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学費のために資産運用?
森永 康平
2022/03/07

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概要

明治時代から約140年間、日本での成年年齢は20歳と民法で定められてきましたが、民法改により今年の年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられます。18歳といえば、ストレートでいけば大学入学のタイミングです。本コラムのタイトルを見ると、子ども自身が資産運用で学費を稼ぐのか、と思われてしまうかもしれませんが、今回は親が学費をどのように準備するかという話をしたいと思います。



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親としては大学に行かせたい

文部科学省が発表した学校基本調査をみてみると、2020年度の大学進学率は確定値で54.4%に達しました。これは過去最高の数字です。大学に短期大学(本科)、専門学校、高等専門学校(4年在学生)を加えた高等教育進学率は83.5%となっており、こちらも過去最高となっています。

学歴が全てではないことは重々理解していますが、このようなデータを見てしまうと、子どもが中学校や高校を卒業してすぐに働きたいと強く主張しない限りは、親としては4年制の大学を中心として高等教育へ進学させたいと考えてしまうと思います。

たしかに、インターネットの発達によって、実力さえあれば個人で稼げてしまう時代ですし、従来の大企業に勤めて終身雇用してもらうという日本的な雇用形態も少しずつ変化はしていますが、それでも未だに「新卒」や「大卒」といったステータスは就職活動において非常に有利な条件となっています。

それでは、高等教育へ進学させる場合、どれほどのお金が必要なのでしょうか。進学先が国立なのか、私立なのかなど、進学先によって大きく費用は変わってくるのですが、文部科学省が発表している令和元年度の調査を基に計算してみると、国立大学なら250万円、私立大学なら450万円あればほとんどの金額は賄えるでしょう。

 

様々な選択肢を知るべき

それでは、どのように学費を準備すればいいでしょうか。最も安全なのが銀行預金だと思いますが、現在の超低金利では増やすという観点からは銀行預金は適切ではないでしょう。とはいえ、投資をするといっても大事なお金を減らすわけにはいきません。そこで登場するのが学資保険でしょう。株式投資に比べれば高いリターンは期待できませんが、毎月保険料として引き落とされるため、ついつい預金を取り崩して使ってしまうということも避けられますし、保険商品ですから親に万が一のことがあっても、子どもが満期で保険金を受け取ることが可能です。たとえば子どもが生まれたタイミングで毎月1万円を払い込み始めれば、子どもが大学入学する際には400万円ほどは期待できるでしょう。

しかし、お財布事情は各家庭でそれぞれです。もう少し毎月の拠出金額を増やせる、またはもう少し高いリターンを求めたい。そのような方には「つみたてNISA」という非課税制度を活用して、毎月3万円ほどつみたて投資するのがいいでしょう。

あくまでシミュレーションにすぎませんが、仮に毎月3万円のつみたて投資を年率3%で続けられれば、18年後には積立金自体が648万円、運用収益が210万円ということで、合計すると850万円ほどになります。

何度もいいますが、家庭ごとに事情は異なるため、どれが正解ということはありませんが、銀行預金、学資保険、投資信託など、様々な選択肢があるということは知ったうえで、ご自分の家庭状況に適したものを選ぶようにしましょう。

 

大事な資産を運用する方法

この数年でつみたて投資をする個人投資家の数も増え、一昔前に比べれば投資や資産運用も少しは市民権を得た印象を受けます。既に投資を始めていた個人投資家がSNSやYouTubeなどで情報を発信しているため、金融機関やFPというプロ以外の話も聞くことができるようになり、投資の敷居が下がったのかもしれません。

しかし、負の一面も見えるようになってきました。ある証券会社におけるジュニアNISAの買い付けランキング上位にレバレッジ型の投資信託が入っていたのです。特にSNS上では都合のいいデータやグラフを用いてレバレッジ型の投資信託を勧める人を見かけますが、商品の仕組み上、明らかに長期投資には向いていません。

趣味の一環として投資をしているのなら何も言いませんが、学費など将来のためのお金で投資をしているのであれば、しっかりと投資対象の商品の仕組みなどは自分で調べるようにしましょう。大事な資産を運用するのですから、長期・つみたて・分散という基本に照らし合わせながら、無理のない金額を投資に回していくべきなのです。

森永 康平
株式会社マネネCEO
経済アナリスト

証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
​著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。


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