Article Title
中国の経済成長がもたらす投資機会を株式のロングショート戦略で捉える
2021/12/06

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

株式市場が急変する局面で、中国の構造転換に因る経済成長がもたらす投資機会を捉えるには、ロングショート戦略が適切だと考えられます。



Article Body Text

中国株投資は、豪華なクルーズ船の旅ではなく荒波を手漕ぎの小舟で進むようなものだと考えます。

最近の市場を取り巻く環境は、規制当局による締め付けの他、流動性の縮小やGDP成長率の鈍化等、悪材料が相次いています。

 

市場を警戒することは正当化されるにしても、高波に挑む気概を持った果敢な投資家に絶好の投資機会が訪れていることも確かです。ピクテのロングショート戦略の強みは、銘柄選択の枠組みを中国政府の重点戦略に融合させることで、市場が提供する投資機会を活用しつつ想定されるリスクを軽減することが可能だということです。

 

高成長性が期待される分野の1つが電気自動車(EV)です。政府の補助金が市場をけん引してきた欧州とは異なって、純粋な長期需要が市場の拡大をもたらしていることが注目されます。中国は、従来型のガソリン車では、遥かに先を行く欧州企業に大きく遅れを取ってきたものの、電気自動車がグローバル市場を席捲する絶好の機会になると見ているのです。政府目標の実現に向けた進捗状況は順調で、国内に占める国産車の比率は、ガソリン車の40%に対し、電気自動車の場合は70%前後に達しています1

 

電気自動車の増加は、リチウム電池の需要が増えることを意味します。中国は、素材、部品あるいは電池セル等、リチウム電池のサプライチェーン上の広い分野で圧倒的な優位を占めています。現在、世界の電気自動車の普及率は4%で、155ギガワット時のリチウム電池が必要とされています2。これが50%に達する時点(2020年代末までに実現すると見ています)では、現在の25倍の電池容量が必要となります。

 

消費セクターでも、投資機会が増えつつあります。消費者の好みが海外ブランドから国産ブランドにシフトしていることや、政府が国民の生活の質の向上を目指していることから需要は拡大基調です。スポーツウェア市場に占める国産ブランドの占有率は、2012年の14%から2020年には22%に上昇しているという調査結果もあり、化粧品についても同様のトレンドが認められます。品質の改善が急速に進んでいますが、国産ブランドは中国の消費者の好みを熟知していることや購買後のアフターサービスが可能であるという強みも持っています。

 

医療分野にも投資機会が偏在し、中国の競争優位性が強まっています。国内各地の大学からは、毎年約470万人のエンジニア候補が卒業し、技術関連産業に大きく貢献しています3。中国の医療技術セクターでは、ロボット支援手術や高性能呼吸器の開発に、医療の知識と高度製造業技術が活用されています。

 

インターネットセクター等、その他の分野は、見通しが相対的に不透明であることから、投資家には機動的な対応が求められます。ロングショート戦略ポートフォリオに占めるインターネットセクターの組入れは、株価指数の構成比率とほぼ変わりませんが、ロングポジションとショートポジションの双方を構築することから、巨大IT銘柄の一部については、指数に比べて概ね慎重な組入れとなっています。一部の企業は中国の独占禁止法に抵触する可能性があると思われます。また、電力不足時の減産や電力使用の抑制を命じられる可能性があり、二酸化炭素排出量の削減目標を達成するよう地方政府に圧力がかかる公算も高いと思われることから、コスト増や成長鈍化の可能性も考えられます。政局が混乱し、規制が強化される局面では、リスク管理や資本の保全に現実的な姿勢で臨むことが重要なのは当然ですが、経済の構造転換に因って中国だけが提供できる投資機会が多数存在することも事実だと考えます。

 

 

 

1: 中国汽車工業協会

2: ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス、2021年4月

3: 世界経済フォーラム

 

 

 

※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです。

 

個別の銘柄・企業については、あくまでも参考であり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。


●当資料はピクテ・グループの海外拠点からの情報提供に基づき、ピクテ・ジャパン株式会社が翻訳・編集し、作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら


MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


中国債券市場の振り返りと見通し(2024年2月)

新興国社債市場の振り返りと見通し(2024年2月)

持続可能な世界に向かう「微生物の道」

暴落しても退場すべきではない ~ 中国株式が、グローバル株式ポートフォリオの組入資産としてのポジションを確保すべき理由 

アルツハイマー病の治療薬を探す長い旅

無リスク資産に投資資金を置き続けることのリスク