要因を正確に予測することは不可能です。「こういう不安要素があるな」と予想することは可能ですが、それが必ず当たるとは言い切れません。

このように、将来起こることや株価の推移を正確に予測することはできないからこそ、なるべく相場環境を深く理解して何が起きても必要以上に不安や恐怖心を抱かなくてよいようにしつつ、感情と切り離して淡々と定期的に定額をつみたてていくことが重要なのです。

株価の急落や下落局面に直面すると不安になってしまうものですが、このような相場環境だからこそ、一度設定したつみたて投資を解約せずに長期的な視点で相場と向き合うという基本に立ち返ることが重要なのではないでしょうか。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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