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- インフレと金融/経済史⑭ ~脱グローバル化の時代② コロナショック~
コロナショック後の大規模な財政・金融政策により金融市場は早期に回復した一方、サプライチェーンの混乱が続く中での経済活動の再開はインフレ率の上昇を招きました。
■新型コロナウイルスの蔓延
今回は、新型コロナウイルスの世界的な蔓延が経済や物価動向に及ぼした影響についてご説明いたします。新型コロナウイルスは2019年12月、中国の武漢にて初めて感染拡大が明らかとなりました。翌年1月には中国国内での新規感染者数が爆発的に増加し、そこから世界全体に感染が広まっていきました。日本では2020年3月に「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が改正され、4月に緊急事態宣言が発出されると、外出や移動の制限、商業施設の休業、出社を控えたテレワークが推進されるなど、経済活動へのさまざまな制限が課されました。こうして、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、日本のみならず多くの国で渡航制限や外出制限が課され、人やモノ、カネの流れが強制的に遮断された結果、経済および金融市場に大きな影響を与えた出来事がコロナショックと呼ばれます。グローバリゼーションにより国際分業が進んでいた世の中において、国境を越えるサプライチェーンが途絶えたことで供給面での大きな経済停滞が世界全体で生じただけでなく、ロックダウン(都市封鎖)や外出制限により需要面での大きな停滞も発生しました。経済活動の再開見通しが立たない中、需給両面のショックが経済環境悪化を深刻化させました。
主要先進国も新興国も軒並み2020年前半にマイナス成長に陥り、日米の株式市場では年初から3月にかけて大幅な下落が発生しました(図表1~3) 。しかし、主要先進国を中心に大規模な財政出動がすぐさま行われ、さらに各国の中央銀行が利下げや国債の買入れといった大規模な金融緩和策を行った結果(図表4、5)、同年8月にはコロナショック前の水準を回復しました(図表1)。実体経済は回復していない中、先行きへの期待やワクチン開発等、株価を支えた要因は他にも存在しましたが、過剰ともいえる流動性の供給が金融市場に大きくプラスに働いたといえます。また、為替市場においては、リスク回避姿勢の強まりから米ドルへの需要が高まり、米ドルが上昇しましたが、年後半には米ドル供給の拡充等により落ち着きを取り戻し、ドル安基調となりました(図表1)。このようにコロナウイルスの蔓延が金融市場へ与えた影響は短期的に非常に大きかったものの、各国が金融政策や財政政策を迅速に取ったことやワクチン開発の進展、普及を受けた経済活動の段階的な再開により、金融市場は早期に落ち着きを取り戻すことができました。
図表1:日米の株価と米ドル指数の推移
(月次、期間:2018年12月末~2021年12月末、日米の株価は2019年12月末を100として指数化)
日本株式:TOPIX(東証株価指数)、米国株式:S&P500種株価指数
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表2:先進主要国の経済成長率の推移
(年次、2018年~2021年)
出所:IMF(国際通貨基金、World Economic Outlook, April 2025)のデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表3:先進国と新興国の経済成長率の推移
(年次、2018年~2021年)
出所:IMF(国際通貨基金、World Economic Outlook, April 2025)のデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表4:日米欧の政策金利の推移
(日次、期間:2018年12月末~2021年12月末)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
図表5:日米欧の中央銀行資産残高の推移
(月次、2002年12月末~2022年12月末、2002年12月末を100として指数化)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
一方、大規模な財政出動と金融緩和により、市場に大量の流動性が供給されたことで、例えば、家計においては可処分所得が増え、コロナショックからの経済回復とともに需要が急激に増加しましたが、サプライチェーンの混乱により供給が追い付かずインフレ率は次第に上昇していきました(図表6)。コロナショックにより生じたサプライチェーンの分断やその後の混乱は、それまで比較優位の考え方のもと進められてきた国際分業をもう一度見直す契機となりました。グローバリゼーションの進展は生産活動効率化を促進し、世界の物価の安定化に結び付いてきたものの、一方で特定の国や企業に依存しすぎた結果が今回のサプライチェーンの混乱につながったともいえます。コロナショックを契機として、サプライチェーンの再構築に際し、その設計を見直す「リショアリング(国内回帰)」や「ニアショリング(近隣国移転)」といった動きも広がりつつあり、これをもってただちに脱グローバル化とはいえないものの、グローバリゼーションの進展に影響を与えた動きも一部でみられました。
図表6:日米欧のCPI(消費者物価指数)の推移
(月次、2018年12月末~2021年12月末、前年同月比)
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
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