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エネルギー資源を巡る情勢と景気後退懸念
2022/06/29

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概要

ロシアがエネルギー資源の供給を外交カードとしていることで、世界的にエネルギー資源を巡る情勢が不安定となっています。この影響から物価の高騰がさらに進行する可能性があり、市場では景気後退が懸念されています。



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先週の世界株式市場では、世界の主要中央銀行のインフレ対策や、ロシアが欧州のガス供給網の鍵を握る中、エネルギー資源の安定供給への懸念から、景気後退の可能性に焦点が当たりました。

ロシアの国営ガス会社はドイツへのガス供給量をさらに削減することを発表し、ロシアはエネルギー資源が国家間の外交上の武器になり得るということを示しました。これにより、ドイツは冬に向けてガスを節約するため、石炭発電所の再稼働を余儀なくされました。なお、ガスは農業用の化学肥料の原料にも使用されることから、欧州のガス価格の上昇は、さらなる食料品の価格上昇をもたらすとみられます。また、ロシアのプーチン大統領は、米ドルに代わる基軸通貨として、新興国5ヵ国からなるBRICSが開発中の通貨バスケットに基づく新国際基軸通貨に言及しました。

 

6月の欧州のPMI(購買担当者景気指数)は市場の予想を下回る結果となりました。業種別の内訳では、製造業の生産が大きく落ち込みました。新規受注の急落を考えると、製造業の減速は今後数ヵ月続くものとみられます。一方、金利上昇は引き続き米国の住宅市場に影響を及ぼしており、5月の中古住宅販売件数は4ヵ月連続で減少しました。住宅販売件数は、6ヵ月連続で減少している住宅ローン申請件数の急減に追随しており、さらに減少する可能性が高いとみられます。

 

先週、米国の10年債利回りは3.13%、ドイツ10年国債の利回りは1.44%といずれも低下しました。工業用金属や原油などの商品市場も経済指標の悪化の影響を受け下落しました。国債利回りの低下と、ミシガン大学の米国期待インフレ率指標が5月にわずかに落ち着きをみせたことを受けて、中央銀行が景気後退を回避するために金融緩和政策に転換するという投資家の楽観的な見方から株式市場は反発しました。今後、景気減速が業績後退につながるかを見極めるため、企業業績に注目が集まるものとみられます。S&P500の構成企業のうち、業績見通しを発表している約100社の状況をみると、楽観的な見方が後退し、悲観的な見方が増えている模様です。2022年第2四半期は、ベース効果が大きく影響し、前年同期比の利益成長率は非常に低くなると予想されています。

今週はロシアのウクライナ侵攻後初の主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)が行われており、首脳陣はロシア産の石油価格に上限を設ける制裁の導入に合意しました。引き続き、エネルギー資源を巡る世界情勢に注目が集まっています。


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