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金のテクニカルな見通しは魅力的
2022/05/19

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概要

金市場を取り巻く環境について説明します。



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米国のCPIは高止まり

2022年5月11日に発表された4月の米国消費者物価指数(CPI)では、インフレ率(前年同月比)が8ヵ月ぶりに低下しました、依然として高水準であり、米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的姿勢を維持せざるを得ないとの見方を裏付ける結果となりました。とはいえ、投資家が底値買いに意欲を見せ始めている証拠も出てきているようです。

 

4月の米国CPI(前年同月比)は前月の+8.5%から+8.3%に低下しましたが、市場予想の+8.1%ほどは低下しませんでした。

 

インフレ率がFRBの基準値を大きく上回って推移するリスクが高まり、FRBは、成長を停滞させるリスクはあるものの、インフレ抑制のためにより積極的に利上げを行う必要があるとの見方が強まりました。2022年5月11日の株式市場は、CPI発表直後、取引開始とともに下落圧力を受け、ハイテク株を中心に軟調な動きとなり、S&P500は4,000ドルの大台を割り込み-1.65%の下落、ナスダック総合指数は-3.18%の下落で取引を終了しました。

金については、現在は、いろいろ入り混じった状況にありますが、金はいくつかの理由で投資家をひきつける可能性があります。もしドル高が一息つけば、金は恩恵を受けるはずです。またインフレが予想より緩やかな低下となれば、インフレのヘッジ先としての金をサポートする可能性があります。

 

金は相反する力に直面

今年最初の株式市場の下落(1月から3月まで)の間、金は伝統的な安全資産としての地位を得て、トロイオンスあたり1,800ドル近辺から2,000ドル超へと上昇しました。しかし、2020年の高値を超えることはできず、金価格は新たな局面に入りました。

 

足元の金価格は、株式の急落に引きずられ下落し、安全資産としての魅力が失われてしまったようです。この理由として、ドル高とタカ派的な米連邦準備制度理事会(FRB)の動きが挙げられますが、金の買い手の不足は、より多くの広範な懸念に直面した投資家のリスク回避姿勢を反映しています (一方で、短期のテクニカルなサポートラインを破ったことで、トレンドフォロワーによる自動売り注文が発生し、金の最近の下落を悪化させた可能性もあります。)。

ドルの反落は金の反発を助けるかもしれない

 

下のテクニカルチャートは、2021年半ばに89.40付近でダブルボトムを形成したブルームバーグ・ドル指数が再び上昇を始め、一連の中間抵抗を突破し、97.80の主要抵抗(2020年3月に始まった一連の下落のフィボナッチ・リトレースメント61.8%)に接近したことを示しています。しかし、予想に反して、その後のプルバックは定着せず、その後、ポジティブなモメンタムが戻り、指数はこの重要なレベルを上回ることができました。 その後、一時的にモメンタムの枯渇が見られたものの、指数は上昇を続けています。

 

短期的には、ドル指数は2016年の高値104を目前に控え、RSIは極めて買われ過ぎの状態にあります。これは、ついに小休止が起こるかもしれないということでしょうか。もしそうであれば、現在99にある50日移動平均がサポートとして機能するはずです。

金は歴史的に高インフレの恩恵を受ける傾向がある

 

金が歴史的にインフレに対する良いヘッジ先となってきたことは広く知られています。下のグラフに示すように、米国のCPI上昇率(前年同月比)が6%を超えて推移しているとき(青い部分)、金は良好なパフォーマンスを示しています。

 

米国の実質金利と金価格が最近乖離している

 

伝統的に、金価格は、収入を生まない金を保有することの機会費用が上昇するため、米国の実質金利と反対方向に動く傾向があります。下のグラフに示すように、米国の10年国債利回り(グレー、逆スケール)は、金価格の推移(赤)と乖離しています。確かに、FRBによる金融引き締めの動きを受けて米国の実質利回りは急上昇していますが、金価格はかなり持ち堪えていることがわかります。後述するように、2022年第1四半期は、金のETFの需要が金価格の支えとなったと見られます。

ETFの資金フローは価格下落にもかかわらず堅調に推移しており、引き続き金価格にとってサポートとなる可能性

最近の金の下落は、特に10年物実質金利の急上昇との関係でみると、比較的抑制されているようです。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、2022年第1四半期にかけて投資需要(特にETFからの)の高まりが顕著であったようです。中央銀行からの純購入量も2021年第4四半期と比較して増加しており、宝飾品とテクノロジー需要の減少を相殺しています。

下図は、ETFからの金需要と金スポット価格が連動して動く傾向があることを表しています。短期的には、金価格の下落にもかかわらず、ETFの需要は大きくは動いていません。

金鉱株は反発の可能性

4月以降、市場全体をアンダーパフォームしている金鉱株は、金の価格が再び上昇基調となれば、反発する可能性があります。

下図は、金価格(赤)とS&P500株価指数(グレー)に対する金鉱株の相対的なパフォーマンスを示しています。2017年以降、両指標は連動して動く傾向にありましたが、2020年以降は大きく乖離しています。このことから、金鉱株のアンダーパフォーマンスは誇張されており、今後、反発する可能性を示唆していると、弊社では考えています。

 

 

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