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コモディティ価格の急騰にも、中国の消費者物価は安定推移
2021/06/28

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概要


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中国は世界にインフレを輸出

2021年5月の中国の2つのインフレ指数は、一方が事前予想を上回り、もう一方がこれを下回りました。卸売物価指数(PPI)は前年同月比+9.0%と4月の同+6.8%から更に上昇して予想を上回り、一方、消費者物価指数(CPI)は同+1.3%と4月の同+0.9%から小幅の上昇に留まって予想を下回りました。ピクテでは、他国に先立って中国は景気回復を実現しましたが、資源高によるインフレ圧力を消費者物価へ転嫁することが難しいと考えます。もっとも、輸出については状況が異なります。資源高によるコストの上昇分を製品価格に上乗せして海外の顧客に輸出することが予想されるからです。 

 

5月の卸売物価指数(PPI)は急騰したもののピークを付けた可能性がある

2021年5月の中国の卸売物価指数は前年同月比+9.0%と、2008年9月(の金融危機時)以来の大幅上昇となり、市場予想、ピクテ予想の双方を大きく上回りました。当指数の上昇率が予想以上に大きかったことは確かですが、上昇基調が維持されたことに意外感はありません。コモディティ市況と中国の卸売物価間には強い相関関係が見られることから、卸売物価指数の上昇は当指数の発表に先立って上昇していた資源価格によって明確に予想できたからです。

中国の卸売物価指数については、以下の2点が特に注目されます。

1点目は、コモディティ市況、中でも原油価格の動向を勘案すると、中国の前年比ベースの卸売物価指数は5月にピークを付けた可能性があるということです。過去には、コモディティ価格の前年比が中国の卸売物価指数に1ヵ月程度先行する状況が見られています。原油価格の絶対値は今のところ高水準で推移しているものの、前年比は、非鉄金属等、原油以外の主要資源価格と同様にピークを付けた可能性も考えられます。こうした状況はブルームバーグ商品指数にも表れており、5月の指数は前年同月比+46.1%と4月の同+48.4%を下回っています。

 

川上部門から川下部門への価格転嫁進まず

2点目は、5月の卸売物価指数が急騰した一方で、バリューチェーン上の価格押し上げ圧力には大きな格差が見られるということです。鉱業や素材等、川上部門の工場出荷価格が高騰する一方で、消費財等、川下部門の価格上昇は遥かに緩やかです。5月の産業用素材価格指数が前年同月比+12.0%と大幅に上昇したのに対し、消費財価格は同+0.5%と僅かの上昇に留まっており、川上部門から川下部門へのインフレ圧力が容易には波及しない状況が示唆されています。

2012年以降に見られるこうした現象は、中国経済のコロナ禍からの回復局面で一段と際立ったように思われます。米国等、一部先進国の今回の景気回復の特徴として挙げられるのは、危機を通じて、前例のない巨額の財政支出に因り家計の可処分所得が増加したことから、消費者需要が急速に回復したものの、需要の拡大が供給制約と相俟って、物価の上昇圧力をもたらしたことです。対照的に、早い段階でコロナウイルス感染拡大の封じ込めに成功した中国では、生産能力がほぼ完全に回復しており、供給制約は殆ど見られません。また、先進国の消費者のように政府からの給付金を受けるという恩恵に与ることのなかった中国の消費者の需要は、先進国に出遅れる形で緩やかな回復途上にあり、従って、中国の消費財メーカーは、原材料価格の上昇分を最終製品価格に転嫁するのが困難な状況です。

卸売物価指数の上昇分の転嫁が進まないことから、価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた5月の消費者物価コア指数は前年同月比+0.9%と、これまでのところ強い上昇圧力を示していません。

一方、同じく5月の消費者物価総合指数は、前年同月比+1.3%と、市場予想、ピクテ予想の双方を下回りました。燃料価格が同+21.3%と大幅上昇する一方で、豚肉価格は同-23.8%と前月から下落率を拡大しており、食品価格の伸び悩みが総合指数の小幅の上昇につながりました。サービス価格も同+0.9%と改善基調にはあるものの、引き続き低位に留まりました。消費者物価指数が予想外の小幅の上昇となったことから、ピクテでは、総合指数の2021年通年予想を、従来予想の前年比+1.7%から同+1.2%に下方修正しました。一方、コア指数については、前年比+1.4%と、従来予想を維持します。

 

中国は世界にインフレを輸出?

中国国内では、卸売物価指数から消費者物価指数への価格転嫁が進まないように見える一方で、中国の卸売物価指数と輸出価格、とりわけ中間財価格は、遥かに強い相関を示しています。資本財価格の変化率は、通常、輸出価格に3ヵ月程度先行することから、中国の卸売物価指数の大幅上昇は、恐らく、輸出製品価格に転嫁されており、向こう数ヵ月にわたってそうした状況が続く公算が大きいと考えます。

 

金融政策への示唆

中国の消費者物価指数は、総合指数、コア指数ともに、金融当局のインフレ目標を大きく下回る水準で、年内、緩やかな上昇を続けることが予想され、金融政策の正常化に向けて既に引き締めに転じた中国人民銀行の年内の政策に大きな影響を与えることはないと考えます。

一方、実体経済では、川上部門と川下部門の価格の乖離は、川下部門の企業収益を圧縮する公算が大きく、こうした状況に、金融当局が懸念を強めていることは明らかです。中国政府は、一部原材料の国内価格の一段の上昇を抑えようと、価格統制のための施策を導入しています。ここには、特定の鉄鋼製品を含む一部素材の国内供給の拡大や、現物ならびに先物市場における投機的取引の抑制策等が含まれ、資源価格の幾分の調整を促しています。こうした試みが持続的に影響を及ぼすか、今後の動向が注視されます。

 

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