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テーマ株式の株式ポートフォリオへの組入れ
2021/11/26

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概要

テーマ株式は、資産配分の枠組みいかんにかかわらず、投資家のポートフォリオに組み入れることが可能な「主流」の資産です。

目次
01 人気上昇中のテーマ株式   
02 サテライト運用におけるテーマ株式
03 グローバル株式運用におけるテーマ株式
04 分散を徹底したテーマ株式ポートフォリオ
05 議論および展望



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01 人気上昇中のテーマ株式

かつては「ニッチ」な投資と見なされたテーマ株式投資は、ここ数年で「主流」になりつつあります。長期のマクロ経済トレンド、先端技術や環境などのトレンドを投資に活かすテーマ株式投資に関心を示す投資家が増えています。

 

とはいえ、伝統的な資産配分の枠組みを用いて構築されたポートフォリオにどのようにテーマ株式を組み込むか、という課題は未だに解決されていません。ピクテは2019年、既に確立されているポートフォリオ構築理論と最適化ツールを用い、こうした課題に対応するためのガイダンスを発表しました。

 

ガイダンス策定の目的は、①資本市場理論の前提を見直しピクテの分析に組み込むこと、②ポートフォリオの一部として複数のテーマ株式を組入れることについて、ピクテの見解とその経緯を説明すること、の二点です。

ピクテは、以下のどの手法を用いても、分散化されたポートフォリオにテーマ株式を組み込むことが可能だと考えます。テーマ株式は、以下のいずれとしても機能することが可能だからです。

・       コア・サテライト運用のサテライト資産

・       グローバル株式ポートフォリオの構成資産

・       分散を徹底した株式ポートフォリオに対する代替

 

 

02 サテライト運用におけるテーマ株式

投資家は、コア・サテライト運用を行う際に、テーマ株式がサテライト資産として極めて効果的に機能することに気付くことでしょう。

 

コア・サテライト運用では、ポートフォリオを二つの異なる部分に分けています。「コア」部分は通常、株式や債券等の伝統型資産で構成し、分散を徹底します。また、標準的な資産配分の枠組みを用い、複数の資産クラスから市場リターンを獲得することを目標とします。一方、「サテライト」部分では、伝統的な資産配分の枠組みから外れた資産に資金を配分します。サテライト部分がポートフォリオ全体に占める比率は低く、通常、多くて全資産の25%程度です。サテライト投資は、投資家の長期見通しを示す手段、あるいは、短期的に生じる投資の機会を捉えるために行われます。いずれの場合も目的は、プラスアルファ(市場を上回るリターン、または市場に依存しないリターン)の獲得、あるいは、リスクの分散です。

 

サテライト資産としてのテーマ株式の実績はどのようなものでしょうか。図表1はグローバル株式(MSCI全世界株価指数)とグローバル債券(ICE BofA 世界国債指数)にピクテのテーマ株式を1つ組み合わせたポートフォリオのリターンのシミュレーションと最適化の結果を示しています。目標とするリターンとリスク許容度が高いポートフォリオでは、投資資産の20%を上限としたテーマ株式の組み入れが有効であることを示しています。

 

 

図表1:代表的なテーマ株式への配分
サテライトを構成するテーマ株式の最適配分
横軸:トータル・ポートフォリオの目標リターン

出所:ピクテ・グループ

 

 

上述の分析結果は、テーマ株式運用が追求するベンチマーク指数に捉われない運用手法を用いて行う集中投資の有効性を証明するものだと考えます。

 

テーマ株式運用では伝統的なセクター分類にこだわらずに専門事業に特化する企業に投資を行うため、投資対象銘柄群(投資対象ユニバース)が、MSCI世界株価指数等の主要なグローバル株価指数の構成とは明確に異なります。また、ベンチマーク指数に捉われない運用を行うため、機動性が増します。その結果、構築されるポートフォリオには既存の株価指数との類似点が殆どありません。

 

 

03 グローバル株式運用におけるテーマ株式

コア・サテライト運用は人気が増しているとはいえ、投資家の大半は地域別の資金配分を行っており、投資対象ユニバースを、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋等、広い地域群に分類しています。

 

一方、こうした地域配分と並行して、「グローバル株式配分」を創るべきとの主張も見られます。

 

ある地域のなかでの市場間のリターンの相関は一般的にかなり高いことから、テーマ株式のように他とは明確に異なるグローバルな資産クラスをポートフォリオに加えることで、リスクとリターンの分散が可能となります。

 

テーマ株式戦略の中には、国あるいは地域別の資産配分を補完するものとして、他の戦略よりも有効に機能するものが認められます。最も有効な戦略は、複数の投資テーマに同時に投資することで、より広範囲の分散を可能とする戦略です。こうした特性を有する戦略は、グローバル株式ポートフォリオの資産配分で相対的に高い比率を占めることが可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図表2:グローバル株式運用に占めるテーマ株式の配分

※イメージ図
出所:ピクテ・グループ

ピクテでは、顧客別の専用ポートフォリオを構築する際に、2つ以上のテーマ株式戦略を組み合わせることが有効であることを認識しています。こうしたポートフォリオの優位点として挙げられるのは以下の2点です。

 

最初の優位点は、複数のテーマ株式ポートフォリオをグループとして組み合わせることが効果的に機能するということです。一部のテーマ株式は同じ長期的なトレンドに基づいていながら、補完的な関係にあり、必然的に相性が良いからです。投資家は、こうした複数の戦略を1つの大きな投資と捉えることで、投資の範囲を広げつつ、同一のメガトレンドを活用する機会が得られることになります。

 

次の優位点は、分散によるものです。テーマ株式戦略を組み合わせることで、リターンとリスクを分散し、リスクリターン特性を向上させたポートフォリオを構築することが可能です。

 

このことは、複数のテーマ株式を組み合わせたポートフォリオのパフォーマンス分析で証明されます。分析に際して選んだ戦略の組み合わせは、図表3の通りです。

 

ポートフォリオの最適化の分析に際しては、リスクが中程度の組み合わせにするため、高リスクと低リスクの戦略を組み合わせます。分析に用いた組み合わせは、こうしたポートフォリオが広範な資産配分に際して有効性を示すために、標準的な最適化の手法に基づいて設定したものです。なお、組み合わせは、これがすべてではありません。また、組入比率は、推奨比率ではなく、おおまかな水準を示唆したものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図表3:選択したテーマ株式戦略のリスク特性

出所:ピクテ・グループ

 

 

こうした戦略が分散の効いたポートフォリオ内で果たす役割は、図表4で紹介するポートフォリオ最適化ツールを用いて示すことが可能です。グローバル株式(MSCI世界株価指数)、グローバル国債(Bloombergグローバル総合債券指数)およびテーマ株式の組み合わせの3つで構成されるポートフォリオの有効フロンティアは、2017年1月から2021年2月のデータを用いて得られたものであり、リスクリターン目標を中程度(年率目標リターン:4.9%)としたポートフォリオ構成を示しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

図表4:テーマ株式を組み合わせた、中程度のリスクリターン特性を持つポートフォリオの最適化

出所:ピクテ・グループ

 

 

組入比率は前提の細かい差異に極めて敏感であることから、特定の配分比率に捉われずに導いた結論は、テーマ株式の組み合わせに高い比率を付与することが可能であり、グローバル株式よりも高い比率を示す場合もあるということです。このことは、分散の効いたポートフォリオの場合、テーマ株式の組入がグローバル株式ポートフォリオの相当な部分を構成する可能性があるという見方を裏付けます。

 

テーマ株式を組み合わせることでポートフォリオ内のセクターの分散が高まるというメリットがあります。図表5の通り、テーマ株式の組み合わせによって、MSCI世界株価指数を構成する11業種のうち、8から10セクターへの投資が可能となります。市場の集中度を測るハーフィンダール・ハーシュマン指数が示しているのは、当該ポートフォリオの場合、4つから7つのセクターに等比率で投資したポートフォリオと同等で、グローバル株式ポートフォリオの場合は8つのセクターに等比率で投資したポートフォリオと同等である、ということです。従って、テーマ株式の組み合わせは、通常、グローバル株式ポートフォリオと同じ水準のセクター分散は得られませんが、それでもなお、セクター内の分散が十分に効いているということを意味します。

 

 

 

 

 

 

図表5:テーマ株式戦を組み合わせたポートフォリオのセクター構成および集中度

出所:ピクテ・グループ

 

 

 

 

ポートフォリオの集中、または、分散の度合いを測る手段には、スタイル分析もあります。スタイル分析の結果を示した図表6が示唆しているのは、テーマ株式をどのように組み合わせてもすべてのポートフォリオでグロースファクター、および、サイズ(時価総額)ファクターにバイアスがかかる一方で、その他のファクターについては大きな差異が見られるということです。

 

 

 

 

 

 

 

図表6:スタイル・ファクター・エクスポージャー:テーマ株式を組み合わせたポートフォリオとMSCI全世界株価指数の比較

出所:ピクテ・グループ

 

 

 

テーマ株式の組み合わせ、組み合わせの効果

■    ジェネレーション・シフト

ピクテ・ヘルス、ピクテ・デジタル、ピクテ・プレミアム・ブランド、ピクテ・ヒューマン(各25%)

 

ベビーブーム世代とエコーブーム世代(ミレニアル世代)は、経済に極めて大きな影響を与える世代です。4つの戦略の組み合わせは、高齢者介護や退職後のレジャーと、デジタル・サービス消費の両方に着目した組み合わせです。

 

■    気候変動

ピクテ・クリーンエネルギー(20%)、ピクテ・ティンバー(20%)、ピクテ・ニュートリション(30%)、ピクテ・ウォーター(30%)

 

ここでは、再生可能エネルギー、エネルギー効率、二酸化炭素の回収および貯蔵、資源集約度の低い食料制度等の気候変動対応ソリューションや、効率的な水の供給を通じた気候の強靭性(レジリエンス)に関連するソリューションに投資を行います。

 

■    21世紀のインフラストラクチャー

ピクテ・デジタル、ピクテ・スマートシティ、ピクテ・クリーンエネルギー、ピクテ・ウォーター(各25%)

 

ここでは、未来の都市社会のニーズを満たすデジタル技術、クリーンな環境技術と新しい産業への応用および素材に着目した投資を行います。

 

■    ハイテク・イノベーション

ピクテ・デジタル、ピクテ・セキュリティ、ピクテ・ロボティクス、ピクテ・バイオテック(各25%)

 

ハイテク・イノベーションは、現代社会が抱える課題の解決のため、長期的な高成長が見込まれる分野に継続的にソリューションを提供します。

 

 

 

 

 

04 分散を徹底したテーマ株式ポートフォリオ

テーマ株式戦略は、セクターに横断的な投資を行うグローバル株式ポートフォリオの代替として機能し、当該ポートフォリオに置き換わることが可能です。

 

テーマ株式は、構成要素が広がるにつれて、数や範囲も拡大の一途です。こうした状況が意味するのは、テーマ株式投資を行うことで、既存の株価指数を参照する投資と同等の分散が期待出来るということです。

 

このことを説明するために、ピクテのテーマ株式戦略の中でも特に広い分野に投資する二つの戦略の分析を行いました。ピクテ・グローバル・メガトレンド・セレクション(GMS)は、弊社の12のテーマ株式に等比率投資を行い、ピクテ・グローバル・セマティック・オポチュニティーズ(GTO)は、確信度の高い銘柄に集中投資を行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図表7:分散を徹底したテーマ株式ポートフォリオの最適配分

(GMS = ピクテ・グローバル・メガトレンド・セレクション)

出所:ピクテ・グループ

 

ここで用いた手法は、分散の効いた各種のテーマ株式に応用することが可能です。

図表7は、第2節の分析で使用した最適化ツールを用い、グローバル株式、グローバル国債およびピクテ・グローバル・メガトレンド・セレクション(GMS)で構成されるポートフォリオに個々の目標リターンを設定して行った最適資産配分の結果を、また、図表8は、ピクテ・グローバル・セマティック・オポチュニティーズ(GTO)の分析結果を示しています。

 

グローバル株式とGMSの配分が、目標リターンの高低にかかわらず、ほぼ等しいということは、分散に関していえば、テーマ株式の組み合わせと伝統的な地域市場別配分にほぼ変わりがないということを示唆しています。一方、GTOは相対的に集中度の高いポートフォリオであることから、株式全体に占める割合は5分の1~3分の1(20%~33%)、リスク特性は、それぞれ、中程度から高程度となっています。この分析結果も、分散の効いたテーマ株式がポートフォリオのコアとしての構成資産と見なされるとの見方と一致します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図表8:分散を徹底したテーマ株式ポートフォリオの最適配分

(GTO = ピクテ・グローバル・セマティック・オポチュニティーズ)

出所:ピクテ・グループ

 

 

 

05 議論および展望

本稿に示した分析は、分散ポートフォリオにテーマ株式を組み入れることの有効性を裏付けるものと考えます。

 

分析の弱点となる可能性があるのは、過去に例を見ない超低金利に主に起因して、市場の上昇局面が殆ど途切れることなく続いた時期のデータを用いていることです。

 

テーマ株式は、こうした局面でグローバル株式を上回る平均リターンをあげていますが、分析結果は将来予想を保証するものではありません。また、最適化にあたっては、テーマ株式のグローバル株式に対する優位性を想定していません。ポートフォリオの予想リスクが上昇した場合、テーマ株式の高位の組入れを正当化するために要求される超過収益は年率僅か25ベーシスポイント(0.25%)です。

 

分析結果が無効となるのは、テーマ株式と、主流である資産クラスのリターンの相関、およびテーマ株式のリスクの両方が大幅に変わる場合です。

 

こうした状況が実現する可能性は否めませんが、そのようなシナリオが実現する可能性は極めて低く、従って、テーマ株式は、多数の構造的な理由から、特異なリスクリターン特性を有し続けると考えます。

 

先ず、テーマ株式の投資ユニバースそのものの特性が挙げられます。伝統的な株価指数に比べて大型株の組入れがはるかに少ないということは、重要な意味合いを持っています。

 

専門分野に特化した事業を展開する企業の株式は、事業を多角化した大企業の株式を長期的に上回ることを裏付ける証拠が多数散見されます。大企業は「コングロマリット・ディスカウント」の影響を受けます、言い換えると、事業の多角化が進んだ企業の価値は、各事業部門の価値の合計を下回ります。

 

これに対し、専門事業に特化し、「ピュア・プレー」とも呼ばれる企業は、戦略的優位性について大企業よりも遥かに明確な考えを持ち、最も高い成長が見込まれる分野に集中的な投資を行います。こうした企業の資本配分は相対的に効率的で、従って、その優位性が時間の経過に連れて株価に反映されていくと考えられます。ピクテのテーマ株式戦略は、こうした特性を活かすよう設計されたものであり、各ポートフォリオの構築に明確なルールを設定しています。ポートフォリオの投資対象銘柄が組入れ銘柄としての資格を得るには、「セマティック・ピュリティ」が高水準にあることが要件です。「セマティック・ピュリティ」とは、ピクテが独自に設定した基準で、特化する事業が企業の事業全体に占める比率が十分に高いかどうか、また、テーマに沿ったものであるかどうかを測る指標です。

 

テーマ株式としての資格があるとみなされた企業群には、投資リターンに係る魅力的な特徴があります。事業活動が専門分野に特化したものであることから、MSCI世界株価指数や、S&P500種株価指数等の主要株価指数の動きを左右する大型で事業を多角化した多国籍企業との共通点は殆どありません。

 

こうした特性は、ポートフォリオにも反映されています。テーマ株式の投資手法は株価指数に捉われないため、構築されるポートフォリオと主要株価指数には、類似性が殆どなく、あったとしてもごく僅かです。主要株価指数の非構成銘柄がテーマ株式ポートフォリオに占める比率が高いことが、このことを裏付けています。

 

テーマ株式のリスクとリターンは、市場の局面によって変動する可能性はあるものの、株式市場の循環全体を通じてみると、その特性によって、相対的に予測可能な特性を備えたポートフォリオが構築されます。

 

 

※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


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