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インフレと金融/経済史⑫~物価低位安定期⑦日本のバブル崩壊とデフレ②~
2026/01/28

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概要


不動産向け融資を制限する総量規制により日本のバブルは崩壊し、その後、長きにわたって低成長とデフレが続いたことで日本経済は「失われた30年」を経験することとなりました。


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■不動産や株式への投機の過熱

今回も日本のバブル崩壊後、長らく続いたデフレについてご説明いたします。円高不況を克服するために公定歩合が引き下げられ(1985年12月:5.0%→1987年2月:2.5%)、また減税や財政出動を積極的に行った結果、「金余り」の状態が発生し、溢れたお金は不動産や株式市場へと向かいました。さらに企業の資金調達方法において、従来の銀行からの融資(間接金融)ではなく、株式や債券を発行し、市場から直接資金を集める方法(直接金融)が増えたことも不動産や株式市場へと資金が流入する大きな要因となりました。また、このように投資が過熱する中、証券会社では大口顧客の囲い込みや厳しいノルマの達成のため、運用利回りの保証や損失の補填を約束する(当時も現在も違法)行為が横行しました。こうして投機目的での過剰な資金流入が続いた結果、日経平均株価は1989年12月末に終値ベースで当時の最高値となる38,915円87銭の最高値を記録し(図表1)、また1985年から1990年の間に三大都市圏の商業地の地価は+180%ほどの上昇率を記録しました(図表2)。


図表1:日経平均株価の推移
(月次、1979年12月末~1993年12月末)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表2:三大都市圏(東京、名古屋、大阪)の商業地価格の推移
(年次、1980年~2012年、1980年を100として指数化)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

■金融引締めと総量規制、バブル崩壊

この過熱した状況を抑えるため、まず日銀が1989年5月から公定歩合を2.5%から6.0%まで段階的に引き上げました。さらに1990年の地価公示をうけ、さらなる土地価格高騰が地方へと波及していく懸念を踏まえ、1990年3月、大蔵省(当時)は、「土地関連融資の抑制について」という通達に基づく行政指導を行い、その中で総量規制と呼ばれる金融機関の不動産向け融資の制限に言及しました。当時の銀行融資はキャッシュフロー、つまり企業の返済能力ではなく、不動産の担保価値に依存したものでした。当時は「土地の価格は永遠に上がり続ける」という土地神話が広まっていました。そのため、金融機関は不動産の担保価値を重視した融資を拡大し、不動産の投機取引が加速しました。結果として、実体経済からかけ離れた価格上昇が起こり、規制を強化して市場を鎮静化する必要が生じました。

総量規制とは、「不動産向け融資は、公的な宅地開発機関等へのものを除き、その伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える」というものでした。この導入後、早い段階で不動産向け融資の伸び率は急落し、総貸出の伸び率を下回りはじめ、それに伴い、地価も徐々に前年比でマイナスの伸び率を示しはじめました。さらに民間金融機関は貸し渋りや貸し剥がしを行い、融資姿勢そのものを急激に引締めました(図表3)。これが信用収縮を招き、株価や地価の下落を加速させました。1992年の地価公示では、三大都市圏の商業地価格の下落率は前年比二桁%となり、その後も下落し続けました。1995年時点では1990年比-44.7%と地価が大きく下落したことがわかります(図表2)。

こうして金融環境が急激に引き締められた結果、株価と地価が大きく下落し、不良債権問題が日本経済に大きな影を落としました。さらに少子高齢化といった構造的な問題もあり、その後、長きにわたって低成長とデフレの時代が続くこととなりました(図表4)。         


図表3:民間金融機関の貸し出しの伸び率推移
(年次、1980年~1995年)


出所:日本銀行のデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表4:日本のGDP成長率とコアCPIの推移
(年次、1981年~2012年)

出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

         

 

 



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