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米国大統領選挙の最終確認事項
市川 眞一
2020/10/27

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概要

米国大統領選挙、連邦上・下院議員選挙まであと1週間になった。各種世論調査では、ジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしている。今週の『ブースト・アップ』は、今回の米国総選挙の概要、今後の日程、選挙結果による米国の政治の安定度などに焦点を当てた。郵便投票などを巡り大統領選挙が開票後も結果を確定できない場合、節目となるのは12月14日の選挙人による投票、年明け1月6日の連邦議会における選挙人投票の開票、そして大統領が正式に就任する1月20日だろう。いずれの候補も選挙人の過半数である270人を獲得できない場合、アメリカ合衆国憲法修正第12条により、下院が大統領を、上院が副大統領を選出することになる。この点も含めて、定数100議席のうち35議席が改選となる上院議員、そして全435議席が改選となる下院議員の選挙をも極めて重要だ。米国においては、予算も一般法案であるため、連邦議会議員のみ提案権が与えられている。また、バイデン氏が勝利して大統領に就任する場合、政府高官の政治任用には上院の承認が必要であり、共和党が過半数維持なら政権運営は当初より難しいものとなりそうだ。



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米国は4年に1度の総選挙へ1週間と迫った。この選挙の方式は、議院内閣制の日本とは大きく異なる。そこで、今回の『ブースト・アップ』は、選挙の方法、当選者の決め方、また大統領選挙の結果を巡り激しい対立が起こった場合、どのように決着させるのかなどに焦点を当てた。さらに、主要な政策である経済・財政、対中外交、そして環境・気候変動などに関して、トランプ大統領、バイデン前副大統領の政策を整理し、選挙結果による政治の安定度を推測する。

4年に1度の総選挙では、大統領のほか、定数100議席の上院の3分の1(今回は通常の33人+前任者の退任で知事に指名された2名の計35名)に、下院の435議席の全てが選出される。もちろん、大統領は極めて重要だが、3権分立を重視する米国では、予算や政府高官の政治任用承認など議会の権限も強い。従って、連邦議会の行方も注目すべきだろう。

大統領選挙では、各州に割り当てられた538名の選挙人を選出する。州毎の選挙人数は、上院議員2名と人口比例で決まる下院議員数を合計したものだ。これにワシントンDCが3名の選挙人を選出、合計538人となる。当選には270人の選挙人獲得が必要とされるが、選挙結果を大きく左右するのは、「スウィングステート」の6州と言われている。

今回の選挙は郵便投票が多く、集計には従来より時間を要するだろう。仮に激戦州が僅差で両陣営が訴訟合戦となった場合、節目は12月14日の選挙人投票ではないか。フロリダの開票でもめた2000年は、この日を目処に連邦最高裁が再集計禁止を命じ、アルバート・ゴア氏が渋々ながら敗北を認めた。そこで決まらなければ、1月6日の選挙人投票開票日が重要だ。

9月29日の第1回、10月22日の第2回の候補者討論を経て、世論調査の結果ではバイデン氏がリードを維持している。また、英国のブックメーカーのオッズを見ると、世界のギャンブラーはやはりバイデン氏優位と見ているようだ。ただ、全米を1選挙区とする単純多数票ではなく、州毎に選挙人を奪い合うため、各州の勝敗が極めて重要であることは言うまでもない。

両候補の政策の際立つ違いは、トランプ大統領の経済政策は減税を中心としており、市場活性化による景気の押し上げを図るのに対し、バイデン氏は「大きな政府」により所得の再分配を目指す点だろう。従って、バイデン氏は高額所得者、企業などへの増税を主張している。また、バイデン氏は、対中制裁関税を批判、環境政策では大胆な温暖化抑止策を示した。

連邦議会選挙では、下院は民主党が過半数を維持すると見られている。一方、上院の改選は、共和党が現有53議席のうち23議席、民主党は実質47議席のうち12議席で、世論調査の結果により、こちらも民主党が過半数奪還を奪還する可能性が指摘されてきた。ただ、リアル・クリア・ポリティクスの集計では、8議席が激戦となっており、現段階では予断を許さない。

合衆国憲法では、連邦議会上院、下院は原則として責任に違いはない。ただし、いくつか役割分担があり、例えば上院には大統領が指名した政治任用の政府高官などを承認する権限が与えられた。一方、下院は予算案についての先議権を有している。また、大統領選挙で270人の選挙人を得た候補がいない場合、下院は大統領、上院は副大統領を選出する決まりだ。

大統領与党が両院の多数を握れば、当然、政治は安定する。一方、バイデン氏が当選した場合、政府高官の承認権を持つ上院の多数確保は極めて重要だろう。米国では、党派の違いが絶対反対を意味するわけではないが、就任当初から議会との難しい調整が必要になることは間違いない。トランプ大統領続投でも、両院が民主党に握られれば政策運営は滞るはずだ。

今回の総選挙の最大の課題は、すんなり勝者が決まるか否かである。決まらない場合、一時的に大きな混乱が予想される。ただし、共和、民主両党とも議会幹部は自らの責任を弁えており、年明け1月6日の選挙人投票開票日には遅くとも結果が出るのではないか。また、大統領選挙だけでなく、上・下院議員選挙は極めて重要だ。大統領と両院、そして上院と下院が一致するのか、ねじれるのか、大統領がどちらの候補の場合でも、就任後はそれにより政策遂行のペースが大きく変わってくるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。2011年6月よりテレビ東京『ワールドビジネスサテライト(WBS)』レギュラー・コメンテーター。


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