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ブランドとファミリー・ビジネス:勝利の組み合わせ
2021/11/26

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概要

証券取引所に上場している同族企業(ファミリー・ビジネス)は、一般に財務ファンダメンタルズが相対的に堅固であり、株価はファミリー・ビジネス以外の上場企業をアウトパフォームする傾向があることが、学術研究によって示されています。



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良好な株価の推移

ピクテ・アセット・マネジメント(ピクテ)は、創業者あるいはその家族(および親族)が議決権の30%以上を保有する上場企業を「ファミリー・ビジネス」と定義しています1

 

図表1:ファミリー・ビジネスの株価とMSCI全世界株価指数の推移

2006年12月31日=100として指数化
出所:ピクテ、2021年。ピクテは、ファミリー・ビジネスの株式ユニバースについてパフォーマンスのシミュレーション(データは2006年12月31日~2020年12月31日、米ドル・ベース)を行いました。過去データを用いたシミュレーションから得られたパフォーマンスは、将来の実績を示唆するものではありません。また、過去に投資家に提供されたことのない戦略のパフォーマンスを表しており、投資家が実際に獲得したリターンを表すものではありません。シミュレーションの結果は、過去のデータに基づいて構築されたモデルを遡及的に適用して算出したものであり、検証の能否や損失の可能性を勘案した、モデルに不可欠の前提に基づいています。

 

図表2:ファミリー・ビジネスを成功に導く要因

 

ファミリー・ビジネスの株価は、なぜアウトパフォームするのか?

ファミリー・ビジネスの優れた株価パフォーマンスには3つの理由があると考えます。1つ目の理由は、ファミリー・ビジネスにおいては、創業家の富と名声の殆どが自社に依拠しており、創業家と企業の間のインセンティブが密接に結びついている傾向が見られることです。このことは、ファミリー・ビジネスは、一般的な企業に比べてより多くの利益を再投資に振り向けることが多いという2つ目の理由につながります。3つ目の理由は、ファミリー・ビジネスは一般的な企業に比べて、議決権保有が安定的であるため、四半期の業績に捉われずに、長期的な視点に立った経営を行うことが可能となるということです。

こうした状況は、創業家の積極的な活動を促し、財務面での深いコミットメントや社会に恩恵をもたらす投資につながる可能性もあります。

 

ファミリー・ビジネスの優位性

創業家は、企業ブランドの育成と構築を行う上で、競争優位性の源泉となり得ます。

インターブランド社によれば、ブランド価値の測定は、ブランドがファミリー・ビジネスにとっての中核を成すものであることを示しています。ブランド価値の世界ランキングのトップ100社のうち、52%がファミリー・ビジネスであり、アマゾン、ルイ・ヴィトン、トヨタ、BMW、サムスン、シャネルといった各社が上位を占めています。

創業家の構成メンバーのアイデンティティはブランドと密接につながっており、従って、ブランドを守ることが「中核価値」となっています。

一方、伝統、安定性、利害関係者との長期的な関係等、ファミリー・ビジネスという言葉から連想される価値は、ブランディングに際して使用され、事業を通じて広く周知させることが可能です。長年守り抜いてきた価値や伝統は、その特性ゆえに、極めて重要であり、正真正銘のブランドを構築し育成する過程で、確立されたファミリー・ビジネスが優位性を発揮することから、競合他社による模倣は困難です。現在創業家の6代目がCEOを務めるエルメスが良い例です。

ファミリー・ビジネスは、一般的な上場企業に比べて長期的な観点での経営が行われやすいことから、その企業のすべてのステークホルダーとの間で、信頼とパートナーシップに基づいた長期的な関係を構築することが可能です。平均的な上場企業と比べて、経営陣が安定していることも、一貫性のあるブランドの管理と価値の伝達を可能とする要因になります。

 

図表3:ブランド価値ランキング上位100社

出所:インターブランド、「ベスト・グローバル・ブランド」2020

 

ブランドの背後にいる人

 企業の背後に人の顔が見えること、または、事業を取り巻く状況いかんに関わらず、企業に責任を持つ創業家の存在があることは、組織に対する信頼を高めるものです。創業家の名声がそのファミリー・ビジネスと表裏一体であるということも、優れた顧客サービスを提供するためのドライバーとなり得ます。

 ファミリー・ビジネスにおいては、あたかも従業員も家族の一員であるかのような一体感が醸成される傾向があります。カナダの情報技術(IT)サービス大手のCGIは、従業員を「メンバー」(家族の一員)と呼んでいます。ファミリー・ビジネスが、事業が好調な時も不振の時も、そのステークホルダーを支えていることは、地域や社会全体に対する貢献を通じて確認することが可能です。また、こうした状況が従業員のモチベーションや、その企業に対する公的なサポートにおいてプラスの効果を及ぼす可能性があります。

 ファミリー・ビジネスの中には、新型コロナウイルスの感染拡大期に、地域を支援するために行動を起こした企業もありました。PWCは、2020年3月から6月までのわずか3ヵ月間で、209人の億万長者が、ウイルスの世界的大流行(パンデミック)対策のための資金として総額72億ドルを寄付したことを確認しています。

 こうした活動が長期的な慈善活動の一部となっているのは、創業者および創業家が産業界の理解を促してきたからです。医薬品大手のロシュは、創業以来、世界自然保護基金および赤十字と連携して慈善活動を行っており、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、王興ファンド、ベゾス・アース・ファンドは、それぞれ、マイクロソフト、美団、アマゾンの名声を高めています。

ESG(環境・社会・企業ガバナンス)投資の隆盛も、こうした活動が従来以上に注目を集める要因となっています。ESGリサーチに特化するサステナリティクス社が企業の不祥事や違反を調べた「物議を醸す企業の調査」は、ファミリー・ビジネスが環境や社会の課題に真剣に取り組んでいることを示しています。

 ブランドを通じてポジティブなインパクトを社会に与えることで、ブランドの名声を高め、より社会に対してプラスのインパクトを与える「ポジティブなブランド認知の連鎖」は、ファミリー・ビジネスのみが有するものではありませんが、ファミリー・ビジネスは、相対的に長い社歴を有しており、伝統を築き、固有の手法を通じてこれを確立しています。

 ファミリー・ビジネスとブランドの関係を理解する上で、信頼、信憑性、伝統、安定性等の中核的価値が高い評価を得ているような業種において、ファミリー・ビジネスが頂点に上り詰めている分野が多いということは驚くべきことではありません。

 創業家一族がブランドの重要性を誰よりもよく理解しているのは、ブランドに対する社会的反響を直接受ける立場にいるからです。

 

図表4:物議を醸す企業の調査

Environmental Controversies: 物議を醸す環境面での課題、Social Controversies: 物議を醸す社会面での課題
出所:ピクテ、サステナリティクス、2021年6月
図表のチャートは、事業活動が環境に及ぼす負荷、製品やサービスが環境に及ぼす負荷、サプライチェーンが環境に及ぼす負荷の3つの基準で測ったファンドの平均スコアを表しています。物議を醸す課題には、5を最低格付けとした1~5の格付けを付与しています。
註1:経済協力開発機構(OECD)加盟国において、株主総会で行使された議決権比率は平均60%程度であるとされ、議決権を30%保有することは過半数の議決権を有することと実質的に同義であることを意味します。
註2:ピクテが定めたファミリー・ビジネスの基準(以下の1)から3))を満たす約500社と2007年以降のデータに基づいてユニバースを構築しました。
ユニバース構築の3つの基準
1)市場:先進国市場については時価総額に上限を設けず、新興国市場については時価総額を最低100億米ドル以上とする。
2)株式保有:創業者世代および第2世代以降が、議決権の30%以上を保有していることとする。
3)流動性:銘柄の日次売買代金を500万米ドル以上とする。
次に、ユニバースのパフォーマンスのシミュレーション(データは2006年12月31日以降、米ドル・ベース)を行いました。1銘柄の組入れの上限は2%とし、四半期毎のリバランスを行って、ユニバースの構成銘柄がファミリー・ビジネスの基準を満たしているかどうかを確認すると同時に、新規の組入れを考慮しました。過去データを用いたシミュレーションには手数料または取引コスト控除前の数値を用い、外部からのキャッシュフロー(外部資金の流入)は想定していません。シミュレーションから得られたリターンは、過去に実現されたものではなく、グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)に準拠していません。過去データを用いたシミュレーションは、将来の実績を示唆するものではありません。また、これまで投資家に提供されたことのない戦略のパフォーマンスを示唆するものであって、投資家が実際に獲得したリターンを表すものではありません。シミュレーションの結果は、過去のデータに基づいて構築されたモデルを遡及的に適用して算出したものであり、検証の能否や損失の可能性を勘案した、モデルに不可欠の前提に基づいています。
MSCI全世界株価指数は比較の目的のためのみに表示したものであり、戦略が当指数に制約されることはありません。換言すると、当指数はポートフォリオ構築に影響を及ぼさず、投資ユニバースは指数の構成銘柄以外の銘柄を含みます。当指数以外のグローバル株価指数も、当指数と同様に適切です。

著者:シリル・ベニエ、シニア・インベストメント・マネージャー、アラン・カフォール、シニア・インベストメント・マネージャー

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