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東京オリンピックの行方
市川 眞一
2020/03/24

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概要

新型コロナウイルスの世界的な拡散により、7月24日に開会予定の東京オリンピックについて、中止、延期論が台頭している。3月17日に行われたIOCの電話理事会では、予定通り開催の方針が確認された。しかし、当初は危ぶまれた日本国内における新型ウイルスへの感染以上に、米欧の多くの国が厳しい状況に追い込まれつつあり、五輪開催を見直す機運は高まりつつあると言えるだろう。五輪を中止する権限は、開催都市契約によって専らIOCにある。ただし、中止となればIOCは巨額の放映権料を失う上、今後、コスト負担の重い開催都市への立候補がさらに減りかねない。従って、IOCと東京都、日本政府、JOCなど当事者間で折り合いがつくとすれば、1年、もしくは2年の延期案なのではないか。ただ、その場合、開催都市契約の再締結となる上、選手の選考やスポンサー契約など、越えるべきハードルは少なくないだろう。また、2020年の日本経済にとっては、新型コロナウイルスによる景気下押し圧力と重なり、大きな重荷となる可能性が強い。いずれにしても、決定の時期は4月中となる見込みだ。



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新型ウイルスにより予定通りの五輪の開催が難しい場合、考え得る選択肢は3つある。1つ目は無観客として予定通り開催だが、これは盛り上がりに欠ける上、入場料収入が入らなくなる。2つ目は完全に中止だ。これを選択した場合、IOCも日本側も莫大な損失を負うだろう。3つ目の延期は、日本のコスト負担が重く、且つ選手の選出方法など多くの課題を伴う。

中止論に注目が集ったのは、2月25日、IOCのバウンド理事がAP通信のインタビューで可能性を語ったことが契機となった。当初、日本側が極めて否定的だったのは、新型ウイルスの抑制に失敗した日本の事情が中止論の背景だったからだ。しかし、むしろ米欧での感染拡大が深刻化するなか、日本政府内においても、様々なシナリオが検討されていると見られる。

IOCと東京都などが締結した『開催都市契約』によれば、IOCは合理的理由があれば一方的に契約解除、即ち五輪の中止を決定でき、日本側に賠償請求権はない。ただし、IOCの被る損失も大きいため、中止の可能性は低いだろう。予定通りの開催が困難な場合、開催都市契約を再締結し、延期することが最もあり得るシナリオではないか。

開催都市契約には、「延期」の場合の規定はない。中止の場合、開会日の120日前までならIOCが是正勧告を行い、60日以内に改善・是正されなければ契約解除となる。120日を切っている場合、開催日まで残された日数の半分が改善・是正期間だ。延期の場合、大会への最終準備のタイミングを考慮すれば、5月末が決断の最終期限と見られる。

仮に五輪が延期になった場合、2020年に関しては、新型コロナウイルスとマイナスの相乗効果でインバウンド消費に影響を与えるだろう。加えて、五輪に向け設備投資など準備を進めてきたホテル、航空、4K/8Kテレビ、メディアなど、多方面への影響が懸念される。新型コロナウイルス問題を合わせれば、リーマンショック以上の落ち込みになる可能性は否定できない。

IOC並びに東京都、日本政府など当事者は、五輪延期の場合、遅くとも5月下旬には判断しなければならないだろう。開催都市契約が再締結され、スポンサー契約や選手の選考などに関し見直しをしなければならない。2020年に関しては日本経済へのダメージは避けられず、新型コロナウイルスによる直接的な影響と合わせてリーマンショック以上の衝撃と言えそうだ。


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。


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