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2021年11月のバイオ医薬品市場
2021/12/22

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概要


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バイオ医薬品関連企業の株価動向

11月のナスダック・バイオテック指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。

2021年11月のバイオ医薬品市場は、株式市場全体に大きく出遅れる展開となりました。米食品医薬品局(FDA)長官にオバマ政権時の長官が指名されたことも、米国議会における薬価引き下げ協議が紛糾せず収束に向かいつつあることも、株価の下げの勢いを和らげることは出来ませんでした。マクロ経済要因の他にも、年末の節税対策の売りや市場動向に失望した投資家の投げ売りが予想されるとの見方が強くなり下落局面が続いています。新型コロナウイルスの新規感染者が増減する状況も、ワクチン製造関連銘柄のボラティリティを上昇させました。中小型株や新規株式公開(IPO)銘柄が軟調に推移する状況は変わらず、FDAの申請承認に対する予想外の決定やヘッジファンドの相次ぐ閉鎖に対する投資家の不満も聞かれました。

株価が大きく上昇した銘柄としては、クリスタル・バイオテック(米国)、アーカス・バイオサイエンシズ(米国)、サイトカイネティックス(米国)、ノババックス(米国)等が挙げられます。クリスタル・バイオテックは栄養障害型表皮水疱症(DEB)の遺伝子治療の治験で良好な結果を発表しました。アーカス・バイオサイエンシズは、共同開発契約を結んでいるギリアド・サイエンシズ(米国)が抗癌剤3剤の権利を7億2,500万ドルで手にしたことを受けて上昇しました。サイトカイネティックスは、筋機能不全疾患治療薬開発で競合するブリストル・マイヤーズ・スクイブ(米国)の承認申請に対するFDAの判定に遅れが生じていることがプラス要因となりました。ノババックスは、新型コロナウイルス・ワクチンの緊急使用を複数の国に申請していますが、インドネシア当局から初めて認可が下りたことを発表しました。

株価が大きく下落した銘柄としては、TGセラピューティクス(米国)、バイオヘブン・ファーマシューティカル(米国)等が挙げられます。TGセラピューティクスは、証券会社による評価の引き下げなどが影響し、株価が下落しました。バイオヘブン・ファーマシューティカルは、米国国外での経口片頭痛薬の販売権利を付与するなどの提携契約をファイザーと締結したことを受け株価が大きく下落しました。提携は長期的観点では好材料ですが、短期的には他社からの買収の可能性が減ると見なされました。

今後のバイオ医薬品市場見通し

バイオ医薬品セクターについては、2022年には米食品医薬品局(FDA)への信頼が高まり、状況が好転するものと考えます。また大手医薬品企業や大手バイオ医薬品企業はM&Aの原資となる多額の現金を有していることも注目されます。他方、バイオ医薬品株式市場は、このところ米国株式市場を下回るパフォーマンスとなっていますが、バリュエーション(投資価値評価)が再び魅力的な水準となり、心理的にも弱気であることから、長期的な価値を見出す機会となっている可能性があると考えます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む最高の機会となると考えます。

バイオ医薬品関連企業の売上高は相対的に高い伸びが見込まれる


バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)

バイオ医薬品関連企業については、①有望な治療薬候補の良好な治験結果の発表、②大型の新薬の承認、③新薬販売開始後の業績寄与の拡大などを背景に、米国企業や日本企業よりも相対的に高い売上高の伸びが見込まれています。(図表7参照)

売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)

バリュエーション

新薬の開発動向が順調に推移していることやバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて株価が上昇しており、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇しています。(図表9参照)

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


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