金を組み入れた分散投資の時代



ロシアによるウクライナへの侵攻や米国消費者物価指数(CPI)が高止まりしている影響から、金価格は2020年のコロナウイルス感染拡大時の史上最高値に迫る水準まで上昇しました。世界情勢に対する不安が高まったときに「有事の金」として注目される金の特徴について、投資戦略部長である塚本卓治による解説をご紹介いたします。


塚本 卓治
投資戦略部長

考えられる3つのシナリオ

歴史を振り返ると、今回の危機のようにリスクが高まったとしても、地政学的なショックは短期間で収束に向かうこともありました。1-2ヵ月のうちに株価が調整する一方、解決の道筋が見えてくると、反転するという具合です。では、今回の危機をどうかというと大きく3つのシナリオが考えられます。

シナリオ1は、ロシアとウクライナの両国間で、建設的な協議が行われることで、問題が段階的に縮小するというものです。一部の経済制裁などは維持されたとしても、世界経済に対する影響はあまり大きくならないというものです。

シナリオ2は、消耗戦が長期化するというものです。この場合は、関係性の深い欧州がゆるやかな景気後退入りするとともに、米国でも景気拡大のペースが鈍化することが考えられます。また、インフレ率が長期的に高止まりすることで、消費者心理が圧迫され、消費・サービスの回復を遅らせる可能性があります。

シナリオ3は、紛争が拡大し、危機が深刻化することです。この場合は、世界的な景気後退が起こり、その影響は、エネルギー供給不足による工業生産への打撃や企業収益の減少、株価の下落がもたらされる可能性があります。


最大のリスクはインフレの急伸

複数のシナリオを想定しておくことは重要ですが、そうした中にあって目先の最大のリスクは、ロシアの石油とガスの供給が途絶えることによるインフレの急伸です。これは経済の勢いを失わせ、潜在的には景気後退にもつながる可能性があります。

今回の危機の以前からインフレの懸念はありましたが、景気は拡大傾向にあったことから、インフレさえ落ち着けば経済にとっては好ましい状況になると考えられていました。ただ、今回の危機がインフレの押し上げ圧力、さらには経済の下押し圧力になると、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)に陥るリスクは警戒しておく必要があります。

また、ここ数年の世界の潮流において見逃すことのできないのが、「米中対立に伴う供給網の構造的な非効率化」「リーマンショック以降の長期にわたる過剰流動性の供給」「脱化石燃料の動きを受けた供給不足の懸念」です。これらはいずれもインフレ要因となり得ることから、世界はインフレ・リスクを意識する時代に突入していたと考えることができるかもしれません。


分散投資の一環で金を組み入れる

過去の歴史を振り返ると、インフレを伴う期間(米国のインフレ率が年率2%を超え、かつ前年比でも上昇している期間)においては、金をはじめとしたコモディティ(商品)の相対的な価値が高くなる傾向がありました。インフレは、モノやサービスの値段が上がることであり、裏を返せば通貨の価値が下がることを意味します。そのため、インフレ下では現物があるこうした資産が注目されやすいというのが、インフレ下で金などが値上がりした背景にあったということです。また、このときは逆に株式などの価格は相対的に見劣りするものになっていたことも重要なポイントといえます。

金利が依然として低位にあり、その一方でインフレ率がそれを上回る実質マイナス金利の状況は、金の相対的な価値を高めるものといえます。その一方で、政情不安が和らげば、インフレや景気後退に対する懸念が和らぐことから、金の価格にも落ち着きが出てくる可能性はあります。しかし、様々なシナリオの中から何が実現するかは実際に起こってみるまではわからない部分も多分にあります。そのため、分散投資の一環で、金をポートフォリオに組み入れるという投資方針は、過去の経験則からは理にかなっているものであると考えることができます。




Russia-Ukraine Crisis

ロシア・ウクライナ危機

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