終わりなき貿易戦争 | ピクテ投信投資顧問株式会社

終わりなき貿易戦争 グローバル 先進国 新興国 米国

2019/05/17グローバル

ポイント

 全面的な貿易戦争は、もはや米国と中国だけの問題ではありません。世界的なスタグフレーション(景気後退時における物価上昇)を招く恐れがあります。

世界の貿易に支障をきたすと、全員が被害者に

中国からの輸入品2,000億ドル相当に追加関税を課する米国の方針に対して、中国が報復関税を発表しました。このような貿易戦争と報復合戦は、投資家自身にも「死の灰」が降りかかっていることを認識すべきです。

ピクテの試算では、世界の1番目と2番目の経済大国の間の貿易戦争は、世界経済を景気後退に陥れ、世界の株式市場の急落を示唆しています。

ピクテのモデルでは、もし米国の輸入品に10%の追加関税がかけられて、そのまま消費者に転嫁された場合、世界のインフレ率は0.7%ポイント上昇することを示しています。

また、企業利益を2.5%低下させ、世界株式の株価収益率(PER)を最大15%低下させると見ています。

つまり、世界の株式市場は15%~20%程度下落する可能性があります。もし、このような株式市場の調整が現実化すれば、株価は3年前の水準に戻ることになります。米国国債の利回りも低下(価格は上昇)する可能性がありますが、追加関税によるインフレ率の上昇によって、利回りの低下は限定的と考えます。

もちろん米国と中国は、6月に日本で開催されるG20大阪サミットにおいて、貿易協議について妥結する可能性は残っています。しかしながら、もし協議が物別れに終わった場合、更なる追加関税は米中両国の経済にとってマイナスとなります。ピクテの試算では、現状の追加関税によって中国の経済成長率は0.5%ポイント、米国は0.2%ポイント低下すると見ています。

さらに事態を悪化させるのは、貿易戦争の影響は米国と中国の2ヵ国に留まらないということです。自由貿易主義を採用している、例えばアジアではシンガポールや台湾、欧州ではハンガリー、チェコ共和国そしてアイルランドといった国々は、米国や中国以上に被害を被る可能性があります。

図表:グローバルのバリューチェーンへの参画度合い(輸出額に対する比率、%)

 

  

バリューチェーンへの参画度合い:世界貿易機関(WTO)の定義に基く、1国の輸出額に他国の輸出額に対する付加価値を加えたもの。

出所:ピクテ・アセット・マネジメント

貿易戦争の激化が株式市場に与える影響については、従来の見方とは異なり、米国株式市場が最も悪影響を受けると考えます。

理由は、ピクテのバリュエーション・モデルでは米国株式が最も割高であり、米国株式セクターは経済情勢の変化に対してより影響を受けるからです。2019年の予想株価収益率によると、米国株式は欧州、日本、新興国株式市場よりも30%程度割高となっています。

景気敏感株については、特に一般消費財・サービスや情報技術といったセクターが割高であり、最も下落リスクを抱えている可能性があります。

投資家は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ等の追加金融緩和政策を取ることに期待しないほうが良いと考えます。なぜなら、金融市場は既に年末までに25ベーシス・ポイントの利下げを価格に織り込み済みのためです。

このようなピクテの貿易戦争に対する分析について、かつて同じような経験をしたことに思い当たるかもしれません。金融市場の歴史は、貿易障壁は株式市場にとってマイナスであることを証明しています。1971年半ばに、時のリチャード・ニクソン大統領が輸入品に対して10%の関税を課したことから、その後3ヵ月でS&P500株価指数は10%下落しました。

この経験から得られたことは、疑いも無く貿易戦争に勝者はいないということです。

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

当資料をご利用にあたっての注意事項等

●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。 ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

ページの先頭へ戻る