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外資系金融機関で働く私たちの資産運用のリアル 第7回:2022年の振り返り
渡久地 海
2022/12/30

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概要

ピクテ社員の具体的な資産運用例を可能な限り公開し、どのような考え・目的で運用を行っているか実際に示し、皆様の資産運用のご参考にして頂きたいと思います。また、このコラムでご紹介する資産運用例は、あくまでも個人の意見であり、当社の見解を代表するものではありません。

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未曾有の投資環境


2022年も残すところわずかとなりましたが、今年は未曾有の投資環境となりました。近年、個人投資家の人気が高かった米国株式のリターンを為替の影響を取り除いた現地通貨(ドルベース)で見てみると、S&P500種株価指数は-19%(ドルベース)、ナスダック総合指数は-34%(ドルベース)と大きく下落しています(2022年12月29日)。個別株で見た場合、更に大きく下落している銘柄も存在し、本コラムでご紹介した私の保有している米国株式は年初来で60%以上下落しています。覚悟していたこととは言え、かなり厳しい1年となってしまいました。

では株式だけでなく国債などの債券に分散投資を行った場合、今回の下落をうまく切り抜けることができたのでしょうか。実は、今年は債券に投資を行っていても厳しいパフォーマンスだったのです。例えば、米国国債の年初来のリターンも-12%(ドルベース)となっています。米国株式を20%、米国国債を80%組み入れた低リスク型ポートフォリオに投資していたとしても、ドルベースで-14%以上の下落となってしまいました(図表1)。これは2008年のリーマンショックを超える下落率であり、分散効果の効かない、正に未曾有の投資環境となってしまったのです。
 

図表1:低リスク型ポートフォリオの各年のリターン

日次、期間:2007年12月31日~2022年12月28日、ドル、2022年は12月28日までのリターン ※低リスク型ポートフォリオのリターンは、Bloomberg US EQ:FI 20:80 Indexを用いて算出
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

2023年もインフレ率は高止まり?


では、このような投資環境になってしまった理由は何なのでしょうか。それは、世界的なインフレの高進に対応するため、米国をはじめとした主要国・地域の中央銀行が急激に金融引き締めを行ったからです。一般的に、金融緩和は株式をはじめとしたリスク資産にとってプラスに働きますが、金融引締めはリスク資産に対してマイナスに働きます。今回の金融引締めは過去に例を見ないほど急速に行われ、その結果、株式のみならず債券も大きく下落してしまったのです。

一方で、引締めの効果もあり、足元のインフレ率は徐々に低下の兆しが見えてきました。インフレ率のピークは過ぎ去ったとの見方が大勢的であり、2023年の年央にも、主要国・地域の中央銀行のスタンスも金融緩和的になると期待されています。しかしピクテでは、来年のインフレ率は主要国・地域の中央銀行がターゲットとする数値よりも高めに推移すると見ており、中央銀行が金融緩和的なスタンスへ変更するのは、市場が予想しているよりも後ずれすると考えています。

「時間」は個人投資家にとって最大の武器


皆様の中にも、私と同様に、投資資産価格が大きく下落してしまった方がいらっしゃるかもしれません。ここ数年好調だった米国成長株を保有している方は、特に厳しい状況が続いていると思います。いつ市場が底打ちするのか気をもんでる方もいらっしゃるでしょう。しかし残念なことに、市場の底打ちを予想するのはプロであってもかなり難しいことです。

しかし一方で、市場は永遠に下がり続けるわけではありません。少々乱暴な言い方ですが、市場はいつか下げ止まります。また、あらゆる資産がここまで下落する局面は非常に珍しく、魅力的な水準まで下がっている資産も多くあると個人的には考えています。個人投資家の最大の武器の一つは「時間(=投資期間)」であり、長期投資家の視点に立てば、今回の下落は優良な資産を安く購入できるチャンスとも言えます。来年も厳しい市場環境が続く可能性がありますが、時間分散を使いながら、優良な資産を拾っていきたいと考えています。

ベース通貨によって異なるパフォーマンス


今回のコラムにおいて、外貨建て資産のリターンを現地通貨ベースで示しました。なぜそのようにしているかというと、外貨建て資産に投資した場合、現地通貨ベースと自国通貨ベースではリターンが異なるためです。例えば、世界株式の年初来のリターンは、現地通貨ベース(ドルベース)で-19%に対し、円換算(自国通貨ベース)では-6%と大きく異なります。このようにパフォーマンスに差が出るのは、為替レートが影響しているためです。図表2の式が示している通り、外貨建て資産を自国通貨ベース(円換算)にする場合、現地通貨の価格に為替レートをかけて算出します。通常、私たちは円換算で投資先のパフォーマンスを把握してしまいますが、外貨建て資産に投資を行っている場合は、まず現地通貨ベースのパフォーマンスを確認する必要があると思います。図表2に、今年の主要資産のパフォーマンスを現地通貨建てと円換算で示していますのでご参考ください。また、投資信託で外貨建て資産に投資を行っている場合、通常、基準価額は円換算で表示されますので、定期的に月報などを確認することをお勧めします。

図表2:主要資産の年初来パフォーマンス

日次、期間:2021年12月30日~2022年12月28日



出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

 


渡久地 海
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・コンサルタント

明治大学経営学部を卒業後、日系証券会社でリテール業務に従事し、外資系銀行を経て、2014年よりピクテへ入社。入社後はフィールド・マーケティング部にて勉強会やセミナーの講師を務め、2015年より資産運用推進室へ。2018年より投信営業第一部にて投信営業に従事し、2021年から資産運用推進部にて主に販売会社の営業員や一般投資家向けのコンテンツ作成を行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。



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