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収束期を迎えた新型コロナ
市川 眞一
2022/03/22

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概要

国際社会、そして市場の注目はウクライナ危機の衝撃に注がれているが、2020年の年初から2年以上に亘り世界を苦しめてきた新型コロナ禍への主要国の政策対応に明らかな変化が見られるようになった。各国政府は、社会・経済の正常化へ向け舵を切りつつある。日本においても、18都道府県に発令されていた蔓延防止等重点措置が、3月21日をもって全面的に解除された。昨年末から今年に入っての世界的な感染拡大期の特徴は、感染の過半を占めるオミクロン型の強い感染力、そして病原性(≒毒性)の弱化によるものだろう。重症化率、致死率は明らかに低下、医療供給体制が維持されたことで、重篤な感染者への適切な医療の提供が可能になりつつある。また、主要国においてワクチン接種が進んだことも、重症化の抑制に大きく貢献しているのではないか。さらに、処方が開始された軽症者向けの経口治療薬が普及すれば、”zero Corona”は不可能としても、”with Corona”の下で社会・経済活動は新たな「平時」へと回帰するだろう。この冬の世界的な感染拡大の波が収まりつつあることは、新型コロナ禍が大きな転換点を迎えた可能性を示していると考えられる。



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ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、この冬の新規感染者のピークは、米国が1月10日の138万2千人、ユーロ圏は1月25日の157万7千人だった。人口100万人当たりの7日移動平均だと、米国は1月15日の2,440人、ユーロ圏は1月28日の2,448人を天井に減少に転じている。欧州ではリバウンドの気配もあるが、感染の波は収束期を迎えたと言えるだろう。

 

この冬の感染拡大期で死者が最多だったのは、米国が2月26日の3,088人、ユーロ圏では2月16日の3.193人だ。いずれも昨年夏のデルタ型を主流とする感染拡大期に比べ天井が低くなっている。新規感染者の大幅な増加と致死率の低下は、オミクロン型を主力とする今回の感染波の特徴に他ならない。医療供給体制への負荷は相対的に低下したのではないか。

 

重症化率、致死率の低下は、感染の中心がオミクロン型へシフトしたことが大きいようだ。もっとも、それに加えて主要国においてワクチン接種が進んだ効果も見逃せない。Our World in Dataの集計によれば、G7においてワクチンを2回接種した人の率は、米国が65.3%とやや低いものの、日本を含む他の6ヶ国では70%を超えた。ブースターショットも急速に進んでいる。

 

日本国内の数字を見ると、東京都の新規感染者数は2月2日の2万1,576人がこれまでのところ過去最多である。全国だと2月5日の10万5,532人だ。3月後半に入って東京都は1万人を割る日が多くなり、全国でも5万前後の推移となっている。ピーク時と比べ新規感染者は半分程度まで縮小しており、最も大きな波となった第6波は収束期に入ったと言って良いだろう。

 

国内での重症者のピークは、第5波が昨年9月3日の2,223人だったのに対し、今回は2月25日の1,507人だ。入院加療が必要な患者に占める重症者の率は0.2%に止まり、第5波の5.6%を大きく下回っている。また、致死率も手許の計算で0.5%程度、第2〜5波の2%前後から大きく低下した。オミクロン型が主流になり、重症化は明らかに抑制されている。

 

政府は3月21日をもって18都道府県に発令していた蔓延防止等重点措置を全て解除した。感染の中心は高齢者から重症化し難いと言われる若年層に移る一方、高齢者、医療従事者へはワクチンのブースターショットが進んだ。高齢者施設、医療機関のクラスターは重篤化し易いだけに、ワクチン接種の進捗は規制緩和へ向けた重要な判断要素と言える。

 

新型コロナの状況を政策的に判断する上で最も重要な指標の1つは病床使用率だ。足下、奈良県、大阪府、京都府など関西圏が全般に高水準だが、重症者向け病床は東京都、神奈川県など人口密集地域でも40%程度まで低下した。医療供給体制に余裕ができれば、重症者に対して適切な医療を施せるため、重篤化を回避する可能性がさらに高まると見られる。

 

現在、新型コロナは感染症法上の第2類に分類されている。結果として保健所の負荷が極めて大きくなり、むしろ医療サービスの目詰まりが指摘されてきた。塩野義が特例申請した軽症者向け経口治療薬「S-217622」が処方されて効果が確認されれば、ワクチンとの両輪が整うことになるため、政府は新型コロナを感染症法上の第5類に移すことを検討するだろう。

 

新型コロナの感染拡大が収束に向かい、主要国では社会・経済活動の正常化へ向け規制緩和が進みつつある。日本でも岸田政権は蔓延防止措置の解除に踏み切った。今後の課題は、ワクチン接種をさらに進め、経口治療薬の処方拡大への準備を進めることだろう。さらに、政府は今夏にも4回目のワクチン接種を検討している模様だ。そうした条件が整えば、新型コロナは感染症法の第2分類から、季節性インフルエンザと同じ第5類への見直しが行われると見られる。また、ビジネス目的及び長期在留資格を持つ外国人の入国を段階的に認め、7月10日の参議院選挙後にも観光目的の訪日客も受け入れを開始するのではないか。


市川 眞一
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・フェロー

日系証券の系列投信会社でファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系2つの証券にてストラテジスト。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。著書に『政策論争のデタラメ』、『中国のジレンマ 日米のリスク』(いずれも新潮社)、『あなたはアベノミクスで幸せになれるか?』(日本経済新聞出版社)など。


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