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ストレスト債およびディストレスト債の企業債務の局面に応じた投資機会の発掘
2021/12/02

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概要


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債務不履行率(デフォルト率)が大西洋を挟む米・欧の両市場で前例のない低水準に留まっていることから、発行体の財務状況の悪化により価格が著しく下落したディストレスト債市場は、極めて落ち着いた状況にあると考えても許されるかもしれません。

 

このような環境においても、市場が再びストレスに晒された場合の態勢を整えつつ、投資機会を発掘し、これを実行する戦略があると考えます。このような戦略には、短期売買を実行するために、機敏に、アクティブに運用することや、企業の資本構造全体に買い建て(ロング)および売り建て(ショート)ポジションを構築し、投資を実行する能力が求められます。

 

ハイイールド債のデフォルト率は、新型コロナウイルス感染拡大直後に僅かに上昇したものの、足元では、米国で2%前後、欧州で1%前後と、この10年間で最も低い水準近辺に低下しています。

とはいえ、現状は、湖に例えると、水面下で底流が渦巻く状況にあり、年間の利払いコストを利益で賄いきれないゾンビ企業の数は少なくありません。同時に、資金の出し手(債券の買い手)を保護するコベナンツ条項が殆どまたは全く付かない社債の発行が起債全体に占める比率は、欧州市場の場合、90%前後に達しています。信用格付けがB格からCCC格までの非投資適格企業の利益に対するネットの負債が増加基調にあることは、利益そのものが大幅に下方修正されている状況を考えると、特に懸念されます。

 

ハイイールド債市場では、こうした脆弱性が鮮明です。デフォルト率は低くても、財務面でのストレスに晒される企業数が増加しており、こうした企業が発行する社債の国債に対する利回り格差(利回りスプレッド)は、ディストレストの状況にあると見なされる1,000ベーシスポイント(10%)は下回っても、欧州市場の長期平均とほぼ等しい300ベーシスポイント(3%)を上回ります。また、ゾンビ企業の数は地域を問わず、増加の一途です。

 

企業の予想デフォルト率は、デフォルトが殆ど確認されたことのない公益セクターと、デフォルト率が最も高いホテルおよびメディア・セクターを両極として、業種セクター間の格差が拡大しています。

 

こうした状況は、ロングポジション、ショートポジションとも構築出来る弊社のような投資家に、肥沃な土壌にも例えられる投資の好機を提供しています。例えば、ストレスト企業がディストレスト状況に陥る、または経営破綻することを想定した場合には、社債のショートポジションを構築し、想定が現実となった場合に、企業再編の見通しに基づいて、買戻しを行うことが可能です。また、資本構造全体に投資を行うことから、株式と債券間の、または同一債券の異なるトランシェ間の裁定を行うことも可能です。

 

ピクテでは、現在の市場循環において慎重な投資姿勢を一段と強めています。市場のボラティリティは上昇しています。また、各国中央銀行は新型コロナウイルスのパンデミック以降、湖の満面の水にも例えられる巨額の資金を供給し続けてきましたが、その一部を回収し始める態勢を整えています。家計や企業を対象とした政府支援金の給付が終了しつつあり、サプライチェーンの混乱やコモディティ価格の急騰を背景に、インフレ圧力が強まっています。また、不動産セクター等、特定のセクターに留まらず、幅広いセクターに対して政府当局の締め付けが強まる中国に限らず、他国の政府も企業を標的としています。この間、新型コロナウイルスの感染拡大が経済の構造変化を加速させており、電子商取引の導入が急速に進み、技術効率性が向上し、脱グローバル化が促されています。

 

こうした要因を受け、足元のディストレスト状況はさらに深刻化することが予想されます。また、ここ数年、回収率1が低下基調にあることが懸念されるため、ディストレスト企業の評価はこれまで以上に慎重に行う必要があると考えます。同時に、流動性の高い資産を発掘することが重要です。流動性の低い資産に投資することがいかに損失を拡大させるかということが新型コロナウイルスによって明確に示されたからです。

 

信用ファンダメンタルズの十分な調査やリスクおよび流動性の慎重な管理を行って、資本構造全体にロングポジション、ショートポジションの双方を構築する積極的な運用能力を備えていれば、状況の悪化が予想される向こう数四半期にも、企業債務の局面のいかんにかかわらずストレスト債およびディストレスト債投資の機会を発掘出来ると考えます。

 

 

 

 

1回収率:回収率は、デフォルト時に債券の元本および未収利息が回収される程度を、債券の額面に対する百分率(%)で示した数値です。

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