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インフレと金融/経済史~インフレの変遷~
2025/08/14

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概要

ピクテでは1970年以降の金融市場を大きく3つの期間にわけ、それぞれの期間の物価変動の特徴からグローバリゼーションの進展とインフレには一定の関係性があると考えます。




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■物価はどのように変動してきたか

本シリーズでは過去50年超のインフレ率の変化やその背景にある金融市場の史実を振り返ることで、過去のさまざまな物価変動局面での金融市場の動向を確認し、その理解を深め、今後の見通しを整理する一助となることを目的としています。今回はまずこれまでのインフレ率の変化についての概略とピクテの考え方を説明いたします。

図表1で1971年から現在までの日米欧(ユーロ圏は1997年1月より)のインフレ率(前年同月比)推移を確認します。ピクテでは過去50年超の期間を①1971年から1990年代はじめ、②1990年代半ばから2017年ごろ、③2018年から現在までの3つに分け、それぞれの期間における物価変動の特徴として、①はインフレ期、②は物価低位安定期、そして③は再びインフレ期であると考えています。各期間の背景を探ると、①においては、第2次世界大戦後から続いた東西冷戦期間中、軍事費の拡大に伴う財政出動や公共投資、加えて2度にわたって発生したオイルショックが物価を押し上げました。日米のインフレ率はオイルショックの際に特に著しく上昇しましたが、平均的に見ても高い時代だったといえます。②においては、冷戦の終結に伴うグローバリゼーションの進展によって、国際サプライチェーンの構築が進展し、分業体制が確立したことで世の中の物価は安定しました。米国においては平均して2%程度でインフレ率が推移しました。一方、日本においてはバブル崩壊が経済に深刻な後遺症を与え、その後の投資や消費が大きく低迷したことや少子高齢化などの構造的な問題もあり長らくデフレの状態が続きました。③においては、第1次トランプ政権の誕生、貿易関税を巡る米中対立を筆頭にさまざまな脱グローバリゼーションの動きが活発化し、また、コロナショックによるサプライチェーンの分断やロシアのウクライナ侵攻がコモディティ価格を大きく上昇させ、再び物価が上昇しました。多くを輸入品に頼る日本においても、その影響は大きく、また日米の金融政策の違いから円安・米ドル高が急激に進行したこともありインフレ率は着実に上昇してきました。2025年6月の消費者物価指数は生鮮食品を除くコア指数が3.3%となっており、7ヵ月連続で3%を超えていることからインフレが定着しつつあるといえます。

インフレ率は主に経済状況や財政・金融政策などの影響を強く受けますが、世界経済の枠組みに大きな影響を及ぼしているグローバリゼーションの進展や後退も、インフレに一定の影響を与えているといえます。この観点で見ると、米国の関税政策による国際的な緊張の高まりや自国回帰といった国際的なサプライチェーンの大幅な見直し、また、程度の差はありますが世界でポピュリズムの動きが台頭している現状を踏まえると、脱グローバル化の流れが目立ちはじめているといえ、これは今後のインフレを押し上げる要因の一つになりえると考えます。


図表1:日米欧の物価上昇率推移
(月次、1971年1月~2025年6月、前年同月比、ユーロ圏は1997年1月以降)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

                                                                                         

 

    

 

              

 

 



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