スタグフレーションの再来時に注目の株式戦略



米連邦準備制度理事会(FRB)による3月16日の利上げ決定が好調な米国経済を印象付ける一方で、ロシアによるウクライナ侵攻も影響した商品価格の高騰によるコスト・プッシュ型のインフレによる景気後退への不安が横たわっています。昨年後半以降、インフレや米国の金融引き締めが警戒されつつある中、相対的に底堅い動きを見せてきた公益株式について解説します。(関連セミナー「2022.3.25 スタグフレーションの再来時の世界公益株式投資」はこちら)


塚本 卓治
投資戦略部長

公益株式が注目される3つのポイント

米国では、2021年10月の米消費者物価指数(CPI)が、約31年ぶりの前年同月比+6%台となったことを受け、インフレが一過性のものではなく、金融引き締めの動きが強まることが意識されました。この先行きに対する不安感は株式市場に伝播し、それまで右肩上がりで上昇基調にあった世界の株式市場は不安定な動きを見せています。それまで上昇を続けていた株式市場の中にあって伸びを欠いていた公益株式は、これ以降、相対的に底堅い動きを見せました。

こうした公益株式の値動きの背景には、①相対的に割安なバリュエーション(投資価値評価)、②インフレへの耐性、③米国利上げ局面で上昇した経験という、3つを挙げることができます。


出遅れ感のあった公益株式に脚光

すでに述べたように、公益株式は他の業種、例えばここ数年来の上昇相場をけん引してきたIT関連株式などに比べて上昇幅は小さいものとなっていました。日米欧で行われてきた金融緩和は、成長力のある業界に潤沢な資金を流し込み、それが株価を押し上げてきた面がありました。それが金融相場が終わり、利益成長が株式市場の上昇をけん引する業績相場へと移行していくと考えられる中、緩和縮小が経済活動や景気の抑制されることを警戒する心理が働き、相対的に出遅れ感のあった公益株式に関心が向かったと考えることができます。


インフレ耐性を持つ公益企業

こうした点とともに公益株式が、商品価格や物価の上昇に対して、相対的にポジティブに反応してきたということもポイントといえます。公益企業には発電設備のような有形固定資産を持つものが多いだけでなく、原油価格などが上がると一時的なコストアップはあるものの、それを価格転嫁できる仕組みを備えている企業もあります。そのため、商品価格の上昇が幅広い企業にとってネガティブな影響をもたらすものである中にあっても、公益企業はこれに対して相対的に耐性があると考えることができます。

例えば、米国で規制下にある企業の場合、電力料金はその企業の持つ設備(有形固定資産)の金額に長期金利の水準や利益率等を勘案し算定、認可される一定のレートを掛け、それに燃料費などのコストを加えて決定されます。そのため、物価上昇時にはこれらが押し上げられることとなるため、公益企業にとっては増収増益要因となる傾向があるとされています。(公共料金の設定の仕組みは国や地域によって異なります)


米国の電力料金の設定例(簡略イメージ)

矢印は物価上昇時の傾向

※上記は規制下の米国公共料金設定の仕組みの一例を簡略化したものであり、必ずしもすべてを網羅するものではありません。

米利上げ局面での株価上昇の経験

過去20年余りの米国政策金利と世界の公益株式の動きを見ると、政策金利が上昇から横ばいの期間においては、株価は堅調に推移していました(詳細レポート「2021.12.17 米国政策金利引き上げと世界公益株式パフォーマンス」はこちら)。金融引き締めに動くタイミングというのは、概して景気が良い時期に行われることも多いことから株価も上昇することがあるため、この動きだけを以って、今回の利上げ時にも良いパフォーマンスになるということはいうことはできません。ただ、先に述べたように、バリュエーション面での魅力や商品価格上昇がポジティブに働き易い公益企業の特性も見逃すことができないポイントといえます。

ここまで述べたポイントなどが、投資資金を公益株式に振り向ける要因になっていると考えられますが、すべての企業が同じような動きをするわけではない点には注意が必要です。例としてあげた米国電力企業のように、多くの公益企業を取り巻く規制というのは、国や地域、米国では州によっても異なります。また、中には化石燃料ではなく、再生可能エネルギーを主力としている企業もあるため、商品価格の影響にもばらつきが生まれます。そのため、公益企業の選定にあたっては、各国の規制や企業の経営方針などにも目を光らせ、中長期的なリスク要因も加味することが重要になってくると考えています。




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ロシア・ウクライナ危機

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