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- インフレと金融/経済史③~東西冷戦期② 第二次オイルショック~
第一次オイルショックの後、イラン革命を契機に発生した第二次オイルショックは前回ほどではなかったものの、世界に再びインフレを招きました。
■第二次オイルショック
今回は第一次オイルショックの後に発生した第二次オイルショックについてご説明いたします。第一次オイルショックはインフレと経済情勢の悪化が同時に進行するスタグフレーションを招き、世界は深刻な不況になりました。その後、1975年あたりをピークに景気は底を打ち、世界経済は緩やかな回復を見せ始めました。しかしながら、世界経済の回復とともに原油需要が再び増えたことを受け、石油輸出国機構(OPEC)が1978年末以降に原油減産と原油価格の段階的引き上げを行ったことに加え、1979年のイラン・イスラム革命(イラン革命)によって誕生したイラン・イスラム共和国が自国資源保護のため原油の大幅減産や輸出の一時停止を行ったことで、再び発生した原油供給危機が招いた世界経済の混乱とインフレの再燃を第二次オイルショックといいます(図表1、図表2)。この二回目となるオイルショックは再び原油価格の高騰を招き、第一次オイルショック後には10米ドル台で安定していた原油価格が79年末には40米ドル台まで上昇しました。
図表1:原油価格の推移
(月次、1970年1月~1989年12月)
出所:世界銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表2:日米の物価上昇率推移
(月次、1975年1月~1989年12月、前年同月比)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
第二次オイルショックの主な要因となった1979年イラン革命について、詳細をご説明いたします。イラン革命とは文字通り、イラン国内で発生した政治的革命を指しますが、イランは当時、OPECの中でサウジアラビアに次ぐ第2位の石油生産国であり、世界への石油供給量もイランの割合は大きなウェイトを占めていました。第二次世界大戦後の冷戦の状況下、ソ連と対峙していた米国はパフラヴィ朝イランの2代目の皇帝であるパフラヴィ2世(パーレビ国王)に経済的・軍事的援助を行い、西側諸国の一員に組入れようとしました。パーレビ国王は、「白色革命」と呼ばれる脱イスラム化・近代化政策を採って、農地改革や女性の参政権、国営企業の民営化などを積極的に進めましたが、急激な改革は貧富の差の拡大を生み、国民の強い反発を招きました。加えて、伝統的なイスラム教の価値観と相反する近代化政策は、宗教勢力や保守派の反発を招きました。パーレビ国王は、国王批判をしたイスラム教指導者ホメイニ師を国外追放するなど、反対勢力の弾圧を行いましたが、抑えきれず翌79年1月にエジプトへ亡命せざるを得なくなり、国王批判をして国外追放されたホメイニ師が亡命先のフランスから帰国しイラン・イスラム共和国が樹立、パフラヴィ朝イランが消滅しました。これがイラン革命です。そして、先述のようにイラン・イスラム共和国が自国資源保護のため原油の大幅減産や輸出の一時停止を行ったことが第二次オイルショックが発生する大きな要因となりました(図表3)。
ちなみに第二次オイルショックが日本経済に与えた影響は、第一次オイルショックに比べて、はるかに軽微なものに留まり、1979年でもプラス5.5%と欧米諸国とは違って比較的高い成長率となりました。要因として、第一次オイルショック時の日本の主要産業は重厚長大、すなわち鉄鋼、造船、非鉄金属、石油化学といったエネルギーを大量消費する業種であったため、原油価格急騰の影響を直接的に受けましたが、その後、日本の産業構造は省資源の軽薄短小、つまり機械、自動車、電気機器、半導体といった業種にシフトしていき、社会全体で省エネ化が進んだことがあげられます。
図表3:イラン革命の構造
図表4(ご参考):日米の政策金利推移
(月次、1975年1月~1989年12月)
出所:ブルームバーグ、日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成
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