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総選挙のタイミングを探る
市川 眞一
2021/04/20

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概要

衆議院任期満了を6ヶ月後に控え、解散・総選挙の時期はまだ固まっていない模様だ。ただし、東京都議会議員選挙、オリンピック・パラリンピックの日程を考えると、総選挙が可能なタイミングは5月下旬、都議選との同日選、10月上旬の3つに限られるだろう。最近の世論調査で菅内閣の支持率はやや回復しており、政権内には早期解散を求める声もあるようだ。他方、新型コロナの感染は第4波の兆候を示しており、5、6月にピークを迎えるとの見方が多い。野党が内閣不信任案を提出したとしても、厳しい感染状況の下での総選挙は与党にとってリスクが高いだろう。また、東京都を重視する公明党は、同日選も含めて7月4日の都議選に近い時期における総選挙に難色を示している模様だ。従って、今のところ総選挙の時期は秋の確率が70%程度と想定され、その後に自民党総裁選挙が行われる可能性が強い。この順番とすれば、総選挙の結果が菅義偉首相の再選を左右することになる。自民党が大きく議席を減らした場合、総裁(首相)の交代論が台頭するだろう。いずれにせよ、次期総裁選びに関し、自民党最大派閥の会長就任が確実視される安倍晋三前首相の存在感が強まりそうだ。



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菅首相の自民党総裁としての任期は9月末まで、衆議院議員の任期は10月21日までだ。つまり、半年以内に総選挙が行われなければならない。そのタイミングを菅首相が判断する上で重要なのは、7月4日の都議選、8~9月の東京オリンピック・パラリンピックである。総選挙の後に自民党総裁選となる可能性が強く、菅総裁の再任には総選挙での勝利が必須だ。

 

総選挙のタイミングは、5月下旬、7月4日、10月上旬の3ヶ所に絞られるだろう。自民党内にはオリンピックとパラリンピックの合間の8月22日を主張する声もある。しかし、この日程だとお盆(8月13~15日)、終戦記念日(8月15日)が選挙期間となるため、現実には難しいのではないか。確率はゼロではないものの、菅首相にとってハードルの高い選択肢と言えそうだ。

 

NHKの4月の世論調査によれば、菅内閣の支持率は44%で、3月の38%から6ポイント改善した。内閣支持率から与党第1党の支持率を引いた首相プレミアムは6.6%になり、前月に比べ4.4ポイント上昇している。菅首相は取り敢えず当面の最悪期を脱したと言えるかもしれない。ただし、新型コロナの感染とワクチン接種の状況が、政権の安定度を大きく左右するだろう。

 

NHKによる4月の世論調査で政党別の支持率を見ると、自民党は野党を大きく引き離してリードしている。半年以内に解散の決断を迫られている菅首相周辺では、野党への有権者の期待が高まっていないと見られることから、早期解散論も台頭している模様だ。その場合、「4月下旬解散・5月下旬総選挙」、「6月上旬解散・7月4日都議選との同日選」の日程が想定される。

 

菅首相が早期解散を目指す場合、最大の壁は新型コロナの感染拡大である。既に第4波に入ったとの見方が有力で、5、6月中にピークが来る可能性は否定できない。仮に野党が内閣不信任案を提出、受けて立つ形で菅首相が解散するとしても、新型コロナ対策を置き去りにして総選挙を実施することに対し、国民の風当たりを強く受けるのは野党よりも与党だろう。

 

総選挙のタイミングは秋の確率が70%程度であり、選挙直後に自民党総裁選が行われ得る可能性が強い。総選挙での自民党の獲得議席が減少すれば、菅首相の責任問題に直結するだろう。そのケースにおいて、総裁選立候補が見込まれるのは、菅首相の他、岸田前自民党政調会長、茂木外相だ。菅首相が不出馬なら、河野特命担当大臣が立つ可能性もある。

 

自民党総裁選では、党所属の国会議員1人に1票、党員には国会議員数と同数の票が付与される。1回目の投票で過半数を獲る候補者がいない場合、上位2人による決選投票で決着させる仕組みだ。決選投票では、国会議員が1人1票、47都道府県連は各1票を投じる。国会議員票のウェートが大きく、大派閥の後押しを受けた候補者が有利だろう。

 

安倍前首相は、近く出身派閥の清和会(現細田派)に復帰、会長となる見込みだ。同派は自民党所属389人の国会議員のうち、97名が所属する最大派閥に他ならない。安倍前首相は第2派閥を率いる麻生太郎副総理との関係も良好で、総裁選では両派が連携する可能性もある。従って、次期自民党総裁へ向け、党内における安倍前首相の影響力が強まりそうだ。

 

当面の政治日程、新型コロナの感染状況とワクチン接種のペースを考えると、総選挙の時期は秋になるのではないか。つまり、実質上の任期満了選挙だ。その結果は、直後に行われる自民党総裁選に強く影響するだろう。自民党が総選挙で議席を減らした場合、新たな総裁が選出されることも考え得る。菅首相は、そうした状況に陥らないため、解散前に2021年度補正予算の編成を検討し、景気の底上げを図る見込みだ。一方、自民党総裁選へ向け、安倍前首相の自民党内での影響力が強まるだろう。5月中にも出身派閥である清和会へ復帰し、自民党所属国会議員の4分の1が属する同派の会長に就任すると見られるからである。

 

 


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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