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金相場は横ばいで推移の見通し
2021/10/08

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概要

金価格決定の主な要因と考えられる米国10年実質金利が数年ぶりの低水準を記録したにもかかわらず、金に大きな動きはありませんでした。

米国10年実質金利との相関は依然としてマイナスですが、金価格の実質金利の低下に対する感応度は過去に比べ低くなっています。

今後数ヵ月間、金は横ばいで推移する可能性が高いと考えています。公的な需要は減少するとみていますが、米国の実質金利が低い状態が続く可能性があるため、(今後数か月間は緩やかな上昇を予想していますが)信頼できる価値の貯蔵として金の魅力は継続します。



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米国10年実質金利の低下に対する金の反応の鈍さ

 

当社では、金価格決定の主な要因は投資需要であり、米国10年実質金利は、投資需要の主な要因であると考えています。その理由は、利回りのない金を保有することによる機会費用と価値の貯蔵としての魅力の両方を包含するためです。ここ数年の金価格と米国10年利回りの相関関係がマイナスであったことも、この見方を裏付けます。しかし、6月の米連邦準備制度理事会(FRB)政策決定会合以降、米国の10年実質金利が数年ぶりの低水準を記録したにもかかわらず、金は上がらずにいます。

 

 

図表1:米国10年実質金利と金価格の推移
期間:2012年から2021年9月
金価格(赤色、左軸)、米ドル/トロイオンス
米国10年実質金利(灰色、右軸)、%、逆目盛

出所:ピクテ・グループ

 

 

 

 

金価格と米国10年実質金利の相関関係は依然としてマイナスです。2021年6月にFRBがタカ派に転じて以降の実質金利の低下に対し、投資需要は増加しませんでした。それを裏付けるかのように、投資需要の鍵を握るETFの金保有量は、7月にやや減少しています。実質金利の低下に対する金価格の感応度が低下しているのは、FRBが資産購入の縮小に向けて準備を進めている中、投資家が金のエクスポージャーを増やしたくない可能性もあります。米国の10年物実質金利が緩やかに上昇するというシナリオを考えると、今後数ヵ月間はETFの需要が特に強くなるとは考えられません。

 

米国の10年実質金利が緩やかに上昇する、という当社のシナリオを考えると、今後数ヵ月間、ETFの需要が高まるとは考えられません。公的需要に関しても同様の結論となりました。上半期の中央銀行による金の純購入額は非常に大きく、これまであまり積極的でなかった中央銀行がかなりの量を購入しました。しかし、これらの中央銀行(特にブラジル、タイ、ハンガリー)が大量の購入プログラムを続けるとは思えません。また、ロシア、中国、トルコのような構造的な買い手が活発ではないを考えると、下半期には、公的需要が後退する可能性があります。

 

宝飾品需要は、2020年の第1~3四半期に達した非常に低い水準から回復しました。とはいえ、宝飾品の需要はパンデミック前の水準を下回っています。また、宝飾品需要は金の値ごろ感に非常に敏感であることも強調しておきます。そのため、金価格の変動に遅れる傾向があり、金価格の将来的な方向性を示す指標としては有用ではありませんが、そのことから、金価格が下落しているときには、宝飾品需要が金価格を支えることもあります。これは金価格が相対的に低い場合に特に当てはまります。現在は金が200日移動平均線に近づいているため、そのような状況ではありません。

 

 

 

 

今後数ヵ月間、金相場は横ばいで推移する可能性が高い

 

今後数ヵ月、金価格はほぼ横ばいで推移する可能性が高いと考えています。米国の長期実質金利が緩やかに上昇し、公的需要が減退する可能性があることが金価格の重荷となる一方で、実質金利が持続的に低い水準で推移するとの予想から、信頼できる価値の貯蔵としての金の魅力は継続すると思われます。また、インフレへの懸念や政策の正常化の難しさから、中央銀行による大量の流動性注入は、不換紙幣よりも金のような実物資産に有利な状況が続いています。

※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。

 

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