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インフレと金融/経済史⑮ ~脱グローバル化の時代③ ロシア・ウクライナ問題~
2026/03/11

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概要


ロシアによるウクライナ侵攻は国際商品価格の高騰を招き、世界全体でインフレ率の高進につながりました。


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■ロシアによるウクライナ侵攻

今回は、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したインフレの高進についてご説明いたします。まず、ウクライナ侵攻前の状況を改めて確認いたします。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞が金融市場に大きな影響をもたらしたコロナショック後、各国が大規模な財政出動や金融緩和を行い、またワクチン開発、普及に伴う経済活動の再開によって金融市場は落ち着きを取り戻しました。一方で、2021年に入ると世界各国でインフレが加速しはじめました。米国では財政政策の一環として家計に給付された現金が貯蓄率を引き上げ、経済活動の再開に伴いその貯蓄が消費に向かうことで需要が増大しましたが、サプライチェーンの再構築がなかなか進まないことによるモノの供給不足がインフレの高進につながりました。また、供給不足は労働市場においても発生しました。コロナ禍で労働市場が冷え込み、求人数が減り、失業率は著しく上昇しました。その後、経済の再開に伴い、求人数が回復する一方で労働参加率はコロナ前の水準に戻りませんでした。その結果、人手不足が賃金の上昇圧力を生み、インフレにつながりました。そして、さらにインフレを加速する出来事が発生しました。それが2022年2月24日に起きたロシアによるウクライナ侵攻です。ロシアとウクライナの両国は石油や天然ガス等のエネルギー資源および小麦やトウモロコシ等の穀物の主要供給国であり、両国の戦争はコモディティ価格の高騰につながりました(図表1)。その後、主要先進国はロシアに対する経済制裁を発動、交易制限を図りましたが、この動きもエネルギー価格の高騰につながりました。結果として、この2ヵ国間による全面戦争は世界にインフレの高進をもたらし、特にロシアのエネルギー資源への依存度が高かった欧州はよりインフレ圧力が強まりました(図表2)。一方、日本は他国に比べてコロナショックからの経済回復が遅れたことにより需要が伸び悩んでいたことや企業物価指数が上昇する一方で企業が価格転嫁をすぐに進めなかったことを受け、相対的にインフレ率の上昇は抑えられていました(図表2)。


図表1:WTI原油先物価格とCRB指数の推移
(月次、期間:2020年1月末~2022年12月末、2020年1月末を100として指数化)



※WTI原油先物価格:WTI(West Texas Intermediate)は米国テキサス州やニューメキシコ州で産出される高品質な軽質原油の総称で、  北海ブレント、ドバイにならぶ原油価格の代表的な指標 ※CRB指数:CRB(Commodity Research Bureau)社が算出する国際商品先物指数
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表2:日本、米国、欧州のCPI(消費者物価指数)の推移
(月次、期間:2020年1月~2022年12月、前年同月比)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

こうして、世界全体にインフレ圧力が強まる中、約40年ぶりのインフレ率を記録した米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が2022年3月より利上げを開始しましたが、そのペースは過去類を見ないものとなりました(図表3)。7月にはECB(欧州中央銀行)も利上げを開始するなか、日本だけが緩和的なスタンスを維持したため、金融政策の違いから円安の流れが加速しました。さらに、2023年後半になり欧米諸国でのインフレ率が徐々に低下傾向を見せるなか、実質金利の差が拡大したことをうけ、さらに円安が進行しました。この円安は日本の輸入物価高騰につながり、コストプッシュ型のインフレの要因となりました(図表4)。                 


図表3:米国政策金利(上限値)の推移
(日次、期間:2020年1月1日~2023年12月29日)


出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

図表4:日本の各物価指数の推移
(月次、期間:2020年1月末~2025年12月末、各指数すべて2020年平均を100とする)



出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成

               

 

 



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