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ESG実践シリーズ:ガブリエル・ミシェリが語る環境投資
2022/04/18

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概要

                                                                                                                                                                                                                                                               

ピクテの環境関連株式ファンドの運用に過去15年間携わってきたシニア・インベストメント・マネージャー、ガブリエル・ミシェリの家族には、自然に対する畏敬の念が受け継がれています。



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環境投資のご経験をお話いただけますか?

ピクテには、「ウォーター・ファンド」 の純資産総額が10億米ドルを上回った2006年に入社しました。また、翌2007年には、新しい環境ファンド、「クリーンエネルギー・ファンド」の設定に参画することが出来、とても嬉しかったことを覚えています。(大学で学んだ)経済やファイナンスの知識を活かして環境にインパクトを与える仕事がしたいと考えていたからです。私と同じ思いの方々は、ファンドへの投資を通じて願いを実現できるものと確信しています。その後、2008年の金融危機のさなかには、持続可能な森林関連株式を投資対象とする「ティンバー・ファンド」の設定に携わり、続いて、ウォーター、クリーンエネルギー、ティンバーの3つの戦略を1つに統合した環境戦略の概念(コンセプト)の策定に取り掛かりました。2010年までには数件の機関投資家から資金を受託したものの、一貫したコンセプトが提案出来るまでに時間がかかったのは、投資先企業の多くが、特定の環境課題の解決に寄与する一方で、別の課題には負荷をかけていたからです。

当時、気候変動の問題は話題には上っても、大気汚染、生物多様性、廃プラスチックによる汚染等が解決すべき課題として認識されていたわけではありません。環境の特定の側面に集中し過ぎると、それ以外の側面に問題が生じるリスクを犯すことになりかねませんが、幸いにも、私達は、森林工学を研究し、地球のシステムに深い理解を示すクリストフ・ブッツ氏の協力を得て、「地球限界の枠組み(プラネタリー・バウンダリー)」に基づいた投資手法を開発することが出来ました。

                                                                                  

出所:ピクテアセットマネジメント、およびストックホルム・レジリエンス・センター

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

「プラネタリー・バウンダリー」は、環境に関連するすべての課題に総合的な視点を提供する科学的な枠組みで、地球の健康状態を示す9つの側面のそれぞれが持つ、超えてはならない限界点を定義しています。私達が提案した投資手法は、当時は、極めて革新的な手法でしたが、改善を重ねた結果、今では、主流の手法になりつつあります。また、「プラネタリー・バウンダリー」は、これを特集した書籍や文書が多数出版され、(環境投資の)「共通言語」になっています。ピクテは、何年間も、この手法を用いて企業のインパクトを測定しています。

図表:「プラネタリー・バウンダリー」の枠組み

現在使用されているユーロ圏タクソノミーも、ピクテの手法をほぼそのまま使用しています。「気候変動への適用と軽減」の他、地球の限界の4つの側面は既に限界点に達しています。地球に負荷をかけないよう、プラネタリーの限界内に留まると同時に、少なくとも1つの側面の状況を改善するため「善いことをする」という二つのアプローチを取ることが状況の改善に有効だと考えます。

私達は、(環境投資の)最前線に留まって、5年後に顧客に求められる戦略を、今、開発したいと考えています。

「ネットゼロ」を目指すトレンドについて、どう思われますか?

正しい方向には進んでいても、残念ながら、長期的な軌道を変えるところまでは行っていないと考えます。現在、経済は環境を劣化させています。私達の行為は、どれも、地球の一部を破壊しているからです。環境に配慮する大手企業は、多少なりとも環境を改善することを目指していますが、環境は、総じて見れば、劣化し続けています。

私達は「ネットゼロ」を超えて進まなければなりません。私達が破壊したものは私達が再生する必要があることは以前にも増して明らかです。再生農業や植林を通じて炭素を地中に戻し、新しい技術を開発しなければなりませんが、とりわけ必要とされるのが、再生的かつ循環的で、生物多様性または自然に何かしらポジティブな影響をもたらす経済への移行を可能とする組織的な構造(システム)です。これは、絶えず自力で再生する自然のシステムに基づいて形成されると考えられます。破壊された森林は、いずれ自力で再生します。こうしたシステムに基づいた経済が必要なのです。環境ファンドに投資することは、こうした道を歩み始めた企業のパートナーになることを可能とします。企業が生き残り、高成長を遂げ、革新的であり続け、最も有能な人材を獲得するには、こうした新しいシステムを取り入れる必要があると考えます。

環境に対するご自身の見方に理解を得るのは以前よりも容易になったと思われますか?

ここ数年で状況が大きく変わったことには驚いています。私が環境投資に関り始めた頃には、肥料、プラスチック、エアコン、原子力エネルギー、あるいは、殺虫剤さえが、何故、環境投資戦略の投資対象に含まれないのかについて、一致した意見はありませんでしたし、数年前までは、生物多様性という言葉を耳にすることも少なかったように思います。プラスチック汚染は、BBC(英国の公共放送)のドキュメンタリー番組「ブルー・プラネット」が海洋汚染を特集して初めて注目されたのですが、それ以前から常に深刻な問題の1つだったのです。今日では、遥かに多くの人が環境汚染に懸念を示しており、意外なことに新型コロナウイルス危機がこうした傾向に拍車を掛けています。若年世代は現状を心底から懸念しているように思われますし、環境チームが採用する殆どの人にとっては、考える必要さえない当然のことになっています。

10年前には、このような状況の変化など、想像することさえなかったと言ってよいでしょう。持続可能性投資は、特定の分野に特化する「ニッチな」投資に過ぎない、また、投資に倫理的な配慮を組み込むことは投資ユニバースに制約をかけることと等しく、その結果投資リターンが市場を下回ることになる、との見方が一般的だったからです。今では、そのようなことを議論する必要さえありません。環境投資の実績が戦略の有効性を証明しているからです。

同様に投資先企業とのエンゲージメント(対話)についても、企業経営陣との良好な関係を損ないかねないと懸念する投資家が多く、否定的な見方が一般的でした。今では様変わりの状況で、ESGスコアの高い企業に投資資金が流れることを認識した企業側から助言を求められることもしばしばです。ティンバー・ファンドを一時はクリストフ・ブッツ氏と共同運用をしてきましたが、最も優れた育材慣行を導入することや、価値の高いティンバーを育てつつ良好な生物多様性の環境を維持することの重要性について企業側と議論を重ねたものです。企業には持続可能な森林管理に際して高い基準を設定し維持するよう促してきましたが、これは投資先企業の企業価値の大半が、森林資産の持続可能性に左右されるからなのです。

「私達は「ネットゼロ」を超えて進まなければなりません。私達が破壊したものは、私達が再生する必要があるからです。」

以前から責任投資に関心をお持ちだったのでしょうか?

私の家族は、代々自然と強い絆で結ばれてきましたが、それが私にも受け継がれています。20世紀のジュネーブには環境に対する極めて強い思いが溢れていましたが、これは歴史上の3人の偉人の遺産だと考えます。宗教改革の指導者だったジャン・カルバン、哲学者であり政治学者だったジャン・ジャック・ルソー、赤十字を創設した実業家のアンリ・デュナンの3人は、世界に対して心を開く寛容性、正義と公平性、他社への思いやりの気持ちの3つが表す「ジュネーブ・スピリット」をジュネーブの街に確立させた偉人です。「ジュネーブ・スピリット」は、その後、自然主義を信奉する芸術家、ロベール・エナール等の尽力により、環境分野にも広がりました。私の父の友人だったエナール氏は、野生の自由な状態にある自然の真価を認識することの重要さを説き、すべての世代に影響を及ぼした人物です。私の父は鳥類学者で首に双眼鏡をかけて生涯を過ごし、私の家族は自然の近くに暮らしてきましたが、そうしたことが、今でも私の日常生活の一部となっています。

私は電動自転車で移動し、暖房器具の燃料に木材ペレットを使っています。また、15年前からは菜食主義を実践し、最近自宅の庭で持続型農業を始めました。私は自分の行動が環境に及ぼす負荷を軽減しようと努めています。また、「自然界に生きるすべてのものには居場所と生きる意義があり、自然のシステムの一部を破壊すればシステム全体に影響を及ぼす可能性がある」と主張する「システム思考」に賛同しています。私の妻はベルギーのブリュッセルで、農業用殺虫剤の使用に反対するロビー活動を行っていたことがあります。3人の子供達には私達二人の自然を愛する気持ちを伝えたいと努めています。

 

 

※当資料はピクテ・グループの海外拠点が作成したレポートをピクテ投信投資顧問が翻訳・編集したものです

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