Article Title
環境主義とESGの未来
2021/07/27

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

環境活動家のレナード・シュー博士は、マレーシア政府のアドバイザーを務め、避難民コミュニティと連携し、才能ある若手科学者の指導も行い、企業家の育成にも携わってきました。また、クアラルンプールに本社を置く多国籍コングロマリット「Sime Darby」の環境問題への取り組みにも携わり、気候リテラシーの向上をめざしてジャーナリストのトレーニングも行ってきました。



Article Body Text

チェンジメーカー   レナード・シュー博士

 

 

 

今年の夏、コーンウォールで開催されたG7サミットでは、気候変動が中心テーマとなりました。そして今年末には、国連気候変動会議COP26がグラスゴーで開催されます。シュー博士は「私たちの未来を決定づける出来事が1つあるとすれば、それはこの会議でしょう」と話しています。

 

シュー博士は気候変動の解決策の発見に彼の人生を捧げています。

低炭素社会の実現に向けた大きな変革を始めるために私達が突破しなければならない障害物とは何でしょうか? まず、シュー博士は、実現を期待されていることと、実現するための具体策との間に大きな隔たりがあると感じています。

 

「企業組織内で大きな変革を起こす必要があります。ESG(環境、社会、企業統治)は流行語になりつつあります。その結果、企業は従来の慣行を見直し、環境だけでなく社会全体への影響も分析するようになっています。」

 

「しかし、国レベルで行われている事と、企業レベルでおこなわれている事の間には乖離があるように感じられます。政府は45%の排出量削減を達成すると宣言していますが、企業レベルに掘り下げてみると、その多くは自分たちがやっていることが国の方針に沿っているか不明瞭なままだということが分かるでしょう。私たちが生き残る希望を持つためには、すべての関係者が一致団結する必要があります。」

 

この一致を妨げているものは何だと思いますか?彼の意見はこうです。

「気候科学の最大の問題の一つは、私たちが地上30,000フィート上空で話をしがちであるということです。私たちはたくさんの専門用語を使います。一般の人には理解できないでしょう。だからこそ、気候リテラシーの向上と支援が重要です。」

 

最近のシュー博士のプロジェクトの1つに、マレーシアでジャーナリストを育成し、気候変動の影響を一般の人々にも分かりやすく報道できるようにするというものがあります。では、気候変動問題に取り組むためには、他にどのような分野で飛躍的な進歩が必要なのでしょうか?シュー博士は、ESG格付けツールを調査した研究プロジェクトについて言及しています。

 

「これらのツールは、持続可能性をどれだけうまく取り入れているかに基づいて、様々な組織のパフォーマンスをランク付けするものです。これらのツールのもう一つの用途は、社会的責任のある企業、つまり正しいことをしている企業についての判断基準を投資家に教育することです。これは間違いなく成長分野であり、ファンドマネジャーがこのような活動を行っている事は非常に心強いことです。」と彼は述べています。

 

しかし、ESGツールの数が増えたことで、投資家の間に混乱が生じている、とシュー博士は考えています。「持続可能性について考えると、そこには非常に多くの異なるフレームワークがあります。そして、その結果は実に様々です。たとえば、A社の業績を図るために2 つのツールを使うと、まったく異なる結果が得られる可能性があります。これは、使用するベンチマークや基準が異なるからです。これでは方向性が定まりません。」

 

それでは、シュー博士は、環境問題の緊急事態において、どこに未来があると考えているのでしょうか?

「データサイエンスは、非常に重要かつ意義深いものになると思います。例えば、これまでは、気候に関する統計データを集めても、それが気象現象や天候パターンの変化として報告されるだけでした。しかし最近では、さまざまな業界の人々がこのデータを利用して気候の脆弱性、リスク、機会がどこにあるかを評価しています。」

 

「そして、異なるデータを活用してより高い洞察力を身につける機会を目にすることが、今後ますます増えていくでしょうし、今後ますます必要になってくると私は考えています。」

 

しかし、一人の人間が単独で取り組めることではないとも強調します。

 

「私たちは、何百ものデータセットを扱うことになるため、これらのデータセットの確度を高めるために、人工知能を適切に利用する必要があります。そのためには、適切なツールと技術が必要です。」

 

シュー博士の長年の研究から結論づけることができるものが1つあるとすれば、それは知的なコラボレーションが、地球の生存を保証する鍵である、ということでしょう。

 

レナード・シュー博士はまた、SDGs投資に関するWEFグローバル・フューチャー・カウンシルのメンバーであり、東南アジアのコミュニティ・チャンピオン、グローバル・シェイパーズの気候・環境運営委員会のグローバル・リードを務めています。

 

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら


MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


AI(人工知能)の普及に伴い、その将来性を精査する時が来ている

新興国市場:AI投資への別ルート

半導体業界が環境に及ぼす影響 

中国債券市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年3月)

新しい産業革命