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プライベート・エクイティ共同投資に参加する意義
2022/04/14

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概要

“共同投資”という選択肢が、伝統的なプライベート・エクイティ・ポートフォリオにおいて、なぜ魅力的な代替アプローチとなり得るのかについて解説します。



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プライベート・エクイティ(PE)市場の拡大が続いています。(オルタナティブ投資に特化したデータ・プロバイダーである)プレキン社によれば、世界のPE市場の運用資産残高は5.3兆米ドルに達しており、2026年には、11.1兆米ドルに倍増することが予想されています。PE投資のメリットとしては、(上場株式投資と比べて)相対的に高いリターンや分散効果を得られる可能性が挙げられますが、一方、デメリットとなるのが、手数料の高さ、透明性の低さ、資金投下に時間がかかることや収益の果実を摘み取るまでにも時間を要するということです。

しかしながら、こうしたデメリットがさほど大きくないのが、プライベート・エクイティ共同投資です。共同投資とは、PEファンド(ジェネラル・パートナー(GP)、いわゆる運用会社)が、当該PEファンドの一部の限定された投資家(リミテッド・パートナー(LP))に対して、特定の投資案件にかかるファンドとの共同投資の機会を提供する仕組みです。

共同投資ファンドは、過去20年間で、1,750億米ドル強の資金を調達しており、PE市場全体の発展につれて、拡大を続けていくことが予想されます。

GPにとって共同投資の機会を提供する主なメリットは、規模が大き過ぎて、通常、ファンド単独では取り組むことができない案件にも、投資が可能になることです。PEファンドは、過度な集中投資を避けるため、単一企業への投資に上限を設定していることが一般的ですが、他方で、PE市場の拡大につれ、大型案件は増加の一途です。

一方、LPにとっての主要なメリットの1つとして挙げられるのが、優良な未上場企業への直接投資が可能となることです。ファンド・オブ・ファンズを通じて数百社の企業に分散投資することとは対照的に、共同投資戦略では、(通常、25社から30社に)投資対象を絞り込み、国や業種・セクターの分散を図りながらも、集中投資を行ないます。

 

図表1:PE市場の急成長

世界のPE市場の運用資産残高(兆米ドル)

出所:プレキン社、「プレキン・オルタナティブ・グローバル・レポート、プライベート・エクイティ&ベンチャー・キャピタル編」2022年版

 

共同投資戦略では、スピーディー(概ね2年から3年程度)に投資を完了させることができることもメリットです。従来型のファンド・オブ・ファンズ形式のPEファンドの場合は、(拠出を誓約した資金(コミットメント)の全額について投資を実行するまでに)通常、6年から7年を要します。また、早い時期に投資が実行できれば、「Jカーブ」の影響を軽減することも可能です。「Jカーブ」とは、運用開始当初の段階ではリターンがマイナスとなり、徐々に、プラスのリターンが実現されていくというPE投資に特有の傾向を示す概念で、Jカーブの短期化はピクテの30年に渡る共同投資の実績によっても裏付けられています。

 共同投資戦略のネット(費用控除後)のリターンに寄与しているのが、投資案件を提供してくれるGPに対して、原則として、管理報酬や成功報酬を支払う必要がないことです。投資家に課される手数料が高いことが、難点のひとつとして認識されている当該資産クラスにとっては、極めて重要な特徴といえます。

もっとも、投資妙味の高い共同投資の機会が、いつでも、容易に入手できるとは限りません。GPは、最も信頼するLPのみに優良案件を提供する傾向が強いからです。一方、LPは、提示された投資案件を評価し、案件の精査(デュー・デリジェンス)を行うために必須となる豊富な経験と専門的知見を持ち合わせていなければなりません。

 ピクテの共同投資戦略では、GPと緊密な関係を構築しているマネージャー陣が運用を担っており、強固なリレーションシップに基づき魅力的な投資案件の紹介を受けていますが、これに先立って、セクター・スペシャリストの分析を参考に徹底的なファンダメンタルズ調査を行ない、最善と考えられる案件のみをポートフォリオに組入れることとしています。したがって、最終投資家は、ファンド・オフ・ファンズに比べて、コストを抑え、投資の実行を加速させつつ、選りすぐりの投資機会にアクセスすることができるのです。

 

投資機会の選別

ピクテでは、設備投資に多くのキャッシュを費消している企業よりも、有形固定資産の保有が少なく、機動的で身軽な企業を選好しています。また、業界を牽引し、価格決定力を有する企業を選ぶことが、特に、現在のようなインフレ局面では、重要だと考えています。

(ポジティブなキャッシュフローを創出し、業種・セクターを牽引している成熟した企業を投資対象とした)相対的にリスクの低いバイアウト案件と、(製品やサービスが未だ市場に普く浸透していない新興企業を投資対象とした)グロース・キャピタル投資案件やベンチャー・キャピタル投資案件を組み合わせることで、投資タイプの分散を図ることも重要です。

 

最後になりますが、共同投資戦略は、その他のPE投資戦略と同様、分散されたプライベート・エクイティ・ポートフォリオを構築する上で、魅力的な代替アプローチになると確信しています。

 


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