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コロナ後へのイメージを膨らませる
市川 眞一
2021/10/12

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概要

世界的なワクチン接種の進捗により、主要国では新型コロナが収束に向かいつつある。”Zero Corona”は困難としても、”with Corona”を前提とすれば、重症化率の抑制が統計的に確認できるようになった。特に日本の場合、ワクチン接種は出足において遅れたものの、7月以降は急速に接種率が上昇しており、2021年末には主要先進国で最も高い水準に達する可能性がある。さらに、軽症者・中等症者向け経口治療薬の有効性が確認できれば、在宅での治療に道が拓け、医療現場の負担を大きく軽減できるだろう。それは、医療供給体制の維持に資すると共に、経済活動を正常化させる重要な要素だ。2022年に関しては、新型コロナ後の「ニューノーマル」を探る年になるのではないか。注目されるのは、国際的な人的交流の復活だ。入国後の待期期間が大幅に短縮された場合、インバウンドの消費が復活すると見られる。一方、新型コロナ禍は社会・経済の構造を変化させつつある可能性が強い。例えばリモート化による働き方の大きな変化だ。また、急速な需要の回復が世界的な政治的分断と重なった結果、資源供給のボトルネックが起こっている。これは、インフレ圧力を強める要因となろう。



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新型コロナに関して、米国50州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)におけるワクチン接種率と直近の死者数の間には逆相関が認められる。東北部のマサチューセッツ、コネチカット、ニューヨークなどでは、ワクチン接種の進捗により重症化の抑止が確認できる状況になった。ジョー・バイデン政権の課題は、ワクチンに関する地域間のギャップを如何に縮めるかだろう。

 

今夏、欧州主要国はデルタ型による感染第3波に見舞われたものの、死者数は軒並み低い水準に抑制できている。背景は、医療供給体制の整備に加え、米国同様、ワクチン接種だろう。ワクチン接種者も感染の可能性をゼロにすることはできない。ただし、非接種者と比べて感染の確率が低下する上、重症化が大きく抑制されることが経済活動の正常化へ向け重要だ。

 

オックスフォード大学の集計によれば、G7における15歳以上のワクチン2回接種率は米国を除いて70%を超えた。先行した米国は共和党支持層の多いレッドステートで接種が伸び悩んでいる。一方、出遅れた日本においては、7月以降、接種が着実に進み始めた。横並び意識が強いだけに、2021年末には接種率がG7で最も高い水準に達している可能性もありそうだ。

 

英国においては、今年4~7月、参加者のワクチン2回接種などを条件として、大規模イベントを実施する社会実験が行われた。サッカー欧州選手権決勝で規定が守られず感染が広がったものの、それ以外は感染の抑え込みに成功したと言える。英国政府はこの結果を受け、一定の条件下であれば、大規模イベントは開催可能と結論付けた。経済活動も同様だろう。

 

感染第5波がピークアウト、新規感染者数が全国的に減少したことでやや薄れた感はあるが、日本でも47都道府県別に見たワクチン接種率と新規感染者数には逆相関が認められる。これは、若年層を中心にワクチン接種が一段と進めば、感染者数をさらに抑制できる可能性を示唆するものだ。新型コロナ収束の切り札の1つは、明らかにワクチンの接種であると言える。

 

新型コロナ収束へワクチンと両輪を為すのが治療薬だ。これまで、新型コロナについては主に重症者向け点滴薬が承認されてきたが、足下、軽症者、中等症者向けの経口治療薬の開発が内外で進み、今年末にも承認される可能性が高まっている。その有効性が確認できれば、在宅治療に威力を発揮、重症化の抑止によって医療供給体制の維持に大きく貢献しよう。

 

日本では、感染症法による7分類において、新型コロナは厳しい規制・措置を要する「指定感染症」に分類されてきた。しかし、ワクチン接種の進捗に加え、軽症・中等症向け経口治療薬に目途が立てば、新型コロナは季節性インフルエンザに限りなく近づく。その場合、政府は第5類への移行を検討するだろう。”with Corona”において、社会・経済の正常化が見えるわけだ。

 

対新型コロナワクチンと治療薬により、2022年の世界及び日本経済は正常化へ向かう可能性が強い。もっとも、それは以前の状況に戻るのではなく、「ニューノーマル」と考えるべきだろう。国際的人的交流の回復により、日本ではインバウンドの活性化が期待される。その一方で、オフィス需要の減少や供給のボトルネックによる国際商品市況の上昇へ備えなければならない。

 

2020年春に世界で深刻化した新型コロナ禍は、ワクチンと治療薬により収束へ向かおうとしている。2022年については、”with Corona”におけるニューノーマルへ向け、社会・経済の正常化が期待できるだろう。経済活動の本格的再開は朗報ではあるが、留意すべき点も少なくない。なかでも重要なのは、インフレ圧力が強まる可能性だ。急速な需要の回復は、供給力に限界のある資源・半導体などの価格を押し上げた。加えて、米国主導のグローバリゼーションが終わり、世界的に対立・分断の時代に入りつつあることも背景だろう。国際的なサプライチェーンが寸断される上、資源の争奪戦が激化する可能性があるからだ。

 


市川 眞一
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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