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経済学のキホン⑦ ~経済思想史④~
2024/04/04

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概要



世界恐慌により資本主義の欠点が浮き彫りになる中、ケインズは経済の自律性に委ねるのではなく、必要に応じて政府が積極的に経済に介入すべきとの考えを示しました。



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■ 帝国主義の広がりと社会主義国家の誕生

今回はイギリスの経済学者ケインズについてご説明いたします。まず、19世紀後半から20世紀前半までの世界の動きを簡単に確認しましょう。これまでご説明してきた商業革命後の世界において、資本主義経済の成熟には植民地の獲得、拡大が伴いました。植民地で得た安価な労働力と資源を活用し、生産力を強化し、貿易を拡大することで経済力や軍事力を高めようとしたためです。特に産業革命によって資本力を高めた欧州の国々を中心に、アフリカやアジアへの植民地拡大を競い合っていました。こうした動きを「帝国主義」と批判する声もある中、世界はこの帝国主義への傾倒を止められず、ついには第一次世界大戦に発展していくことになります。一方、前回ご説明したマルクスによる社会主義に大きな影響を受けて、労働組合運動や社会主義国家を目指す運動が活発化しました。1917年に起きた第2次ロシア革命によるレーニンによる社会主義政権の樹立は社会主義運動の代表的な例だといえます。レーニンはその後、1918年に史上初の社会主義国家である「ロシア=ソヴィエト社会主義連邦共和国」を成立させ、さらに1922年には同共和国を中核に据える「ソヴィエト社会主義共和国連邦」を成立させました。


■ 世界恐慌と修正を迫られた資本主義

このように資本主義の問題が顕在化し、社会主義運動が活発化する中、資本主義国家の中心的思想でもあった自由放任主義の見直しを迫られる出来事が起きました。1929年の世界恐慌です。ニューヨーク証券取引所において株価が大暴落したことをきっかけに、失業者数がピークを迎えた1933年まで米国を不況が襲いました。また、米国のみならず、恐慌の影響は世界全体に広がりました。恐慌が起きた原因の1つとして考えられているのが生産過剰です。1920年代、アメリカは共和党政権の下、大量生産・大量消費の社会を実現し、世界第1位の経済大国になりました。また、第一次世界大戦を契機として、世界最大の債権国となったことから、世界経済におけるアメリカの影響力は高まっていました。しかしながら、いきすぎた設備投資等から生産過剰に陥り、需給バランスが大きく崩れたことよる企業業績への悪化懸念等が投資家の不安を増大させました。当時は投機的な株式取引も盛んに行われていたため、株価がバブルの様相を呈していたことも大暴落を生んだ要因となりました。資本主義国家が国際分業を推し進め、貿易による経済のつながりを拡大させた結果、アメリカで起きたこの恐慌が世界全体に広がることとなり、さらに経済立て直しのため国家の積極的な介入が必要になったことから自由放任主義や資本主義の在り方を見直さざるを得ない状況になったといえます。


■ ケインズと修正資本主義

前述の世界恐慌をうけ、従来の資本主義の欠点を洗い出し、それらを克服するための修正資本主義を説いたのがケインズです。ケインズが著書「雇用、利子および貨幣の一般理論(1936年)」で唱えた経済思想の大きな柱となるのは、政府による積極的な経済への介入です。これまで資本主義の主流であった自由放任主義を批判し、資本主義の修正を図ろうとしました。政府による介入を提言した理由は大きく2点です。1つは「有効需要の創出」、もう1つは「完全雇用注1の実現」です。それまで、不景気は一時的な出来事に過ぎず、経済の自律性に委ねておけば、景気は元に戻り、雇用も回復すると考えられていました。また需要は供給によってコントロールされ、供給そのものが需要を生むという考え方が一般的でした。よって、不景気は需要不足が原因で起きるものではなく、供給を強化すれば自然と需要が形成され不景気を克服できるとも考えられていました(セイの法則)。ケインズはこの考え方を批判し、有効需要(金銭を伴う支出)の創出こそが重要だと説きました。有効需要が増大することで供給も同様に増え、それがひいては所得の増大や雇用創出につながり、国全体が生み出す付加価値を大きくするというものです。そして有効需要が不足するからこそ、完全雇用が実現できず、失業者が生まれ、適切に富や所得が再配分されないとケインズは指摘しました。よって、この欠点を克服するために、時に政府は積極的に市場へ介入して有効需要を創出するなど、経済をコントロールする重要性を説いたのです。政府による介入を端的に説明すると、「政府が借金をし、公共事業や社会福祉にそのお金を投じることで景気浮揚を図る」ということになります。政府による借金は国の財政を逼迫させ、信用悪化などにつながるリスクがありますが、景気が良くなることで完全雇用が実現し、所得が増えれば、その分税収も増えて借金は問題なく返済されるため、政府の介入は有効であるとの見方を示しました。


 

注1 :ここでは非自発的失業者がいないことを指します 。

図表1:資本主義、修正資本主義


 



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