- Article Title
- インフレと金融/経済史⑪~物価低位安定期⑥日本のバブル崩壊とデフレ①~
日本を念頭に置いた貿易不均衡や過度な米ドル高の解消のためのプラザ合意は日本に円高不況を招き、その対策としての金融・財政政策がバブルの形成につながりました。
■プラザ合意と円高不況
今回は、日本のバブル崩壊後、長らく続いたデフレについてご説明いたします。日本はバブル崩壊により、経済の低成長、株価の調整、賃金や物価の低迷が長期にわたって続くこととなりました。一般的に「失われた30年」と呼ばれるものです。では、そもそもなぜバブルが発生し、崩壊したのかについてまずご説明いたします。
1980年代前半、産業構造の転換(重厚長大→軽薄短小)に加えエネルギー政策の見直しによって第二次オイルショックの影響を軽微なものにできた日本は高い経済成長率を記録し、他国への輸出を拡大させていました。一方、米国は当時のレーガン大統領のもと、「強い米国」政策として増大された軍事費が財政赤字を悪化させ、また、インフレ抑制のために高金利政策をとったことがドル高につながり米国の輸出産業を停滞させ、貿易赤字を悪化させました。加えて、減税や規制緩和によって、経済自体は回復したものの、家計の消費が増進したことで輸入が拡大したことも貿易赤字の悪化につながりました。
このように米国が双子の赤字に苦しむ一方、日本は好調な輸出を背景に経常収支を拡大させ、一人勝ちの状態が続きました。当時の日本は財政再建路線にあり、財政拡大による内需拡大には消極的かつ外需依存で成長していました。そのため、輸出ばかりが増え、輸入が増えない日本は市場開放を進めない閉鎖的な保護主義だとする論調が目立つようになり、日本への圧力は当然のように高まりました。そして1985年、主に日本を対象とする貿易不均衡の解消、米ドル高の是正を目的として「プラザ合意」がG5注1で結ばれました。この合意により、ドル安へ誘導するための為替介入が協調して行われました。1985年8月末時点で1米ドル239円だった米ドル円相場は1986年8月末時点で154円まで一気に円高が進行しました。行き過ぎた円高を止めるべく、日本銀行は公定歩合の複数回引き下げに動きましたが、結果として、輸出産業を中心に日本企業の業績が悪化して、深刻な円高不況となりました。(図表1、2)
注1:日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス
図表1:米ドル/円と公定歩合の推移
(月次、1980年1月~1993年12月)
出所:ブルームバーグ、日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成
※公定歩合は2006年8月に「基準割引率および基準貸付利率」に名称が変わり、政策金利としての役目は終えています
図表2:日本の実質GDP成長率の推移
(四半期、前年同期比、1980年3月~1993年12月)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
■ルーブル合意とバブルのはじまり
プラザ合意によって行われた為替介入により、日本等の通貨高が進む中、米ドル安が大きく進行しました(図表3)。既述の通り、貿易赤字を解消し、米国の国際競争力を回復させるための介入ではありましたが、確かに輸出は多少回復したものの貿易赤字の解消はなかなか進まず(図表4)、さらに米ドル安によって輸入物価が上がったため米国内ではインフレへの懸念が広がりました。そのため、1987年、今度は過度な米ドル安を是正し、為替市場を安定化させることを目的に「ルーブル合意」がG7注2で結ばれました。米国が利上げをし、日本を含むその他の国が利下げをするといった協調介入でした。実際には、西ドイツ(当時)が合意に反して利上げを行ったことでブラックマンデーへとつながりましたが、このルーブル合意をもって、米ドル安に歯止めがかかりました(図表3)。日本においては、急激な円高は止まったものの、プラザ合意前に比べて大幅な円高である状態に変わりはなく、恒常的な貿易黒字ではありましたが、輸出競争力は依然として低下したままでした。そのため、日銀はさらなる公定歩合の引き下げを継続し、日本政府は法人税と所得税を減税することで投資と消費両面からの内需拡大策を採りました。その結果、市場で溢れた資金が不動産市場や株式市場に流れ込み、資産価格が急激に上昇し、バブルの形成へとつながっていきました。
注2:日本、米国、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ
図表3:ドルインデックスの推移
(月次、1980年1月~1993年12月)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表4:米国の貿易収支、輸出入額の推移
(年次、1980年~1993年)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。
手数料およびリスクについてはこちら
MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
関連記事
| 日付 | タイトル | タグ |
|---|---|---|
|
日付
2024/01/11
|
タイトル 経済学のキホン① ~経済とは?①~ | タグ |
|
日付
2024/01/25
|
タイトル 経済学のキホン② ~経済とは?②~ | タグ |
|
日付
2024/02/08
|
タイトル 経済学のキホン③ ~経済とは?③~ | タグ |
|
日付
2024/02/21
|
タイトル 経済学のキホン④ ~経済思想史①~ | タグ |
|
日付
2024/03/07
|
タイトル 経済学のキホン⑤ ~経済思想史②~ | タグ |
|
日付
2024/03/21
|
タイトル 経済学のキホン⑥ ~経済思想史③~ | タグ |
|
日付
2024/04/04
|
タイトル 経済学のキホン⑦ ~経済思想史④~ | タグ |
|
日付
2024/04/18
|
タイトル 経済学のキホン⑧ ~経済思想史⑤~ | タグ |
|
日付
2024/05/02
|
タイトル 経済学のキホン⑨ ~経済思想史⑥~ | タグ |
|
日付
2024/05/16
|
タイトル 経済学のキホン⑩ ~経済思想史⑦~ | タグ |