1970年代型インフレ下の投資方針



世界有数の資源大国であるロシアによるウクライナへの侵攻は、世界経済に大きな動揺を与えています。中国の台頭もあり、米国を中心とした世界のパワーバランスが崩れつつある中、資源価格高騰によるインフレ懸念は運用戦略にも影響を与えそうです。今後、1970年代に発生した金利高・高インフレの環境に似た環境が到来する可能性も踏まえ、シニア・フェロー市川眞一による情勢分析をまとめました。(詳細レポート「2022.3.15 インフレ・地政学リスク下の資産運用」はこちら


市川 眞一
シニア・フェロー

ロシア・ウクライナ危機と資源インフレ

ロシアは、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油純輸出国です。そして、その輸出先の50%以上はドイツなどの欧州向けとなっています。また、天然ガスについても、ロシアはパイプラインを使って欧州向けに効率よく輸出することができることから、世界のメジャープレイヤーとしての位置にあります。ただ、ロシアによるウクライナへの侵攻の影響で、ロシア産の資源の輸入を段階的にでも縮小する動きが出てくると考えられます。

では、シェールオイルやシェールガスの開発を契機に世界有数の原油・天然ガスの産出国になった米国が、ロシアの代わりを担えるのかというと、そういうわけでもありません。理由の1つ目が、産出量こそ多いものの米国内での消費が多いことが挙げられます。また、理由の2つ目は、地理的な問題で例えば天然ガスの場合は、天然ガスを液化したうえで専用のタンカーで輸送する必要があり、そのための設備なども十分にはないということです。

経済的に見た場合、今回のウクライナへの侵攻をきっかけとした国際的な動きは、ロシアにとって大きな打撃になると見込まれます。しかし、それと同時に、非ロシア産の資源の奪い合いが資源価格高騰につながることで、日本をはじめとした世界中の国々の打撃にもなると考えられます。


ゲームのルールが変わった

心に留めておかないといけないのは、「ゲームのルールが変わった」ということです。

1960年代から80年代の約30年は、東西冷戦の中で世界的なサプライチェーンが統合できなかった上、米ソの代理戦争のような形で各地で紛争が起き、資源の奪い合いが行われました。第一次、第二次石油危機を含めてインフレの時代ということができるでしょう。

それが1990年代頃になると状況が大きく変わりました。米国主導のグローバリゼーションや、中国をはじめとしたアジア諸国の工業化が進んだ結果、世界的な工業生産能力が高まりインフレになりにくい構造が約30年続いてきました。

そして今は、米国と中国による覇権争いを中心とした新たな時代にあります。今回のロシアによる侵攻は、中国との関係の中でプーチン大統領が決断をしたとも考えられます。こうした点を考慮すると、もう一度、東西冷戦時代へと戻るリスクが高まっていることは認識しておく必要があるでしょう。


1970年代型資産防衛術

では、そのころの金融市場はどのようなものであったのでしょう。米国では、1965年にダウ平均株価指数が1,000米ドル近い水準まで上昇しましたが、1960年代後半からは、段々とインフレ圧力が高まり、金利が上昇局面にあり、17年間も株価が上がりませんでした。債券も株式もダメという、運用にとっては厳しい1970年代に資金が流れ込んだのが銀行預金よりも有利な市場金利連動型の金融商品であるMMFです。個人金融資産に占める株式の割合はこの間に大きく低下しましたが、1980年代の経済の安定とともに、蓄積された資金が株式投資信託の方へと循環していき一気に花を開くこととなりました。翻って日本でも、1974年に狂乱物価と呼ばれるような異常な物価上昇を経験しました。ただ、この時は、経済成長とともに実質賃金も上昇していたこともあり、資産運用をしなくても所得を伸ばすことで、豊かな生活を見通せる時代でもありました。

今後、もしも当時と同じようなインフレや不安定な経済環境が訪れた場合はどうなるのか。日本の個人金融資産の多くは現預金が占めており、デフレ下ではこれが功を奏しました。一方で、現在は物価が上がっても、賃金がそれに追いつくことができず、さらには現預金が目減りしてしまう可能性もはらんでいます。また、日本円の価値自体が下落する(円安となる)リスクについても、考慮しておく必要があるでしょう。だからこそ、様々なリスクを考慮したうえでの備えとして、運用を考えないといけないのだといえます。株式や債券、リートそして金といった様々な資産に分散投資をしていくことでインフレと地政学リスクの両方に対応していく備えをすることは大切ですが、そうした中でもその質を見極めることが必要になるのです。




Russia-Ukraine Crisis

ロシア・ウクライナ危機

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